両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪





 新任のごあいさつ

奈良文化財研究所 飛鳥資料館 学芸室長 加藤真二先生
(09.5.15発行 Vol.51に掲載)



 このたび、飛鳥資料館学芸室長に就きました加藤真二です。1993年に奈良国立文化財研究所(当時)に入所し、途中、4年8カ月の文化庁記念物課勤務を経て、飛鳥資料館には2004年から勤務しておりますので、お目にかかった方もあるかもしれませんね。毎朝、橿原神宮前駅から、畝傍中学前、奥山の集落を通り、ぶらぶら歩いている胴周りが多少不自由な色白の男がわたしです。飛鳥資料館の学芸室長には、佐原、田中(義)、猪熊、工楽、岩本の各先生、そして前任の杉山さんと、そうそうたるメンバーが就いていますので、4月以来、何やらプレッシャーのようなものを感じ、大変、緊張して過ごしてきています。

 わたしは、キトラ古墳の壁画の特別公開にたずさわってきた関係から、現在は、主に、古墳壁画の研究をしています。でも、本当の専門は、東アジアの旧石器考古学でして、わたしが壁画研究をしていると知った業界関係者からは、うさんくさげに、「お前がかー??!!、大丈夫かー???」とよく言われます。まあ、ウン十万年前の北京原人の石器やら、シベリアのバイカル湖周辺の骨角器などを研究している人間が、1300年前の繊細な極彩色壁画を取り扱っているわけですから、自分自身でも、うさんくささを感じることが多々ありますので、しょうがありません。このほうが、変な思い込みや感情移入もなく、客観的にみることができると、ひらきなおっている今日この頃です。

 それはさておき、資料館にしばしば足を運ばれる皆様は、もう、お気づきかもしれませんが、ここ数年、少しずつ、展示が新しくなってきています。また、明日香村教育委員会と毎冬に共催してきている企画展「飛鳥の考古学」のように、新しい展示企画も試みてきています。さらに、先日、文化庁から発表がありましたが、来年の2010年には、資料館でキトラ古墳の全四神図の公開を行いますが、その後には、第一展示室の全面的なリニューアルを計画しております。

 振り返ってみれば、高校入学直前の春、家族旅行できた明日香で遭遇した石舞台や岡の酒船石、亀石などにたまげたことは、いまでもはっきりと覚えています。なんとか、新たな取り組みを通じて、これまでのものにも負けない、常に新鮮な魅力に富んだ展示と情報発信を行い、東京の場末に生まれ育った少年をも驚愕させた飛鳥の持つパワーのようなものを多くの皆様と共有したいと考えております。

 今後とも、ご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。また、明日香の奥山で皆様のご来館を心よりお待ちしております。

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両槻会がお世話になっています飛鳥資料館学芸室長が代わられましたので、ご紹介いたします。飛鳥資料館は、飛鳥にとりましても、両槻会にとりましても、無くてはならない存在です。今も、春期特別展「キトラ古墳壁画四神-青龍白虎-」が行われており、全国の注目を集めています。
 新任の加藤真二学芸室長は、前任者杉山洋先生から大変なお仕事を引き継がれました。そのお忙しい最中にもかかわらず、飛鳥遊訪マガジンに就任のご挨拶をしてくださいました。どうぞ、お読みくださいまして、飛鳥資料館の存在を、より身近に感じていただければ幸いです。 (風人)

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 春期特別展の御礼と夏期企画展の宣伝

奈良文化財研究所 飛鳥資料館 学芸室長 加藤真二先生
(10.7.9発行 Vol.84に掲載)


 皆様のおかげをもちまして、飛鳥資料館春期特別展「キトラ古墳四神」は、入館者数10万人を超えることができました。ありがとうございました。皆様のキトラ壁画に対する熱い想いをつくづくと実感するとともに、キトラ壁画の現状を多くの皆様に知っていただけたことに満足しています。また、この5年間、キトラ・高松塚壁画を微力ながらじっくりと勉強することができ、壁画に関する自らの見解をもつことができたような気がします。

 今度の両槻会ではそこのところを述べてみたいと考えています。さらに、この間に、キトラ古墳20分の1模型、そして、陶板による原寸大のキトラ古墳石室レプリカなど、展示品も充実させることができました。特に、陶板レプリカは、第1展示室に展示していますが、特別展の時とは異なり、床を下げましたので、将来的には、石室内に踏み入って、じっくりと、そして、眼前で発掘直後の石室内の状況を味わってもらえると思います。請うご期待。

