両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪


Vol.001(07.12.7.発行)~ Vol.054(09.6.19.発行)に連載

ネコと

歩こう飛鳥の畦道



笑いネコ
笑いネコの部屋
 「飛鳥で会える花たち」

 

 飛鳥はまだまだ自然が一杯。
 菜の花、蓮華、彼岸花にコスモスといった季節を華やかに彩る花ばかりではなく、
時には四季折々の畦道や路傍を優しい緑に彩る野草たちに目を向けてみませんか?
 「ポケットに一匹居ると凄く便利な”ポケット植物図鑑ネコ”」と
事務局員達の間で言われている笑いネコが、
皆さんの”ポケットネコ”になって季節ごとの飛鳥の野草をご紹介します。
 (緑字の植物名は「飛鳥で会える花たち」の解説ページにリンクしています。)


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【16】

 6月になりました。梅雨入りもしました。
 が...雨があまり降りません!
 歩き回るには結構なことなのですが、田植えを済ませた田圃では、水の管理に気を使うことでしょうね。
 田圃といえば、稲渕の棚田でもこの週末がオーナーさん達の田植えです。お天気が気になりますね...見ている分には、雨の中の田植えって絵になるんですけど。(^_^;)

 今回は、そんな田圃や周辺の溝に育つ植物をご紹介しましょう。
 夏の本薬師寺周辺でお馴染みの「ホテイアオイ」は、南アメリカが原産の帰化植物で、暖地では越冬しますが、一般には1年草扱いされています。花の時期は6月から10月なので、咲いていても良い時期ではありますが、本薬師寺周辺で見られるのは、恐らく7月になってからでしょう。水中の窒素やリンを吸収する力が強いので、最近では池沼の浄化用に栽培しているところもあるそうです。

 稲渕の棚田では、毎年案山子祭りの頃に「ミズアオイ」が見られますが、あれも栽培しているようなので、現在はまだ植えられていないかもしれません。自生種は絶滅危惧種です。


ホテイアオイ

ミズアオイ

 「オランダガラシ」は、あちこちの溝に生育しています。丁度花の見頃♪
 で、これも原産地はヨーロッパで帰化植物、「クレソン」という名で肉料理の付け合わせや、サラダとして食べている、あれです。


オランダガラシ(クレソン)

 「タガラシ」の黄色い花はそろそろ終わりで、この時期に見られる同じような花は、ほとんどが「キツネノボタン」か「ケキツネノボタン」です。この「キツネノボタン」と「ケキツネノボタン」の区別は、葉や茎に毛が多いのが「ケキツネノボタン」ということなのですが、余程近寄らないと分かりません。しかし、花が終わって実が生ると簡単につきます。実の棘の先が曲がっているのが「キツネノボタン」で、真っ直ぐなのが「ケキツネノボタン」です。いずれも有毒植物です。


タガラシ           ケキツネノボタン       キツネノボタン

 「ミゾソバ」や「オモダカ」は、もう少し後にならないと花は見られませんが、そろそろ繁殖し始めているので、今のウチに見つけておくと良いかもしれません。
 「ミゾソバ」の葉は、「ソバ」に似た形で、田圃の脇の水路を覆い尽くすように繁殖します。「オモダカ」は昨年夏にメルマガ28号でご紹介しましたが、田圃の中に生え、独特の3つに分かれた葉っぱを持った植物です。


ミゾソバ

オモダカ


カワヂシャ
オオカワヂシャ

 在来種の「カワヂシャ」よりも、「オオカワヂシャ」というヨーロッパからアジア北部が原産の帰化植物の方が、最近何処の溝でも繁殖しているようです。

 この二つを区別するには、葉っぱの縁を見てください。大きいギザギザがあるのが「カワヂシャ」で、ギザギザが細かく遠目ではつるっとしているように見えるのが「オオカワヂシャ」です。花も、「オオカワヂシャ」の方が色が濃く大きくてよく目立ちます。

 さて、今回はこれくらいで...みなさんご一緒に探してみませんか?
 梅雨時の飛鳥を、水辺の植物を観察しながら歩くのも一興かと...(^_^;)
                             (09.6.19.発行 Vol.54に掲載)



【15】

 第14回定例会「野守は見ずや 名柄の遊猟(みかり)-田村薬草園に藤原京出土木簡記載の生薬を訪ねるー」も、5月9日の真夏のような晴天の日に無事終了しました。
 今回は、説明係・資料作成係でしたので、事前準備に追われて飛鳥を訪ねる時間もなかなか取れないでいましたが、大型連休最終日の5月6日、前日の荒天が少し治まり、時々パラパラ雨が落ちてくる程度になったので、これを逃してはと出かけることにしました。飛鳥駅から観光客で賑わう高松塚古墳の脇を素通りし(笑)、朝風峠を超えて稲淵へ歩きました。
 稲淵と言えば...というような定番の花はありませんでしたが、野草大好きネコにとっては春爛漫の花盛り♪でした。
 で、そんな中から今回は「野道・畦道で見られる薬草」のお話を..って、また生薬かい?!(笑)
 ま、そうおっしゃらずに...(^_^;)

 最初は、「マムシグサ」です。朝風峠では初めて見ました。


マムシグサ

 サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、ご存知の方はこの写真であれっ?と思われるかもしれませんね。よく見られるのは、下の写真のように紫褐色で筋の入ったもの、または緑に筋の入ったものです。変異の多い植物なので、筋の入らないものもありますし、この朝風峠で見たものは苞が開いてからかなり時間が経ったもので色が白っぽくなっているのだろうと思います。「苞」と書きましたが、「仏炎苞」と呼ばれている部分で、花はこの内側に棒状に集まっています。テンナンショウ属は、雄花と雌花が栄養状態によって変わる植物で、葉が余り伸びていない状態では雄花が、葉が伸びて栄養状態が良くなったものでは雌花が付きます。これを利用すれば、葉っぱより上に咲いていたら雄花、葉っぱの下に咲いていたら雌花と見分けることが出来ます。

 栄養状態が良い方が、葉っぱの成長は良いと言えるので。


マムシグサ(東京理科大学自然保護林内)

マムシグサ(緑、東京理科大学自然保護林内)
 生薬名は「天南星(テンナンショウ)」で、球茎を用います。薬効は去痰、鎮痙、鎮痛です。
 「天南星」という生薬に使われる植物は、サトイモ科テンナンショウ属全般で、「ムサシアブミ」とか、「ウラシマソウ」「ヒロハテンナンショウ」などがあります。(写真は摂南大学薬用植物園のものです)


ムサシアブミ

ウラシマソウ

ヒロハテンナンショウ


カラスビシャク
 定例会の田村薬草園では、「カラスビシャク」というサトイモ科ハンゲ属の薬草が見られました。現在では日本各地で畑の雑草と化していますが、古代に中国から帰化した史前帰化植物ではないかと言われているものです。生薬名を「半夏(ハンゲ)」といい、球茎を乾燥させて用います。薬効は鎮咳、去痰。麦門冬湯に調合されていて、乾いた咳に良いそうですが、妊婦の使用は堕胎の危険を伴うという注意があります。
 田村薬草園で、参加者の皆さんにはテンナンショウ属との違いを説明しましたが、摂南大学薬学部の薬用植物園で栽培しているものの写真を撮らせてもらっていますので、お見せ出来なかった花をご紹介しましょう。

