両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪



特別回


紀路踏破

-有間皇子追慕の道を行く-

2012年4月14日







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当日レポート
飛鳥咲読

1 市経家の段 ~いざ、出立!~

― 市経・有間皇子邸 ―
蘇我赤兄
 (以下、赤兄)
よいか、鮪(しび)。 首尾よく捕らえるんだぞ。
物部朴井連鮪
 (以下、鮪)
はっ! お任せください!
   ― 鮪、造宮丁たちを率いて有間邸のチャイムを鳴らす
 ― ピンポ~ン♪
新田部連米麻呂
 (以下、米麻呂)
このような夜更けに何の用だ。
やぁ♪ ちょっと有間皇子さまに職務質問があるんだけど。
有間皇子
 (以下、有間)
(眠そうに) お~い、今、何時だと思ってるのさ? だいたい、キミ、だれ?
おぉ、これは有間さま。
わたくしは蘇我赤兄さまより遣わされた、物部朴井連鮪(もののべのえのいのむらじしび)と申す者。
でも、長いので“鮪”とお呼びください♪
有間 ふぅん、鮪ね…じゃなくて! 赤兄の部下が職務質問ってどういうこと?
ウチのボスが「紀の湯に行かないか」って言ってるんですけど、どうします?
赤兄 …って、違うだろ、鮪! 温泉に誘ってどうする!
あっ有間さま、先ほどはどうも。おかげで、あなたさまが謀叛を起こす気満々だという証拠がつかめましたよ♪
有間 どういうことだ!
造宮丁 その1 鮪さま。塩屋連鯯魚(しおやのむらじこのしろ)どのを捕らえてまいりました!
塩屋連鯯魚
(以下、コノシロ)
有間さま! これは一体どういうことですかっ。
造宮丁 その2 守君大石(もりのきみおおいわ)どのと、坂合部連藥(さかいべのむらじくすり)どのもお連れいたしました!
造宮丁 その3 皇子さまと謀議していた判事も捕らえてまいりました!
よし。それでは、丁(よほろ)たち、邸を包囲しろ!!
赤兄 …って、まだだったのか! 遅いんだよ、おまえはッ!!
 ― 造宮丁たち、皇子たちを囲む
阿倍比羅夫 これはなんの騒ぎですか、皇子さま。
小足媛 いったいどうしたの、有間。
有間 僕も状況がわからないよ… なんか、騙されたっぽい雰囲気なんだけど…
赤兄 天皇(すめらみこと)の政を批判して、自ら帝位に就くため挙兵しようとしたじゃないですか。証拠は、ばっちり録音させてもらいましたよ♪
有間 ワナだったのか、赤兄!! 信じてたのに…!
小足媛 ほらごらんなさい! だから、やめといたほうがいいって、忠告したでしょう?
あなたはまだ若いんだから、もっとキャリアと人徳を積んでからにしなさいって。
比羅夫 なにっ! じゃあ、日本書紀の「或人諫めて曰く」の「或人」っておまえだったのか!
小足媛 赤兄、やることが汚いわよ! 米麻呂、すぐに紀の湯の天皇のところに報告に行きなさい!
米麻呂 はっ! (と、走り出そうとする)
赤兄 ははは、もう手遅れですぞ。 今頃は、わたしの送った急使が、とっくに紀の湯に向かって走ってるんだもんね~♪
讃良 走ってるのは 大おじさまの遣いじゃなくて、馬でしょ。
赤兄 これは、皇女さま。相変わらず、お口が達者ですな。
有間 讃良ちゃん! こんな夜中に一人で来たの?
讃良 うん。有間さまが捕まっちゃう夢をみたの。心配になって、こっそり抜け出してきたのよ。
赤兄 とにかく、この一件は速やかに天皇に奏上して、処罰を下していただかねばならん。
ここにいるメンバーは全員、今から紀の湯行き決定!
有間 ふざけんなよ、赤兄!! 
おい、コノシロ、お前んち金持ちなんだろ? 金にものいわせてどうにかならないのか?
コノシロ 有間さま… 天皇家相手に金積んでも意味ないですよ…;
ご自分も皇子さまなんですから、おわかりでしょう;
守君大石 (ひそひそ)有間さま…脳の病は治ったと聞いてたけど…
坂合部連藥 (ひそひそ)やっぱりまだちょっと…
有間 そこ! 聞こえてるぞ。 僕はもう狂ってなんかない!
赤兄 さぁ、もう時間がない。すぐに出立するぞ!
守君大石 えっ、赤兄さまもついていらっしゃるのですか?
留守官(とどまりまもるつかさ)のお役目はいいんですか?
赤兄 さっきから見ていると、どうも鮪一人には任せておけん。 わたしも行くぞ!
有間 じゃぁ、ケータイ持ってっていい? あれがないと困るんだよね。
赤兄 まぁ、いいでしょう。
有間 あ、それと、長旅になるのなら采女にお弁当用意させるから、ちょっと待って。
米麻呂 この緊迫した状況で、なに言ってるんスか、有間さま;
守君大石 (ひそひそ)やっぱり…脳の病はまだ…
坂合部連藥 (ひそひそ)あぁ。完治してないな。
有間 そこ。しつこいぞ。
それには及びませんぞ。皇子さまのランチは手配済みです。
有間 なに? 用意周到だな; で、どんな弁当だ?
それは、ランチタイムをお楽しみに♪
順調に行けば、巨勢寺あたりで召し上がっていただけるでしょう。
赤兄 よし。それでは、紀の湯に向けて出発!!
守君大石 あ、皆さん、車や電車には充分気をつけて歩いてくださいね!
坂合部連藥 スムーズな進行にご協力お願いしま~す。
有間 お前たち、囚われの身でなに仕切ってるんだ。 
まさか、赤兄の息がかかってるんじゃないだろうな。
大石&藥   ぎくっっ!!

