両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪






 飛鳥の古民家

―飛鳥の甍に想いを馳せて―


奈良文化財研究所飛鳥資料館学芸室研究員 西田紀子先生 
(15.7.20.発行 Vol.220に掲載)


 いつも飛鳥資料館の展示やイベントに関心を寄せて下さり、ありがとうございます。

 現在、飛鳥資料館では、夏の企画展『ひさかたの天―いにしえの飛鳥を想ふ―』の準備作業に邁進しております。今年は過去最多となる106名の方からご応募をいただきました。本当にありがとうございました。

 毎年、テーマを考えるのは担当者の苦しみでもあり、楽しみでもあります。全国で写真コンテストは開催されていますが、飛鳥資料館でやるからには、このフィールドと歴史という二大テーマを大切にしたい。また、写真という媒体を通すことで、従来の歴史ファン・飛鳥ファンに加えて、新たなファンを増やしていきたい。さらに、既存の文化財の枠を超えて、飛鳥の歴史的な風物の価値を掘り起こしていきたい。

 ここで強調したいのは、国や地方自治体が指定・登録した文化財だけが、価値ある文化財ではない、という点です。何を文化財として保存していくか、という思想は、時代や社会の情勢とともに変化していきます。棚田や水路が文化財として認識されるようになったのは、ここ数年のこと。飛鳥には、地下の遺跡だけではなく、地上にも魅力ある文化財がまだまだ埋もれていると思います。

 私は建築史という、建物の歴史の研究が専門です。建築の世界では、「近代和風建築」という言葉があり、明治・大正・昭和にどのような和風建築がつくられたのか、各地で調査が進められています。この目線でみると、飛鳥は「近代和風建築」、中でも近代の民家の宝庫です。しかし、明日香村には、指定文化財も登録文化財となっている民家は一軒もありません。そもそも、どんな民家がどこにあるのか、その全貌すら掴めていないのが実情です。そこで、去年の写真コンテストでは、まずは飛鳥の民家の魅力に気づいてもらい、発信してもらいたい、という気持ちをこめて「飛鳥の甍」をテーマとしました。

 いわゆる「明日香法」で守られた村内には、伝統的な間取りや材料を継承する民家が多く見られます。こうした民家を日本各地の近代民家と比べて、その歩みを考えられないか。民家の変化が暮らしの変化とどのように関連しているのか。課題は山積していますが、これまでの調査成果を整理しながら、飛鳥の民家に迫っていきたいと思います。





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