カラスビシャクの花

 テンナンショウ属は、雄花と雌花が別々の仏炎苞の中に出来ますが、この「カラスビシャク」は一つの仏炎苞の中に雄花と雌花があります。写真の白い部分が雄花、その下の部分が雌花です。

 お次は、「アメリカフウロ」です。フウロソウ科フウロソウ属の1年草で、何処の道端でも見られる北アメリが原産のインベーダー(笑)なのですが、何とこれが今では「ゲンノショウコ」の代用品として使われているのです。「ゲンノショウコ」の花はもう少し初夏に近づかないと見られませんが、「アメリカフウロ」はほとんど1年中咲いているようです。薬効は、下痢止め、整腸で、全草を用います。


アメリカフウロ

 「オオバコ」は定例会の咲読でも紹介しました。今頃が花盛りです...地
 味ですが。(^_^;)


オオバコ

 「クズ」「アカネ」は、花はまだ咲いてはいませんが、盛んに成長しているのが見られます。「クズ」はやはり咲読で紹介しました。
 で、「アカネ」についても、秋にメルマガ33号の飛鳥話2でご紹介しています。


クズ

アカネ

 「カンサイタンポポ」もあちこちで見られました。「セイヨウタンポポ」の方が、1年中花を付けて自家受粉するため、多くなっている地域もあるようですが、幸い飛鳥では沢山の「カンサイタンポポ」が見られます。「カンサイタンポポ」も「蒲公英(ホコウエイ)」といって、根を健胃、催乳薬として使います。また、「タンポポ珈琲」といって、カフェインレスの珈琲としても飲まれています。

 さて、野道・畦道の薬草、いかがでしたか?
 お断りしておきますが、ご紹介したのは読者の皆さんに「遊猟(みかり):薬草刈り」をしていただくためではありません。畦道といえども、他人の土地である場合がほとんどですから、そこに生えているものを勝手に採るのは、やはりルール違反だと思います。その地域に住んでいたり、知人がいて誘ってもらったりした場合に野草を摘むのはかまわないのですが、外部の人間が断りもなく植物を採るのは、慎むべきとネコは考えています。
 どうか飛鳥の畦道の薬草たちは、「あ、これこれ!」と、見つけて楽しむだけにしておいて下さいませ。
                             (09.5.15.発行 Vol.51に掲載)



【14】
「ハコベ」は、ナデシコ科ハコベ属の1年草で世界各地それこそ至る所に生育する植物です。「ハコベ」を見ずに飛鳥の畦道を歩くというのは、ほとんど不可能なのですが...皆さん気付いていらっしゃるでしょうか?(^_^;)
 Pさんが、「ハコベにも色々ある」と書いていました。そこのところをもうちょっと詳しくお話ししてみましょう。

 Pさんのメルマガ記事に載せていた写真は、茎が赤っぽいものでしたね。茎が緑色のものもあって、これは「コハコベ」という変種であると、牧野博士は書いておられます。しかし「日本野生植物館」や「日本の野生植物」では、「コハコベ」は「ハコベ」の別名とされ、茎の緑のものを「ミドリハコベ」としているのです。「ハコベ(コハコベ)」と「ミドリハコベ」の決定的な違いは「種子の突起が尖っているかどうか」だそうで...まだ、ネコも確認出来ていません。ちなみに、ネコのホームページの「とっても身近な植物図鑑」に「ハコベ」として収録しているのは、茎の緑のものです。

 いずれにしても、この「ハコベ」「コハコベ」「ミドリハコベ」の共通の特徴は、1.花びらが5枚でそれぞれが深く切れ込み、一見10枚に見えること、2.萼片(花びらを支えるように外側に付いている緑色のパーツ)は花びらと同じか、少し長く、毛が生えていること、3.茎の一部に筋状に毛が生えていること...というのが、普通に見て分かるものです。
 って、普通に見たんじゃ分かんない?(^_^;)

 次に、ルーペがないと分からないような特徴を...アハハ(^_^;)
 実は、この特徴で、「ハコベ」と「ウシハコベ」というハコベの仲間とを区別出来るのです。
 それは...雌しべと呼んでいる部分です。「花柱」というのですが、3つ有るのが「ハコベ」5つ有るのが「ウシハコベ」なのです。

ハコベ

ウシハコベ

 「ウシハコベ」は「ハコベ」より大型で、ちょっと見たところは食べるには硬そうでした。(^_^;)
 やはり、至る所に生える...と、図鑑には書いてあるのですが、散々探して東京理科大学の野田キャンパス構内でやっと見つけました。関西では、未だに見つけていません。
 「ハコベ」と違って、「ウシハコベ」は越年草で、時には多年草ともなるそうです。これを、ウシハコベ属として、分けるている図鑑もあります。

 最後に、ちょっと似ていて違う、「ミミナグサ」というのをご紹介しておきましょう。
 ナデシコ科ミミナグサ属の1年草で、これも日本各地の畑や路傍に生育します。「耳菜草」と書き、葉っぱがネズミの耳に似ていて、若い茎や葉を食用にするところから付いた名前だそうです。
 特徴は、「ハコベ」によく似た白い花ですが、花びらは深く切れ込まないので、「先っぽに浅い切れ目の入った5枚の花びら」に見えます。
 日本各地に...と書きましたが、実は最近あまり見られなくなってきているのが現実です。理由は良く分かりませんが、「オランダミミナグサ」という外来種に席巻されてしまったのかも。
 この「オランダミミナグサ」は明治時代に渡来したヨーロッパ原産のインベーダーで(笑)、「オランダ」と付いているのは、特にオランダから来たという意味ではありません...「ヨーロッパ=オランダ」って、当時はそういうイメージだったのでしょうね。
 この二つ、よく似ていて区別が付きにくいのですが、「ミミナグサ」の方が花の付き方がまばらで、花の柄が長いというのが違いです。

ミミナグサ

オランダミミナグサ

 いかがでしょうか?
 すごく身近で、何時も見ているのに気が付いていない花「ハコベ」、偶には近づいてよーく見てやって下さいね。(o^^o)
                             (09.4.3.発行 Vol.48に掲載)



【13】

 立春も過ぎ、季節は確実に春へと向かっています。
 奈良では「お水取りが済まないと春は来ない」と言いますが、確かに、お水取りの頃には雪が降ったりすることがあり、暖かい日が続いても油断は出来ません。

 この時期、飛鳥の畦道に見られる野の花は、ハコベ、オオイヌノフグリ、タネツケバナ、ホトケノザなどの早春から咲き始める花たちです。未だ少し寂しいのですが、それでも春の足音が聞こえるような気がしますね。先日(2009年2月14日)の石神遺跡、飛鳥京北限の現地説明会には、ネコは行かれなかったのですが、暖かいを通り越して、少し暑いくらいの陽気になって、現説周辺の畦道では、更に花たちが元気に皆さんをお待ちしていたのではなかったでしょうか?って、見て下さったかなぁ、野の花も!(^_^;)