~ 市経家の段 終わり ~
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2 巨勢寺の段 ~椎の葉の飯(いひ)~
 ― 巨勢寺付近にて ー
米麻呂 そろそろ巨勢寺ですな。 ここらで皇子さまに昼食を召し上がっていただきましょう。
コノシロ わたくしも腹が減りました…
造宮丁 その4 徹夜組の我ら丁(よほろ)も、昨夜から何も食べてないのでヘロヘロですよ~;
では、巨勢寺の境内を借りて休みましょう。
誰か、巨勢寺に所縁のものはおらんか?
判事 あっそれならわたくしが… (ケータイで連絡)
あ、巨勢どののところの比登ちゃん? 今キミんとこの氏寺の近くを歩いててさ。
そろそろランチタイムにしたいんだけど、庭先貸してくんない? 広いからいいでしょ…
あ、オッケー? じゃ、今から20人ぐらいで行くからよろしく♪ 
(電話を切って) ランチ場所確保できました!
赤兄 おぬし、敵ながらウチの鮪より使えるな。 よし、では、巨勢寺で昼休憩だ!
有間 僕のお弁当は、何かな♪
造宮丁 その1 (ひそひそ)絶対、狂ったまんまだよな…
造宮丁 その2 (ひそひそ)あぁ…じゃなきゃ、この状況でとても飯なんか食ってらんねぇもんな;
― 巨勢寺にて ―
有間さま。 お待ちかねのランチですぞ。 
(造宮丁 その3に向かって) おい、有間さまにお弁当を!
造宮丁 その3 皇子さま、どうぞ♪ (と、椎の葉に乗ったお弁当を差し出す)
有間 Σ( ̄ロ ̄lll) 何なんだ、このショボいランチは~~orz
比羅夫 皇子さま。 文句をいうと、バチが当たりますぞ。
小足媛 というか、すでにバチが当たる以上に最悪な状況ですわよ、お父さま。
有間 こんな、器じゃなくて葉っぱに盛ったメシなんか、食えるかッ!
造宮丁 その4 ラッキー♪ お召し上がりにならないのなら、わたくしめが代わりに…
米麻呂 丁(よほろ)は引っ込んでろ!!
コノシロ 有間さま、この先はまだまだ長いんですから、どうか召し上がってくださいよ。
有間 わかったよ… 食べるよ。いただきまーす。
 (食べようとして止まる) …あっ!!
判事 どうかなさいましたか、皇子さまっ!?
有間 一首できた♪
家にあれば 笥に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る
どう?
守君大石 (ひそひそ)そのまんまじゃん。
坂合部連藥 (ひそひそ)だよなぁ。あれぐらいならオレでも詠めるよ;
有間 そこっ! なんか言ったか!?
守君大石 い、いえっ! 素晴らしいお歌に、感動していたのでございます。な、坂合部どの。
坂合部連藥 はい! アドリブでこれだけの歌を詠まれるとは、さすが、有間さま!!
有間 なかなか傑作だろ? この歌、僕が死んだあとも、ちゃんと残してくれよ!
さぁ、みんなでご飯を食べよう!
