明日香のことは
お母さん方に
たずねるべし
taamaさん
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【1】 (10.2.5.発行 Vol.73に掲載)
はじめまして。明日香村役場前にて昨年10月に、珈琲屋を開店しましたtaamaと申します。
夫と私は、東京と千葉から奈良県へ移り住んできてから4年が経ちます。今回は、私が明日香村で暮らし始めたころにお世話になったお母さん方のお話を書きます。
夫のお祖父さん、お祖母さんが30年暮らした明日香村は、夫にとって「田舎」にあたります。夫は小さいころから、いいところだなあ。でもお店の少ないところだなあ~。と思っていたそうで、この村でふたりで喫茶店をつくろうときめました。それで村内で物件探しをしていたのですがなかなか見つからない。どうすれば情報が得られるか。どうすればもっと村のことを知ることができるか?それはやはり村に住んで村で働き、毎日村の人といっぱいお話をすればいいのではと考えて、私は村で仕事をさがすことにしました。
そして「ここで働きたいのですが。」と石舞台古墳のまん前にある農村レストランの門をたたいたのが3年前。突然不躾に現れた関東弁の女にパートのお母さんたちは面食らったことと思います。そして運よく採用され、すてきな10数人のお母さん方といっしょに楽しく働くことができました。
さすがは頼もしいお母さん方、村にお嫁にきてン十年。村の人のこと、年中行事のこと、子育てのこと、畑のこと。なんでも知ってて教えてくれます。そして田舎料理・家庭料理の達人ぞろい。野菜の茹で方、出汁のひきかた、おつけもんの漬け方などなど大事なことをたくさん教えてくださいました。形ばかりの調理師免許しか持たない私にとって、この「生きた」厨房経験はとても勉強になりました。
調理場では関東と関西の違いも面白いものです。私はよく炊きおかずの味付けで苦戦しました。どうしてもこいくち醤油で甘辛くしてしまい、「taamaちゃんはやっぱり濃い味付けや」とよく笑われました。
食生活が、畑と密接に関わっているのも素晴らしい点だと思いました。例えば、おぜんざいを炊くときにも、当たり前のように自分たちでお餅をついて、自分のところの畑で取れた小豆を持ち寄って炊くのです。塩昆布まで手作り。なんでもスーパーで買ってくるというような感覚は持ち合わせていないのですね。
ある冬の朝。お母さんたちと一緒に稲淵の畑へ大根ひきに連れて行っていただきました。50cmもある赤いあすか大根です。しかし私はへっぴり腰でしりもちばかり。ほとんどお母さん方に助けてもらって。皆さんほんとうに頼もしい・・。大根ひくところからお漬けもん漬けたのは初めてでした。
野菜は土から生まれてくるんだなあ。と初めて実感。なにしろ千葉の埋立地育ち。土に触ったことすらありませんでした。明日香村に来てから、30歳も半ばを過ぎてやっと人間らしい経験をさせていただいてます。
そんなこんなで楽しく(ときには辛く?)明日香村での月日は経ち、ようやく珈琲屋をつくれる物件が見つかりました。準備と開店のため農村レストランのパートはやめてしまいましたが、いまでも頼もしいお母さん方とはよいお付き合いをさせていただいています。大切な財産だと思います。
今、私たちは念願かなって珈琲「さんぽ」という自家焙煎の珈琲店を開店することができました。明日香を「さんぽ」する方々がほっと一息つける場所になればいいなと思い日々珈琲を焙煎し、お菓子を焼いています。
さんぽさん店内から飛鳥浄御原宮内郭南門方向を見る。 |
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