 春の花のお話には、未だ一寸早いので、今回も秋にご紹介した花たちのお話をしてみようと思います。
 今回は、キク科の花のお話です。最初は、名前にも「アキ」が付いている「アキノノゲシ」から。
 東アジアから東南アジアに掛けて広く分布する、メルマガ23号でご紹介した「史前帰化植物」の一つです。1年草で、秋に花を咲かせたあとは枯れてしまいます。この時出来た種は、秋の内に芽が出て「ロゼット」の状態で冬を越します。ロゼットについては、飛鳥検定2の解説をご覧下さい。
「秋野芥子」という漢字を書くのですが、どう見ても「芥子」に似ているとは思えない植物ですね。なぜ、ちっとも「芥子」に似ていないのにこんな名前が付いたのでしょう?
 それは、間にもう一つ別の植物が介在しているからなのです。その花の名は「ノゲシ」。ヨーロッパ原産であろうと言われていますが、世界中至る所に生えている植物です。日本には、かなり古い時代に中国経由で帰化したものと思われています。で、この名前の「野芥子」は、葉っぱが「芥子」に似ているから付いたのだそうです。この「ノゲシ」の別名は「ハルノノゲシ」で、4月から7月くらいに咲きます。「アキノノゲシ」は花が似ていて、秋に咲くことからこういう名前になったということですが、キク科の花でこういうタイプのものは、どれも似ているといえば似ているのでして、特に「ノゲシ」と「アキノノゲシ」の花が似ている、というようには思えないのですが。しかも葉っぱの形は「ノゲシ」とは全く似ていないもので、「ホソバノアキノノゲシ」という全く葉っぱにギザギザのない品種もあるくらいですから、「芥子」が付く名前になって、「アキノノゲシ」自身、変な気がしてるかも。(笑)

 次の「ヤナギタンポポ(柳蒲公英)」というのも、葉っぱが柳に似ていて花がタンポポに似ている、という納得して良いのか、どうなのか?というような由来の名前を持つ植物です。 北海道から九州まで、至る所の草地や河原に生育する多年草で、花の付き方は、タンポポのように根元から花茎が伸びて一つの花を付けるのではなく、長く伸びた茎に葉っぱと花を付けるので、「ニガナ」の方が似ているような気がします。「ニガナ」より「タンポポ」の方が一般に知られた名前だから、こういう名前になったのでしょうか?

 長くなってきたので、「野菊」のお話はまたの機会にして、最後にもう一つ黄色い花を付ける「オニタビラコ」のお話をして、今回の締めにします。
 「オニタビラコ」はそれこそ何処の道端にでも生えている1年草で、やはり秋に芽を出して「ロゼット」で冬越しします。
 この花の名前も、やはりちょっと変なのです。「タビラコ」というのは、春の七草の「ホトケノザ」です。早春に「オニタビラコ」より少し大きい黄色の花を付けます。「オニタビラコ」は、花は小さいですが、植物全体は「タビラコ」よりかなり大きくなるので、「鬼」と付けられているのも納得出来るのです。「タビラコ」は「田平子」と書き、田圃に「ロゼット」が広がる様子から付いた名だそうで、こういう形の植物は結構多いので何故これが?と思わないこともないのですが、まあまだ納得がいくのです。変なのはその先。この「タビラコ」は別名で、「コオニタビラコ」が正式名称になっているのです。つまり、「オニタビラコ(鬼田平子)」より小さいから「オニタビラコ(小鬼田平子)」だというのですが、これって逆じゃないですか!
 ちなみに、「コオニタビラコ」になった理由は、「キュウリグサ」も「タビラコ」と呼ばれることがあるから、ということなんですが、牧野博士は「キュウリグサをタビラコと呼ぶのは誤りである」とされています。

 では、今回はここまで。
 春よ来い、早く来い♪...三寒四温の毎日、体調に気を付けて、元気に飛鳥の畦道を歩いて下さいませ。

  ここに登場している植物写真は、ここここここここにあります。
 「ケシ(芥子)」は栽培禁止植物ですので、写真はありません。(^_^;)
                             (09.2.20.発行 Vol.44に掲載)



【12】

 この冬は一段と寒さが厳しいような気がします。
 インフルエンザの流行も早いとか、読者の皆様はきちんと備えが出来ていらっしゃいますか?
 笑いネコは、ちゃんと予防接種を済ませました。
 電車に乗る時は、マスク着用♪
 面白いことに、電車の中で咳をしている人はマスクをしてないんですよね!面白かないか!(x。x)゜゜゜

 さて、そんな冬枯れの季節、先日も講演会で飛鳥に行き、会場までの往復の道端を観察致しましたが、めぼしい花はございませんでした。
 イヌタデにハキダメギクくらいで...って、ごめんね!(笑)


イヌタデ
 
ハキダメギク

 前回ご紹介した秋から初冬に掛けて見られる花たちの中から、今回は「タデ科」の花たちについてのお話をしようと思います。
 分類学的な話は、多分どなたにも読んで頂けないと思いますので(笑)、「見た目」のバリエーションと特徴についてのお話にしました。
 前回上げた「ミゾソバ」「イヌタデ」「ママコノシリヌグイ」「イシミカワ」「サクラタデ」「イタドリ」は、見た目から二つに分けられます。ピンク系の可愛い花を付けるものと、これが花?というような地味な花のものです。そうは言っても、この花たちはどれも「花びら」を持っていません。可愛いピンク色のは「萼」なのです。「イシミカワ」の萼は緑色で葉っぱと区別が付きにくいですし、「イタドリ」は白っぽい汚れたような色の萼で、可愛いとは言えません。
 実は、皆様に嫌われる分類学から言うと、ここに上げた花は一つを除いてすべて同じ属「イヌタデ属」なのです。さて、仲間はずれはどれでしょう?(笑)
 正解は、「イタドリ」です。しかし、花の地味さから言うと「イシミカワ」と「イタドリ」が同じ仲間になりますね!

イシミカワの実

イタドリ

 「イシミカワ」は、去年見つけた場所では今年は見られませんでした。でも、花は地味ですが派手な瑠璃色の実を付けますから、何処かに生えていたら気がつくと思います。この瑠璃色の実から「トンボノカシラ」という俗名もあるそうです。
 「イタドリ」は「虎杖」と書いて、若い芽や茎を食用にします。京都にこの「虎杖」をお店の名前にした「おばんざいのお店」があり、虎杖の料理が食べられます♪
 
イヌタデ

サクラタデ

ママコノシリヌグイ

ミゾソバ

 可愛い花のグループは、道端や林の下草として生える「イヌタデ」「ママコノシリヌグイ」と、湿地や田圃、溝などに生える「ミゾソバ」「サクラタデ」と、生育場所で二つに分かれます。
 また、花の付き方で分けると、「イヌタデ」と「サクラタデ」は細長い穂状に花が付き、「ミゾソバ」と「ママコノシリヌグイ」は丸くかたまって花が付きます。
 で、残念ながらこれらの植物は、どれも食用にはなりません。「イヌタデ」などは、辛味が無くて食用にならない「蓼」の総称だったそうで、牧野博士は違う名前にしようと考えておられたようですが、上手くいかなかったみたいです。「蓼」というのは「ヤナギタデ」の漢名で、イヌタデ属で食用になる「蓼」は、みんなこの「ヤナギタデ」の変種だそうです。ちなみに、「蓼」はこの辛味を利用し、刺身のツマなどに使われます。


ヤナギタデ

 タデ科には、他にも食用になる植物があります。夏に花を付けるので前回のリストには上がっていませんが、「スカンポ」と呼ばれる「スイバ」は何処でも見られますし、「ソバ」もあちこちで栽培されています。食用ではありませんが藍染めに使う「アイ」も「タデアイ」というタデ科の植物で、こちらは飛鳥では見たことがありませんが、木簡に登場します。