讃良 有間さまったら、完全に遠足気分ね…
比羅夫 状況わかってるんだろうか…
米麻呂 ところで、皇子さまの弁当、まさか毒を盛ってあるんじゃないだろうな。
コノシロ おぉ、さすが忠義者の米麻呂ちゃん、鋭い突っ込み♪
有間 はっ、そうだ! 危うく服毒死させられるところだったじゃないか。
守君大石 しょうもない歌詠む前に、そこ疑えよ… (ぼそっ)
有間 大石、お前、さっきからなんかムカつくぞ。よし、お前が毒見しろ!
守君大石 ええ~~っ! 勘弁してくださいよ~!
と言いたいところですが、皇子さまの命令には背けません…
では (一口食べて、苦しむフリ) …うっ!!
有間 どうした、大石!
小足媛 やっぱり毒が盛ってあったのね!
守君大石 なーんちゃって♪ 大丈夫でしたよ、皇子さま。
赤兄 当たり前だ!! 毒殺するぐらいなら、こんな回りくどいことするわけないだろう。
讃良 赤兄の大おじさま、それどういうこと?
赤兄 あ…いや、独り言ですよ、皇女さま。
さぁ、ぐずぐずしていたら到着が遅れる。さっさと食べて次へ行くぞ!
― ランチタイム終了後 ―
さて皆さん、そろそろ出発しましょう♪
有間 赤兄。いったいどこまで歩かせるんだ? 電車や車がびゅんびゅん走るこの時代に、馬にすら乗せてもらえないなんて、あまりにひどい仕打ちじゃないか。
赤兄 わかりました。なんとかいたしましょう。
そうだ! 阿倍比羅夫どの。キミんとこ、確か水軍もってただろ?
比羅夫 はい、自分で言うのもなんですが、優秀な水軍ですよ。4月にも、船180艘を率いて秋田方面へ討伐に行きましたが… それがなにか?
赤兄 川と海を船で行けば、陸路より早く紀の湯に着けるではないか。船を調達しろ!
比羅夫 おまかせくだされ!
それでは、隅田の辺りから、吉野川の下流紀ノ川を船で下るよう手配いたしましょう。
河口の港からは、我が阿倍一族自慢のフェリーにお乗りいただき、快適な船旅を満喫していただきましょう♪
造宮丁 その1 あ、それって南海フェリーのことですか?
造宮丁 その2 違うよ、あれは、阿波へ行く船だよ…
小足媛 ちょっとお父さま。 かわいい孫がどういう状況にあるのか、分かってるわけ?
船旅を楽しんでる場合じゃないでしょ!!
比羅夫 おぉすまん; 活躍のチャンスが巡ってくると、つい血が騒いでな。
そうだ。皆の者、注目! 今日から飛鳥資料館で開催の特別展は、私がテーマになっているぞ。ぜひ、見るように。 以上、宣伝終わり!
赤兄 ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと手配しろ! さもないと、蝦夷と粛慎(みしはせ)討伐の任を解くぞ!
比羅夫 はっはい! すぐに! (ケータイを出して)
もしもし? 比羅夫だけど。
今夜、和歌山港から紀の湯行きの豪華客船一艘、用意しといて。
VIPもいるから、それなりの待遇でヨロシク♪