 さて、現在、私は、九州は熊本でこの文章を書いています。なぜ、熊本にいるかというと、夏期企画展の展示品の借用にきているのです。今度の企画展は、「小さな石器の大きな物語」(会期2010年7月16日~9月5日、休館は7月19日を除く月曜日、7月20日)と題し、なんと、旧石器時代末期に盛行した細石刃文化を取り上げるものです。この展示を企画し、準備を進める中で、「えー、飛鳥資料館で旧石器の展示なんかしていいの?」という声がしばしば聞こえてきました。モチロン、いいんです。北は北海道、南は九州、西は韓国、中国、そしてモンゴルの細石刃文化の実物やレプリカ、写真資料を展示し、ワールドワイドな大風呂敷を広げた話をするつもりです。細石刃文化に関していえば、近畿ではほとんど出土していませんし、最近では旧石器自体、小学校の社会科の教科書に載っていないなど、皆さんにとっては、あまり、なじみのないものかもしれません。しかし、類似する資料が東アジア各地で出土しており、かなりポピュラーなものです。

 猛暑の飛鳥ではありますが、冷房の利いた特別展示室で、1万数千年前という、ちょっと浮世離れした資料が語る物語に耳を傾けるのも、おつなものではありませんか! 是非、御覧になってください。













 飛鳥資料館ナイトミュージアムガーデンのおさそい

奈良文化財研究所 飛鳥資料館 学芸室長 加藤真二先生
(11.9.2.発行 Vol.115に掲載)


 この文章は、現在、中国河北省石家荘の某ホテルで書いています(ホテルの外観をみて、思い出しました。どうやら、昨年、建設会社の日本人が当地で逮捕された際に軟禁されたホテルのようです)。風人さんらに原稿依頼されていたのですが、すっかり忘れており、ももさんのメールでハタと思い出しました。現在、追いつめられた夏休みの宿題のように書いています。ただ、今晩は、少々、白酒が入りましたので、ふらふらの状態です。酔いにまかせて一気に書いてしまいましょう。乱文をお許しください。

 飛鳥資料館では、9月23日の夜6時半から、光の回廊にあわせて、ナイトミュージアムガーデンを開きます。文字どおり、ロウソクの炎にあやしくも美しく照らされた夜の資料館前庭の諸所を学芸室員の解説つきで巡るという、飛鳥資料館でも初めてのこころみです。

 そもそも、資料館前には、いろいろな屋外展示物が、それとなく置かれています。資料館正面ゲートを入って左には、亀石、5体の猿石を含む謎の彫像群、そして、移築された八釣マキト5号墳の石室があります。このうち、八釣マキト5号墳は、村内の八釣・東山古墳群のなかで、最大の古墳であった6世紀後半の円墳の石室です。農業基盤整備事業で発掘されたものですが、壊してしまった後、石室の石をそこらへんに置いておいたら、ばちがあたったとのことで、移築保存したとか、なんとか、仄聞しています。怪談じみていて、夜の解説にはもってこいの題材ですね。

 また、小川をわたって右には、岡の酒船石、出水の酒船石、車石などを組み合わせた流水施設があります。なかなか、大胆な発想にもとづくものです。でも、チロチロという流水音がロウソクのやさしい光にマッチするような気がします。ところで、出水の酒船石の先についていた飛鳥京苑池遺構の石造物は、秋の特別展(10月14日~11月27日)「飛鳥遺珍-のこされた至宝たち-」に展示予定です。請うご期待。

 最後に、さらに園路を資料館建屋入口方向に入っていくと、その左右には、古代の饗宴施設(むずかしい言葉ですね。まあ、国立の迎賓館+宴会場と考えていただければ・・・)であった石神遺跡の往時の様子をイメージした、酒船石と石人像の噴水と礫敷きがあります。ロウソクにともされた幻想的な姿は、想像のタイムトリップを促します。もしかすると、飛鳥にやってきた遠方の人々が石神遺跡でみたであろう姿と重なるかもしれませんね。彼らは、こうした不思議な石造物をみて、いったい何を思ったのでしょうか?

 こうしたところを解説しながら、秋の夜をご一緒に過ごしてみたいと思っています。もちろん、皆様のご協力で点灯する亀形石造物のロウソク像もありますし、夜間無料開館しますので、ほんもののナイトミュージアムも楽しめます。是非、足をお運びください。

  ところで、わたくし、9月の20-22日にも、今度は、遼寧省瀋陽(むかしの奉天)に出張する予定です(いやー、われながら忙しくて大変ですわ)。したがいまして、光の回廊やナイトミュージアムガーデンの事前準備には参加できませんが、お許しください。でも、我が館の若い衆ががんばりますので、よろしくお願いします。




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