スイバ

ソバ

アイ

 「蓼食う虫も好き好き」というのは、『蓼のように辛い物でも食べる虫があるように、人の好みも様々である』、という意味で、「蓼」が不味いということではありません。
 みなさんも、このタデ科の植物には、結構お世話になってるんですよ!
 道端の小さな仲間達にも、今度は一寸目を向けてやって下さいね。

  ここで取り上げた植物のその他の写真や詳しいは、こちらをご覧下さい。
                             (08.12.19.発行 Vol.38に掲載)



【11】

 稲淵の彼岸花祭りも終わり、棚田も稲刈りの季節です。飛鳥の畦道も、夏の花から秋の花へとすっかり模様替え♪
 今日は、そんな飛鳥の秋の花たちをご紹介します。

 彼岸花祭りの稲淵へ出かけると、誰もが彼岸花と案山子にカメラを向けています。そんな中で、畦や崖にひっそりと咲いている花たちを探すのも、密かな楽しみです♪
 彼岸花と案山子に背を向けて、崖や畦にしゃがみ込んでるネコに、「何があるんですか?」と尋ねる方もいらっしゃいました。(笑)

 その中で今回特にご紹介したいのは、ずっと前から実物を見たかった花。その名は「アカネ」...「茜色」の染色に使われていた「アカネ」です。稲淵でその葉っぱを見かけてから、4年目にしてようやく花に巡り会えたのです。憧れの花は、マクロでないと撮れないような小さな花...思いっきり地味です。(笑)
 撮った写真は、P‐Saphireさんのイヴェントに投稿させてもらいました。


アカネ
 「アカネ」はアカネ科アカネ属のツル性の多年草です。染色にはこの根を使うのですが、掘り起こした時は赤ではなく黄橙色なのです。空気にさらして乾燥させると赤黄色になります。この状態だと、押し花標本にするために紙に挟んでおくとその紙が赤く染まるのだそうです。この乾燥した色から「アカネ(赤根)」という名が付いたようです。
 「アカネ」はアジアの温帯に広く分布している植物ですが、生育地によって少しずつ変種があるようです。
一方、ヨーロッパには「セイヨウアカネ」というのがあって、これで染色すると「madder:セイヨウアカネ」と呼ばれるやや明るい茜色になるそうです。
 この茜色ですが、茜色って言われて赤系の色の中からすぐに選び出せますか?ネコは一寸無理かも。で、調べてみました。
 16進法の表記では「#B22D35」だそうです。どんな色か分からない方は、これでお試し下さい。えっ?無理ですか?(^_^;)
 それでは、こちら↓をご覧下さい。


茜色・#B22D35
(ブラウザの設定よって色合が変わることがあります。

 この季節に飛ぶ赤とんぼは「アキアカネ」という種類のトンボで、暑さが嫌いで羽化するとすぐに山地に移動し、涼しくなった9月頃にまた平地に降りてきて産卵するのだそうです。この時の成熟した雄の腹部の赤色から、「アキアカネ」の名前が付いています。「あかねさす...」は夕暮れの空の色、「アキアカネ」の赤色、そんなに派手でなく、一寸暖かみを感じる茜色、良いなぁって思いませんか?

 「アカネ」の根で染色すると、茜色の他にもっと鮮やかな「緋色」に染まる場合もあるそうです。「緋色」に染まる時は、パープリンという色素で染まっているのですが、「アカネ」の根にはパープリンの他に色々な化学物質が含まれていて、単離するのは困難だとか。日本の「アカネ」は根がヒゲ根を少し太くした程度の細いものなので、草木染めに使うにも大量に採るのが大変なため、中国で漢方薬用に栽培されたものを使っている場合が多いそうです。漢方では「茜草根(セイソウコン)」といい、利尿、止血、解熱、強壮などの薬効があるとされています。

 ところで、「アカネ」のような地味な花では、花から植物名を特定するのは困難です。逆に花がない時期でも「アカネ」だと分かるのです。茎が四角でザラザラしている蔓植物で、ハート形の葉っぱが一カ所から4枚、2枚ずつ向き合ったように出ているという、特徴的な姿をしているからです。この茎のザラザラは、逆向きの棘が生えているからで、4枚輪生(茎をグルッと取り囲むように葉っぱが出ることをこう言います)のように見える葉っぱは、2枚の本当の葉っぱと、2枚の大きな托葉(葉っぱの一部で、葉っぱの根元の所に出る葉っぱ形のパーツです)からなっています。つまり、葉っぱは4枚に見えるけれど実は2枚なのです。ちなみに「セイヨウアカネ」は葉っぱが6枚(本物の葉っぱ2枚に托葉が4枚)です。どうですか?一寸面白い植物でしょ?今度は、みなさんも探してみてくださいね。(o^^o)

 秋の飛鳥の畦道は、他にも沢山の花が咲いていて、春に負けないくらい種類も多く賑やかなのです。今回は、名前を挙げておくだけにして、冬枯れの時期に少しずつそれぞれの花を紹介することにします。


アキノタムラソウ
 
ツルボ
 シソ科の薄紫の花は「アキノタムラソウ」でユリ科の薄紫の花は「ツルボ」です。


ヤブミョウガ
 
ツユクサ

イボクサ
 ツユクサ科は、白い小さな花が「ヤブミョウガ」、濃い青紫の花は「ツユクサ」、ピンク花は「イボクサ」と色もさまざま。


ミゾソバ
 
イヌタデ

ママコノシリヌグイ

イシミカワの実

 タデ科は薄いピンクの「ミゾソバ」に濃いピンクの「イヌタデ」、ピンクで棘だらけの「ママコノシリヌグイ」、変わった目立たない緑色の花と瑠璃色でよく目立つ実を付ける「イシミカワ」(去年見かけた石川池の畔では今年は見かけていないのですが)、可愛い桜のような花の「サクラタデ」、大型の食べられるタデ科「イタドリ」と賑やかです。


サクラタデ
 
イタドリ

 アカネ同様地味な黄緑の花を付ける「カナムグラ」はクワ科、これも花?という姿の「カラムシ」はイラクサ科です。


アキノノゲシ
 
ヤナギタンポポ

 キク科の花では、薄い黄色の「アキノノゲシ」、濃い黄色の「ヤナギタンポポ」、薄紫の「野菊」が咲いています。一般に「野菊」と呼ばれている薄紫の花は、「ヨメナ」「ユウガギク」「ノコンギク」の3種類があって、なかなか区別がつきにくいのですが...どれかは咲いています。(笑)


タカサブロウ
 
オニタビラコ

ツリガネニンジン

 地味目のキク科には変わった名前の「タカサブロウ」、黄色の小さい花「オニタビラコ」、「ヨモギ」も秋に花を付けるキク科です。
 キキョウ科の「ツリガネニンジン」もゆらゆら風に揺れています。しかし、自生の「キキョウ」は飛鳥では見られません。


ヌスビトハギ
 
ヤブツルアズキ
 マメ科の花は、ほとんどが「ヌスビトハギ」ですが、黄色の「ヤブツルアズキ」も見られます。

 帰化植物では、「アメリカセンダングサ」「コセンダングサ」「オニノゲシ」「ヒレタゴボウ」「ハキダメギク」「ヒメムカシヨモギ」「ノゲイトウ」「メマツヨイグサ」「マルバルコウソウ」「アメリカアゼナ」そしてもちろん一時ほど数は多くないですが「セイタカアワダチソウ」も健在です。