~ 巨勢寺の段 終わり ~

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3 茶店の段 ~起訴状~
有間 赤兄~。あのカフェで休憩しようよ。疲れた。腹減った。喉渇いた!
米麻呂 讃良さまも、お疲れになったでしょう。
讃良 もう、歩けなーい;
コノシロ ボクも、もう無理~~。
赤兄さま…わたくしも休みたいっス…
赤兄 コノシロ、鮪、お前たちまで、なに便乗してるんだ!
…といいつつ、実は俺も休みたかったんだ。
米麻呂 では、皇子さまのご希望通り、あのカフェで休みましょう。
― 一行、お茶を飲んで一息つく ―
有間 ところで、こうして僕を強制連行するからには、逮捕状なり起訴状なりがあるんだろ? 見せてみろよ。
坂合部連藥 珍しくまともなこと言ってるぞ。(ぼそっ)
有間 あのねぇ藥。言っておくけど、脳の病というのは天皇(すめらみこと)や皇太子(ひつぎのみこ)たちを欺くための芝居だったんだよ?
なのに、結局こんなことになっちゃって、狂ったふりして損したよ…
赤兄 いいでしょう。起訴状を披露いたします。鮪! 起訴状をこれへ!
ははっ。 (起訴状を赤兄に差し出す)
赤兄 俺は疲れてるから、そうだ、判事、お前が読め。一味とはいえ、エキスパートだろう。
判事 えぇっ! 赤兄さま、それは無茶ぶりというものですよ!
有間 判事、気にするな。読み上げてくれ。 (鮪、起訴状を判事に手渡す)
判事 では… (判事、起訴状を読み上げる) 
米麻呂 何を証拠にそのような! 有間さまがそんなつまらぬ企てをするなど、ありえんわ!
コノシロ 米麻呂ちゃん… 残念だけど、実際にその“つまらぬ企て”があったんだよ…
米麻呂 ほんとうですか、有間さま!
有間 これはすべて赤兄のシナリオだ。僕は、ハメられたんだ!僕は、何にも悪くないもん!
小足媛 大丈夫よ、有間! まだ起訴されただけじゃない!
執行猶予とか、あわよくば無罪判決の希望もあるわ!
讃良 無理よ。赤兄の大おじさまが有間さまをハメたってことは、裏で糸を引いているのはお父さまに決まってるわ。
坂合部連藥 讃良さま… まだ中学生なのに、なんと賢いのですか!!
讃良 お父さまと、おばあさまがグルになって、有間さまを陥れようとしているのよ。
お父さまは、人殺しなんて平気でする人だから、有間さまは殺されちゃうんだわ!
有間 讃良ちゃん… かわいい顔して怖いことをさらっと言ってくれるね…
疲れてるところに、容赦ない追い討ちをかけないでくれるかな…

