両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪






 第54回定例会に向けて
                 


奈良文化財研究所 石田由紀子先生
(15.12.25.発行 Vol.231に掲載)


 こんにちは。奈良文化財研究所の石田由紀子と申します。定例会でお話させていただくのは初めてですが、両槻会との関わりはけっこう長く、2009~2011年までこのメールマガジンでも飛鳥・藤原に関する瓦を中心とした連載をさせてもらっていたこともあります。

 そもそも私が両槻会と出会い、メールマガジンを書くまでになったのは、とある研究会で大和郡山市にある西田中瓦窯(藤原宮所用瓦窯)の瓦をみせてもらったとき、そこに風人さんとももさんがいらっしゃったことがきっかけです。

 初対面なのを忘れてしまうほどの風人さんのフレンドリーな口調に乗せられて、気がつけばあれよあれよという間にメルマガを書くことになってしまいました。私も当時はまだまだ駆け出しで、毎回毎回知恵を絞って連載記事を書かせていただいたことは貴重な経験になりました。あれから6年、今度はいよいよ定例会でお話させていただく機会をもらい、なにやら感慨深いものを感じております。

 さて、今回の定例会のテーマは都城の瓦です。瓦は建設資材の一部であり、基本的には、建物の造営や修理などなんらかの契機があって、必要に応じて生産されます。これが生活必需品で常に生産されている土器と大きく違う点です。建物の造営や修理は文献などの記録に残っている場合があり、これが瓦の年代を知る大きな手がかりとなります。これを土台にして製作技法や文様等、いろいろな視点から検討をして、瓦の年代を決めていきます。

 また、瓦のもうひとつの特徴は型作りであることです。型で作るということは、均一な製品を効率的に生産するということと密接に関わっています。そのなかでも都城の瓦づくりは、膨大な量の瓦を必要とすることから、効率化を目指して生産体制や製作技法などさまざまな面で試行錯誤がされました。

 藤原宮や平城宮から出土する瓦をみると、仕上げの粗いものや生焼けのもの、型押しが甘くて文様がはっきりしてないものなどがたくさんあります。きっと瓦工人は、急かされて作ったのでしょう。限られた期限で大量の瓦を生産せねばならない、その一方で職人として一定の品質は維持したい、こんなジレンマに瓦工人も苦悩したに違いありません。このような想いは、現代に生きる私たちにも共感できるもので、粗雑な瓦片にふと愛おしさを感じてしまいます。

 両槻会ではおなじみの瓦がテーマ、詳しい方も多い中でお話しさせてもらうのは少し緊張しますが、面白い講演会にしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。






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