 フゥーッ!思いっきり名前を挙げてみましたが、きっと「あれが抜けてるよ」って思う方もいらっしゃるかも。(^_^;)
 イネ科の植物も色々ありそうですが、ネコは勉強不足でカバーし切れていません。

 ここで取り上げた植物のその他の写真や詳しい説明は、こちらをご覧下さい。

                             (08.10.17.発行 Vol.33に掲載)



【10】 古代植物談義 その3

 今回も飛鳥池遺跡発掘木簡から、「麻」についてお話をしてみようと思います。

 参考サイト:木簡ひろば(奈文研サイト内)
   

 345番に「大麻」、528番に「麻油」、753番に「麻」と三種類の「麻」関係の木簡を見つけました。

 「麻」はアサ科アサ属の1年草で、原産地は中央アジアです。少し前までは「クワ科アサ属」とされていましたが、クワ科との違いがいろいろ分かってきて、新しい図鑑では「アサ科」になっています。2mにも育つような大型の植物で、生育が早く花や葉にはテトラヒドロカンナビノールという麻薬成分が含まれていますが、果実は「麻子仁」という生薬として用いられます。

 渡来した時期は古く、中国経由で入ってきて、弥生時代にはすでに栽培されていました。「大麻」はその漢名で、今では麻薬として有名になってしまっていますし、「大麻取締法」で一般の栽培は禁じられていますが、古くはヨーロッパではスパイスとして、中国では五穀の一つとして主食にされていた時代もあったそうです。今でも七味唐辛子の中には、この麻の実を煎ったものが入っています。生の実は香りがほとんど感じられず、煎ることによって芳香が生じるのだそうです。

 麻の実は油脂分が多く、食用や燃料用油の原料にもされています。「麻油」というのは、その油のことだと思われますが、この時代から油を採って使っていたんですね。

 もちろん、「麻」の利用は食用に限られてはいません。涼しい夏服素材としてお馴染みの「麻」は、最近では繊維用に改良された品種(麻薬成分を含まない!)も作られ、エコ衣料としてもてはやされているようですが、古代から「麻」は神聖な繊維とされていたそうですから、推古天皇のお召し物にも「麻」が使われていたのでしょうね。

 余談ですが、七味唐辛子に入っていて、ケーキやあんパンのトッピングにも用いられている「ケシの実:ポピーシード」を採る「ケシ」も麻薬取締法で一般の栽培が禁じられている植物です。どちらも、麻薬としての悪評ばかりが目立ってしまっていますが、食用や繊維利用など有用な植物であることは間違いありません。麻薬として愚かに利用するのではなく、賢く利用したいものです。
                              (08.8.22.発行 Vol.29に掲載)



【9】

 関西は毎日のように猛暑日!!(x。x)゜゜゜
 暑い日が続いています。
 暑いのが苦手の笑いネコは、この時期あまり出歩きません。
 稲渕の棚田の稲も、順調に育っているでしょうね...。
 本薬師寺の周辺は、ホテイアオイが花盛りでしょうね...。
と、パソコンの前で想像するだけです。(笑)

 で、今回の話題は、暑い中をお出掛けになる皆さんに、暑さに負けずに畦道で頑張っている花たちをご紹介...そうですね、暑いので水辺に咲く花をということにいたしました。

 「オモダカ」はオモダカ科オモダカ属の多年草で、水田の中に咲きますので、除草剤を一杯撒くような田圃では見られません。三つに分かれた葉っぱの形が人の顔のようだというので「面高」という名が付いたそうで、枕草子にも出てくる小さな白い花を咲かせる植物です。


オモダカ

 実はこの植物、皆さんよくご存知の食用植物の元になった植物なのです。その食用植物は...「クワイ」です。「オモダカ」を改良した変種で、塊茎という根っこ部分を食べます。「オモダカ」の塊茎は、普通食用にはしないので、「ハナグワイ」という別名もありますが、地方によっては食用とされることもあるようです。塊茎に利尿作用があるといわれますが、特に生薬としての利用はないようです。
 特徴のある葉っぱは、図案化されて家紋や鎧の威に使われてきたとか。


ミゾカクシ

 「ミゾカクシ」はキキョウ科ミゾカクシ属の多年草で、文字通り田圃の溝や水田表面を覆い隠すように生長する植物です。名前の由来もこの生育状況から来ていて、畦に筵を敷いたように生えることから「アゼムシロ」という別名もあります。ピンクの可愛い小花を咲かせるのですが、繁殖力の強さから、田圃の雑草として嫌われています。
 ちなみに、これは食用にはならないようです。(笑)


 タカサブロウ

 「タカサブロウ」はキク科タカサブロウ属の1年草で、在来種は水田や畦、溝など湿った所に生えますが、第2次大戦後に帰化した「アメリカタカサブロウ」という帰化植物は、乾燥にも耐えるので、道端にも生えています。「タカサブロウ」という和名の由来は、すごく興味があるのですが、残念ながら分かっていません。

 本薬師寺の「ホテイアオイ」や、稲渕の棚田で見られる「ミズアオイ」は、どちらも栽培されているものです。

 「ホテイアオイ」はミズアオイ科ホテイアオイ属の多年草で、メルマガNo.18でもご紹介したように、明治時代以降に観賞用に入ってきました。池などで自生しているものも見られますが、本薬師寺のは観光用に栽培されているものです。

 「ミズアオイ」の方は、ミズアオイ科ミズアオイ属の1年草で在来種です。古名を「ナギ」といい、万葉集にも詠まれている植物で、「菜葱」「水葱」として嘗ては食用にもしていましたが、今では絶滅危惧種に挙げられています。
 毎年稲渕の棚田の一部で栽培されているものが見られるので、今年もきっと...と思っているのですが、未確認です。また、高取町の夢想館横でも栽培されています。

 「アサザ」はミツガシワ科アサザ属の多年草で、睡蓮のような葉っぱに鮮やかな黄色の五弁花を咲かせます。これも絶滅危惧種で、栽培されているもの以外見ることが出来ません。高松塚の歴史公園館裏の池で栽培されていましたが、今年はどうでしょう?水の浅い所に生えるので、「浅浅菜」が転じて「アサザ」になったという説もありますが、確かではないようです。古名は「アザサ(阿邪左)」で、万葉集にも詠まれています。

  さて、少しは涼しくなったでしょうか?
  植物たちも温暖化に戸惑っているのか、時期はずれに咲いたり、咲く時期
 に咲かなかったりしています。それでも頑張ってる植物たち、皆さんも、暑
 さにめげず、この夏を乗り切って下さい。
                             (08.8.15.発行 Vol.28に掲載)



【8】 古代植物談義 その2

 今回も、飛鳥池遺跡発掘木簡からのお話です。
 182番に「仏麻油」、183番に「富子木油」、184番に「荏子油」と3つ列んで油が登場します。182番と183番のものは、今のところどんなものなのか分からないのですが、184番の「荏子油」はエゴマの油のことです。