~ 茶店の段 終わり ~

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4 隅田の段 ~判決~
赤兄 隅田に着いたぞ。 船はどこだ。
比羅夫 はっ。 この先に用意させてございます。 さぁ、皇子さまからどうぞ。
大海人皇子
(以下、大海人)
その必要はないぞ!
赤兄 お、大海人皇子さま! なんでここに…!?
斉明天皇
(以下、斉明)
お前たちの到着が遅いから、迎えに来てあげたわよ!
赤兄 天皇(すめらみこと)! 中大兄さまも! これは、遠路はるばる恐れ入ります。
讃良 お父さま! 紀の湯からここまでって、めちゃくちゃ遠いんじゃないの?
中大兄皇子
(以下、中大兄
なに、たいしたことはないぞ。南紀白浜空港から関空まで政府専用機で飛んで、そこからお召し列車で一直線だったからな。
中臣鎌足
(以下、鎌足)
ちなみに、わたくしめは、皇族ではないので乗せてもらえず、國襲どのと二人、馬をガンガン飛ばしてきましたぞ。
有間 やっぱり、讃良ちゃんの言うとおり、皇太子(ひつぎのみこ)どののワナだったか!
中大兄 さ~て。なんのことかな♪ さぁ天皇、さっそくお取り調べを。
斉明 有間。なぜ、謀叛など企んだ?
有間 知ってるくせに、しらじらしい… すべて赤兄のシナリオなんだろ?
天の神様はちゃんと見てるんだぞ!
大海人 天皇に対して無礼だぞ。 口を慎め。
斉明 かまわぬ。 有間、他に言いたいことがあるなら、今のうちよ。
有間 赤兄が、「天皇のやりたい放題をこのまま放っておいたら政はめちゃくちゃになるから、今のうちにブッ潰そうぜ」って、僕に挙兵するよう誘惑してきたんじゃないか。
まんまとトラップにかかったのは不覚だったよ。
それと、僕的には、両槻宮造営が悪政ナンバーワンだと思うんだけど、赤兄の挙げたワースト3にランクインしてなかったのが残念だよ。
造宮丁 その3 (ひそひそ)日本書紀の記録より、ベラベラしゃべってないか?
造宮丁 その4 (ひそひそ)あぁ、書紀では、もっとクールな対応だったはずなのにな。
大海人 あ、ゴメン; 全部書くと長いから、省略させちゃった♪ 
でも、うちの忍壁、なかなかカッコよくまとめてくれただろ?
斉明 そこ! 私語は許さないわよ。
で、有間。両槻宮の、いったい何がいけないというの?
有間 だって、平成の飛鳥マニアの間では、両槻宮はどこにあったのか、そもそも何のために作ったのか…とか、喧々諤々の議論沸騰だというじゃないか。
そんな、中途半端に皆を悩ませるだけのミステリーネタを、国家財政を圧迫してまで後世に残すなよ。
斉明 ふん。 だから、お前は甘いのよ。
両槻宮の名が残ったからこそ、飛鳥マニアが集う、“両槻会”なるすばらしいサークルができたんじゃないの。
先月も、なにやら多武峰あたりをうろついて宮の所在地を探していたようだけどね。ほっほっ♪
とにかく、そやつらが、飛鳥がいかにステキなところかを全国にアピールしてくれれば、我らも再び脚光を浴びるかもしれないわよ。
鎌足 おそれながら、天皇さま。時間がおしています。速やかに、判決を。
中大兄 では、判決を申し渡す。(判決文を読み上げる)
全員処刑している時間はないから、二人は助けてやろう。
えーっと、 だ・れ・に・し・よ・う・か・な♪
はい、守君大石くん。キミ、セーフね。天皇の情けをもって、流罪に減免。
守君大石 はは~っ。おそれいりますぅ♪
中大兄 もうひとり。 か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り♪
はい、坂合部連藥くん。ラッキーだな。キミも助かったぞ。
坂合部連藥 ははっ! 有難き幸せ♪
コノシロ な、なぜ、コイツらだけ刑が軽いんだ!!
守君大石 ふふふ… 我々は、流罪といっても、形だけ。
すぐに、呼び戻してもらえるんだもんねー♪
