両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪





 カエル繁盛期(不思議語)

帝塚山大学考古学研究所 特別研究員 甲斐弓子先生
(12.6.8発行 Vol.135に掲載)


 ピョンピョン小さな青いカエルが道端を渡っている。踏まないように避ければ避ける程、靴の下に入ってくる。人の足を里芋の葉と間違っているんだろうか・・・。5月の晴れた日、飛鳥のカエルとの出会いである。

 大和では4月の終わり頃から苗床が作り始められる。今年も良いお米が沢山獲れますように、と山の神様に自分の田にお越し頂く季節である。水口祭である。水口祭には田に神様の依代となる樹に咲く花を献じて、神様と一緒に共に飲んで、共に食して祝う。

 記憶力の良い風人さんが、水口祭の写真を送ってくれたことに感謝!と思いきや、メルマガを書かす段取りだったとは迂闊だった。


大字飛鳥の水口祭

  田に水を張る「水張月」が転じて「水無月」と呼ぶという説のある6月、カエルは合唱する。「梅雨」である。梅雨には、てるてる坊主が良く似合う。てるてる坊主に目、口などを描き軒先に吊るし、翌日の晴れを願う。元々は目も口も描かない。まじない(呪い)である。これは本来虫送り、疫病送りに見られる人形送りの呪術に起源があるといわれている。

 考古学では雨乞い、止雨を願うのはもっぱら土馬が多い。身体に付いたケガレなども土馬に担わせ、再び我が身に返って来ないように土馬の足などが折られた状態で出土する。
 古来、神事は祓えが大事とされるが、同時に梅は吉凶を占う食品としても知られる。日本の夏は高温多湿。海水から直に採った塩は高温多湿のままでは溶けてしまう。梅干にすることで塩を長く保存することが出来るという知恵でもある。塩梅(あんばい)良く出来上がった梅干は薬としても重用され、病を遠ざけてくれる。

 半年の祓えである「夏越の祓え」で悪鬼を払い、文月・七月の節である七日には清めの祓えで新しい月を迎える。いよいよカエルの声も騒がしく、七月を告げて唱い競う夏は、暦ではすでに秋である。夏越の祓えは夏から秋に向う、そして一年の半期の大きな祓え。カエルは何を騒がしく告げているのだろう。





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