 「エゴマ」はシソ科シソ属の1年草で、広く東アジアに分布しています。日本では古くから栽培されていて、長野県の荒神山遺跡では縄文時代中期の遺物と共に「エゴマの種」が出土しているそうです。「エゴマ」は「荏の胡麻」で、「エ」はハングル語で「エゴマ」を表す「yim」の転訛だとか。「ゴマ」が付いていますが、「ゴマ」はゴマ科ですから全く違う植物です。油の成分も「エゴマ」は「αリノレン酸」が多いのに対して、「ゴマ」の方は「αリノレン酸」より「リノール酸」の方が多いのです。

 「シソ」は赤紫蘇と一般に言われる葉っぱが赤紫のものと青紫蘇と呼ばれる葉っぱが緑のものがありますが、中国原産の紫蘇(「蘇」とも言われます)は赤紫蘇の方です。青紫蘇はその変種で「エゴマ」も同じく変種です。種から採る油は、最近健康食品として話題の「αリノレン酸」が多い油です。「エゴマ」を「ジュウネン」という呼び方をする地方もあり、「食べると十年長生きをする」という意味で「ジュウネン」と呼ばれているとか。

 おっと、これでは「ごま油」は健康に良くないみたいになってしまいますね。

 『ごま油が近年注目される要因として、ごま油に特徴的に含まれるゴマリグナンがあげられる。ゴマリグナンにはセサミン、セサミノールをはじめとして主なもので6種類程度ある。ゴマリグナンの中のセサミンは、肝臓の活性酸素を取り除いてくれるので肝臓を守り、機能を高める。またアルコールが分解される途中でつくられる毒素・アセトアルデヒドの生成もおさえるので、ごまを食べると悪酔いや二日酔いを防ぐ効果がある。セサミノールは非常に強い「抗酸化物質」で活性酸素を取り除く効果があり、ごまをたくさん食べれば老化の進行や、病気の発生を防いだり、また紫外線によるシミやシワにも効果があるといわれる。』(ウィキペディアからの引用です)

 だそうで...安心して中華料理と紹興酒をお楽しみください。(笑)
 「ゴマ」はインドまたはエジプトが原産で、これも古くから日本で栽培されてきたようですが、栽培の歴史では「エゴマ」にはかないません。

 中国や日本では「シソ」の方が葉を食用とするには好まれてきました。一方、朝鮮半島では「エゴマ」の方が好まれるようで、韓国料理には「エゴマの葉」が使われます。最近では、韓国料理も人気が出ているので、皆さんも「エゴマの葉」を何処かで知らずに食べているのではないでしょうか。


エゴマの葉

 さて、「荏子油=荏油」に戻りますと、中世末期に菜種油が普及するまでは植物油の代表はこの「エゴマ油」でした。そして、食用だけでなく油紙や番傘に塗る油としても利用されていたようです...推古天皇が「荏子油」を塗った傘をさしていたかどうかは知りませんが。(^_^;) その後、「エゴマ油」は次第に忘れられた存在になってしまいます。1990年代になって、「エゴマ油」の主成分である「αリノレン酸」が「リノール酸」の摂りすぎの弊害を押さえる働きがあることが注目されるようになり、健康食品として再び脚光をあびる...はずが、知名度の無さから「シソ油」の名称で市販されているものも多いそうで...
 頑張れ「エゴマ油」!!                 
                              (08.7.18.発行 Vol.26に掲載)



【7】 古代植物談義 その1

 「ネコと歩こう飛鳥の畦道」で、渡来系の植物のお話をしました。その中で、植物についての古代の記録はあまり無いと書きましたが、その古代の植物を探る手がかりになる記録があるのです。
 それは...「木簡」です。
 両槻会第九回定例会は奈良文化財研究所主任研究員の市大樹先生の講演で、木簡のお話です。そこで木簡についてちょこっと調べてみようかなと。今まで、木簡について余りよく知らなかったのですが、これがなかなか奥が深そうで...。

 参考:両槻会第九回定例会公式レポート

 飛鳥で最も多くの木簡が発掘されているのは「飛鳥池遺跡」です。そこで、まず手始めに奈良文化財研究所の「木簡ひろば」を訪ね、「飛鳥池遺跡」の木簡を閲覧して植物名を探してみました。沢山出てくる「稲」「米」はこの際面白くないのでカット。(笑)1400点以上収録されている中で、何と180番目にヒットしたのが「桑根白皮」というものでした。
 どっかで見たぞ...漢方薬?

 参考サイト:木簡ひろば(奈良文化財研究所公式HP内)
   

 そこでこのシリーズのトップを飾って、この「桑根白皮」に登場してもらうことにしましょう。

 どういうものかというと、まさに「桑の根っこの皮」を干したものでして、利尿、鎮咳、消炎作用があり、気管支炎の治療薬などとして現在でも漢方で使われているものです。木簡にこれが書かれているということは、推古天皇も風邪を引いたら「桑根白皮」を飲んでいたとか?

 現代の「クワ」はクワ科クワ属の落葉高木ですが、その葉っぱはご存知蚕のエサですから、畑で栽培され始終刈り取られるので、そんなに大きな木にはなりません。日本の自生種は「ヤマグワ」で、当時の「桑根白皮」も「ヤマグワ」の根だったのでしょうか。それとも、中国原産の「カラグワ」の根で、輸入品の高価なものだったのでしょうか。「クワ」はこの「ヤマグワ」と中国原産の「カラグワ」「ロソウ(魯桑)」の3種を原種として品種改良されたものだそうです。
 ちなみに桑の葉っぱと根の皮のティーは、高血圧の予防や咳止めとして、民間で用いられてきたもので、桑の実は黒紫に熟すと、甘酸っぱくて美味しいです。口の中が紫色に染まるので、内緒で食べることは出来ませんが。(笑)また、ホワイトリカーに漬けると「クワ酒」となって、滋養強壮に良いそうです。
                               (08.7.4.発行 Vol.25に掲載)



【6】

 前回は渡来系植物がいつ頃渡来したかというお話しでした。今回はどうやって渡来したかというお話をしてみようと思います。

 前回も書いたように「史前帰化植物」のグループは、稲作と共に渡来した、つまり種籾に混ざっていたり、持ち込む時に偶然付着していたり、というような経緯で渡来したと考えられています。
 その次の「古代帰化植物」といわれるグループは、主として食料や薬用植物、紙や布を作る原料のような農耕植物として渡来したものです。前号でもお話ししたように、この時代の渡来記録はあまり残っていません。

 「近世帰化植物」「現代帰化植物」になると、観賞用に持ち込まれたことが分かっているものが多くなります。ヒメジョオンは江戸時代に、ハルジオンの方は遅れて明治時代に観賞用として持ち込まれたものですが、後から持ち込まれたハルジオンの方が繁殖力が強く、厄介者扱いされているようです。前回挙げた「飛鳥で会える花たち」の中にあるもので、現在でも観賞用に栽培されている、ノゲイトウ、ムラサキカタバミ、マルバルコウソウは江戸時代に、ワスレナグサ、アジュガ、ヒメツルソバ、ヒメヒオウギズイセン、キワツユクサ、ハルシャギク、キバナコスモス、ホテイアオイ、ショカッサイ等は明治以降に観賞用として持ち込まれたものです。ニワゼキショウも東京小石川植物園で栽培されていたという記録があるので、観賞用と思われます。意外なところではセイタカアワダチソウももとは観賞用として入ってきたものなのです。イギリスに旅行に行った時、本場のイングリッシュガーデンの一角に、セイタカアワダチソウが植えられているのに、驚いたことがあります。