有間 やはり、お前たち二人は、赤兄に丸め込まれていたんだな!
坂合部連藥 初めから、ぐるぐる巻きですよ♪
鎌足 中大兄さま。 とにかく、刑の執行を。
中大兄 よし。 では、共謀者・塩屋連コノシロからだ。 國襲(くにそ)!
丹比小澤連國襲
(以下、國襲)
はっ! ようやく、出番が来ましたな。待ちくたびれましたよ。
では、とっとといきますぞ。 御免!
(刀を振り上げる)
コノシロ ちょっと、待ってくれ!
中大兄 なんだ。 往生際が悪いぞ。
コノシロ お願いです… どうか、この右手で、国の宝器を作らせてはくださらんか…
中大兄 何をわけのわからぬことを言っておる;
大海人 コノシロちゃん… 言ってる意味がよくわからないけど、なんだかカッコいいなぁ。
國襲 中大兄さま。いかがいたしますか。
中大兄 かまわん、斬れ!
國襲 では、今度こそ、御免! (コノシロの首を斬る)
中大兄 続いて、舎人の新田部連米麻呂!
米麻呂 有間さま… 赤兄の企みを見抜けず、どうもすいませんでしたー! さようなら~!
國襲 ハイ、さよなら! (米麻呂の首を斬る)
判事 あの~。 わたくしはいったい、どのようなお咎めを受けるのでしょうか…
中大兄 あぁ、さっき起訴状を読み上げた功により、無罪だ。
大海人 兄上! そんなんで、いいんですか…;
中大兄 だって、めんどくさいもん。時間ないし。
鎌足 その通りですよ。早くしないと電車が来てしまいます。
有間 流れから行くと、次は僕だよね…
中大兄 わかってるじゃないか。
鎌足 ただし、皇子さまのお体を刀で傷つけることはできません。
この紐で首を括っていただきます。 さぁ、どうぞ。
有間 “どうぞ“って言われても… 
あっ! ここで死んじゃったら、世に名高い、浜松が枝の名歌が詠めないじゃん!
あの舞台は、磐代っていう設定になってるのに。
大海人 お前、自分で“名歌”とか言うなよ…
斉明 いいわ。 最後に、お前の歌を聞いてあげましょう。
ここを磐代だと思って、一首お詠みなさい。
中大兄 よし、制限時間は10秒だ。 大海人、カウントダウンしろ。
大海人 はい、兄上。では、いくぞ、有間! じゅーう、きゅーう、はーち、…
有間 めちゃくちゃなこと言うなよ!
えーっと… よし、できたぞ!
 磐代の 浜松が枝を 引き結び ま幸くあらば また還り見む
小足媛 あぁ、なんてことなの、有間!
天皇(すめらみこと)さま、どうか命だけはお助けを…!
讃良 お父さま、おばあさま! 有間さまを、殺さないでー!
有間 母上、讃良ちゃん。 国の平和のため、極刑は覚悟の上です。
守君大石 あれ? さっきまで、しらばっくれてたくせに…
坂合部連藥 言ってることがおかしくないですかぁ?
有間 (すでに二人のことは無視)
あの世からいつも見守っていますよ。
そして、天皇と中大兄は呪ってやりますよ~。
赤兄も、すぐに、迎えにきてやるからな~~ 待ってろよ~~!
(首を括って自害)
チーム有間一同 有間さまーー!!
中大兄 ちょっと可哀相なことをしたが、これも国を治めるため。
皆の者、大儀であった。 では、解散!! チーム紀の湯は、温泉に戻るぞ。
斉明 中大兄、私はこのまま飛鳥に戻るわよ。
中大兄 え、母上、なぜですか?
斉明 留守官(とどまりまもるつかさ)の赤兄までこんなところに来てしまって、都はもぬけの殻じゃないの。
赤兄! この失態と、私の執政への批判については、あとで必ず詮議するわよ!
赤兄 そ、そんな! あれは、策略なんですってばぁ~;
斉明 それに、今宵は有間邸で宴の用意をさせているのよ。特別コースを予約してあるの。
ともに祝杯を挙げたい者は、ついてらっしゃい!
オホホホホ…!!

~ 完 ~
シナリオ担当:サポートスタッフ yukaさん






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