 一方、コメツブウマゴヤシは、同属のウマゴヤシが馬の飼料として使われていることから、飼料用に入ってきたものと思われます。明治時代に牧草として積極的に導入されたのがムラサキツメクサです。明治時代になると、江戸時代に詰め物として入ってきたシロツメクサも積極的に牧草として使われており、その頃新たに持ち込まれたものの方が多かったのでしょう。

 これ以外の前号で取り上げた植物については、入ってきた様子が良く分かっていないようです。おそらく、他の輸入品に混じって渡来したり、人の靴などに種がついてきたりという様なことではないかと思われます。植物検疫などというのも、厳しくなったのは最近のことですから。

 また、この他に最近では「緑化」という目的で導入される植物も目立っています。
 「アメリカンワイルドフラワー」というアメリカの綺麗な花の咲く野草の混合種を空き地に蒔くというのが一時流行ったようですが、これが脱走したものが路傍の植え込みなどによく見られるようになっています。生態系を壊すという意味では、あまり褒められることではないようですね。
                              (08.6.20.発行 Vol.24に掲載)



【5】

 飛鳥の野道・畦道は春の花が咲き終わり、初夏から夏の花へと移っていっています。今回は、趣向を変えて飛鳥の野道・畦道のインベーダー達...えっと、渡来系の植物をご紹介してみようと思います。

 渡来系(植物学的には「帰化植物」といいます)と一口に言っても、どこから渡来したか、どうやって渡来したかは実に様々で、渡来後の浸透の仕方も色々なのです。そして今、その渡来系の中には日本古来からの植物を席巻してしまっているものもあり、立派な環境問題でもあるのです。

 日本は島国です。日本固有種といわれる植物以外の植物の大半は海を渡って来たということになります。「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ...♪」という具合です。中には大陸と陸続きだった頃に広まったものもあるでしょうが。こういう植物は帰化植物とは呼ばれていません。

 では、帰化植物とはどのようなものをいうのでしょう?植物学では、人為的にもたらされて野生化したものを帰化植物といいます。人為的とは、農作物として栽培されるためにもたらされたものや観賞用に持ち込まれたものの他に、持ち込まれた栽培種に付いてきたものや、移動する人間・荷物に付着してきたものも含まれます。少し難しい話になりますが、まず帰化植物がいつ頃渡来したのか、ということからお話ししてみましょう。

 初めに「史前帰化植物(1943年、前川文夫氏提唱)」という呼ばれ方をしている稲作と共に渡来したような古い帰化植物があります。ネコの植物図鑑の「飛鳥で会える花たち」に収録した植物でこの「史前帰化植物」リストに載っているものを挙げてみますと、ツユクサ、キュウリグサ、キツネアザミ、シャガ、ツルボ、オオバコ、ヨモギ、イシミカワ、カナムグラ、イボクサ、イヌタデ、ホトケノザ、ヤハズソウ、ヒガンバナ、ハコベ、ミミナグサ、ナズナ、タネツケバナ、イヌホオズキ、ヤエムグラ、タカサブロウ、タビラコ、ジシバリ、アキノノゲシ、タウコギ、ミヤコグサ、カタバミ、ハハコグサ、ヤブカンゾウとかなりの野草が入ってしまいます。ネコの図鑑ではイネ科、カヤツリグサ科は収録していませんが、沢山見られるチガヤとかスズメノテッポウ、エノコログサ(ネコジャラシ)、カヤツリグサ等も、「史前帰化植物」に入ります。

 次に、室町時代以前までの帰化植物を「古代帰化植物」といい、渡来の記録が残っている植物を対象とします。遣唐使が薬用として持ち帰ったといわれているウメやチャは、今でも栽培されているものがほとんどですが、ナンバンカラムシというイラクサ科の植物は、アジア大陸が原産で繊維を取るために栽培されていたものが野生化して残っています。この時代の渡来の記録はあまり残っていないのではっきりとは分からないものが多いのです。ゲンゲは中国が原産で1709年の「大和草本」という本に、水田の緑肥、飼料、蜂蜜を採るためのものとして、古くから栽培されてきたという記録がありますが、万葉集の中にも詠まれている植物なので、渡来時期はかなり古いと思われます。

 戦国時代から江戸時代に掛けての帰化植物を「近世帰化植物」といい、鎖国時代を除いては物資の流通の盛んな時代でしたので、アサガオやオシロイバナなど観賞用に持ち込まれた植物で、今でも残っているものがかなりあります。また、シロツメクサは長崎に輸入されたガラス製品の詰め物として入っていた枯れ草の種から広まったものだそうで、「ツメクサ(詰草)」という名は、そこから来ているそうです。「飛鳥で会える花たち」に収録した植物では、ツメクサの他にヒメジョオン、ノゲイトウ、ムラサキカタバミ、コメツブウマゴヤシ、マルバルコウソウがあります。また、ホテイアオイやショカッサイも江戸時代に入ってきたものだという説があります。

 最後に、明治以降に知られるようになった「現代帰化植物」ですが、この中には実際の渡来時期と帰化がはっきりした時期がずれているものもあると思います。「飛鳥で会える花たち」の植物をご紹介しますと、ハルジオン、タンポポ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、フラサバソウ、オオカワジシャ、ワスレナグサ、マツバウンラン、アジュガ、コニシキソウ、ニワゼキショウ、アメリカフウロ、ヒメツルソバ、ヒメオドリコソウ、ムラサキツメクサ、ヒメヒオウギズイセン、オランダミミナグサ、トキワツユクサ、ハキダメギク、アメリカヤマゴボウ、ブタナ、ノボロギク、ベニバナボロギク、アレチノギク、コセンダングサ、アメリカセンダングサ、コメツブツメクサ、オニノゲシ、セイタカアワダチソウ、ハルシャギク、キバナコスモス、キショウブ、といったところで、ホテイアオイとショカッサイもこの時代という説もあり
 ます。また、最近ではタネツケバナに良く似たミチタネツケバナとか、ミヤコグサに良く似たセイヨウミヤコグサ、ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)と良く似たオオバヤハズエンドウというような帰化植物も増えているようです。

 長くなりましたので、これらの植物が何のために持ち込まれたのか、というお話は次回に。
                               (08.6.6.発行 Vol.23に掲載)


【4】

 春爛漫の畦道の花たちのお話の2回目です。前回はブルー系と白い花のお話だったのですが、覚えておいででしょうか?(^_^;)
 今回のお話は、紫から赤紫、ピンク系の花と、黄色の花のお話です。紫からピンク...赤は?と思われるかもしれませんが、この季節野道畦道に咲く「赤い花」というのは無いのです。赤い花が咲く野草というのが、そもそも少ないのですが。

 まず最初は紫の花の代表格「スミレ」から始めましょう。
 「スミレの花、咲く頃~♪」のスミレなんですが、これが非常に種類が多く区別が難しいのです。「スミレ」「ノジスミレ」「タチツボスミレ」などが飛鳥で見られる代表的なスミレです。スミレの名前の由来は、「すみいれ(墨入れ)」から来ていて、花の形が大工さんが使う墨壺に似ているからだそうですが、最近でも大工さんってこんなの使ってるんでしょうか?


スミレ

ノジスミレ

 「スミレ」と「ノジスミレ」は花の形も生育場所もほぼ同じですが、一番の違いは葉っぱの柄の部分です。花が沢山咲きそろってくると、「スミレ」の葉っぱは細長く、柄にはヒレのような部分が見られます。「ノジスミレ」の方は、やや幅広の葉っぱの付け根が柄にクルッと巻いたようになることが多く、ヒレは出来ません。


タチツボスミレ

 「タチツボスミレ」は「坪菫:坪(庭の古語です)に生えるスミレ」で株立ちになるもの、という意味ですが、むしろ山道の湿った木陰によく見られます。葉っぱは丸みのあるハート形で、花の色は薄紫に紫のスジが入っているのが普通ですが、変異が多く白に近いような色のものもあります。「スミレ」や「ノジスミレ」と違って、茎から葉や花柄が伸びるのが特徴で、この付け根の所にはヒゲのようにギザギザした托葉と呼ばれる葉があります。「ツボスミレ」と呼ばれるスミレもあるのですが、牧野博士は「ツボスミレ」は庭に生える菫の総称であり、混乱するので「ニョイスミレ(如意菫)」と名付けるとしておられます。こちらは白花で、「タチツボスミレ」との大きな違いは托葉がギザギザでないことです。

 さて、スミレの話が長くなってしまいましたが、この他にも沢山ありまして...。


ホトケノザ

ヒメオドリコソウ

 まず、春一番に咲く花たちに「ホトケノザ」と「ヒメオドリコソウ」があります。どちらもシソ科オドリコソウ属で近いお仲間ですが、「ホトケノザ」の方は在来種で「ヒメオドリコソウ」は帰化植物です。見分け方は、葉っぱの上に立ち上がるように花が咲くのが「ホトケノザ」で、茎の上部の赤紫がかった葉っぱの陰にうつむいて咲くのが「ヒメオドリコソウ」です。 「ホトケノザ」は、花の形が仏が座禅を組んでいるような形だから、「オドリコソウ」は花の形を踊り子に喩えたものだそうですが、この二つのネーミングは納得出来ます。


ムラサキケマン

ケマンソウ

 桜が咲く頃になると、「ムラサキケマン」や「レンゲソウ」が咲き出します。「ムラサキケマン」は紫色のケマンソウという意味ですが、ケマンソウはタイツリソウとも呼ばれる観賞用の植物で野草ではありません。同じケシ科ですが属が違うので、花もそんなに似ていないと思います。

 「レンゲソウ」は、今更説明の必要もないお馴染みの植物ですが、中国が原産で、根に根粒バクテリアが共生し空気中の窒素を取り込んで貯えるので、古くから肥料として田畑に植えられてきました。畦道などで見られるのはそれが野生化したものです。花が輪状につく様子を蓮の花に見立てて「蓮華草」で、「ゲンゲ」という呼び名は漢名を音読みしたそうです...難しい漢字で変換出来ませんが。(^_^;)


ハルジオン

ヒメジョオン

 もう一つお馴染みの花を忘れるところでした。「ハルジオン」です。淡いピンクの入った白い花を付けるキク科の植物で、これも原産地は北アメリカ東部の帰化植物です。よく似た花に「ヒメジョオン」というのがありますが、こちらはもう少し後で咲き始めます。「ハルジオン」は茎が中空になっているので、花の柄が下向きに垂れ下がりやすいという特徴があります。暑い日の日中には、「ヒメジョオン」も蕾が垂れ下がっていたりすることがありますので、どちらか分からなかったら茎を千切ってみてください。中に空洞の部分があったら「ハルジオン」です。


セイヨウタンポポ

カンサイタンポポ

 最後に黄色の花を付ける植物のお話をします。まずなんと言っても「タンポポ」ですね。ご存じかと思いますが、「セイヨウタンポポ」と「カンサイタンポポ」があります。緑色の総苞という萼のようなものが、花びら(実際は一つ一つが花ですが)に添っているのが「カンサイタンポポ」で、反り返っているのが「セイヨウタンポポ」です。どうやら飛鳥には「カンサイタンポポ」が多いように思います。


ウマノアシガタ
 次に目立つのが、「ウマノアシガタ」というキンポウゲ科の花です。つやのある5枚の花びらが春の日差しに輝いているところはとても綺麗ですね。「ウマノアシガタ」なんて無粋な名前は誰が付けたんでしょう?!

 根生葉という、地面に近いところから出てくる葉っぱの形からきた名前ということですが、あまり似ているとも思えません。

アカカタバミ
 「カタバミ」「アカカタバミ」は分類上は同じもので葉っぱが緑のものと赤みを帯びたもの、の違いだけです。冬の間から咲いていることもありますが、本番はゴールデンウィークの頃です。世界中に分布しているようで、茎が地上を這ってそこから根を出して増えますし、もちろん種も沢山出来ますから、可愛い花なのですが、生えて欲しくないところ、畑や庭の煉瓦タイルの隙間などでは厄介者です。

イヌガラシ
 さて、今回の締めは、お馴染みの「菜の花」です。「菜の花」と呼ばれているのは、主に「アブラナ」ですが、これはほとんどが畑で栽培されているものです。畑では、この時期「水菜」も「白菜」も「日野菜」も「蕪」もみんな似たような黄色の花を咲かせます。詳しくは笑いネコの部屋の「ネコの植物学講座」をご覧下さい。(^_^;)
 野生の「菜の花」の代表格は「イヌガラシ」ですが、花は「アブラナ」より少し遅れて咲きます。

  これから春真っ盛りになると、まだまだ花の種類は増えていきます。さあ、飛鳥の畦道を偶には「下を向いて」歩いてみませんか?  (08.4.18.発行 Vol.18に掲載)



【3】

 春爛漫の季節になりました。
 飛鳥の畦道も、色とりどりの花たちで華やかになってきています。そうは言っても、モクレン、シデコブシ、レンギョウ、そしてサクラ等々、木々を彩る花たちや、畑や田圃に植えられた菜の花、蓮華に比べたら、地味なものですが、よく見ると種類も多く結構可愛いのです。
 今回と次回の2回連載で、その地味な花たちにスポットを当てて、皆さんの注目を引こうと...無理かなぁ?(^_^;)

 まず今回は、ブルー系の花と白い花のお話しから始めてみましょう。

オオイヌフグリ

タチイヌフグリ

 畦道の花たちで一番目を引くのは、鮮やかなブルーの「オオイヌノフグリ」でしょうね。ヨーロッパ原産で明治時代に帰化したのち、全国津々浦々に広がって春を彩る代表的な植物になっていますが、在来種の「イヌノフグリ」の方は、衰退の一途を辿っているようです。「イヌノフグリ」の花は、小さくて色も淡く目立たないので、お目に留まることも少ないかと思います。この仲間には「タチイヌノフグリ」という茎が横に広がらずに立ち上がるタイプのものがあります。第七回両槻会例会の散策の時に山田寺跡で見かけましたが、花はごく小さいものの「オオイヌノフグリ」同様の鮮やかなブルーですから、こちらの方が見つけやすいでしょう。


キュウリグサ

ハナイバナ

 この季節に見られるブルーの花には、「キュウリグサ」「ハナイバナ」という、これもマクロ写真でないとよく分からないような花があります。どちらも、「ワスレナグサ」の小さいのと思っていただけば間違いありません 「キュウリグサ」の方は、青い小花が列んだ先っぽがクルッと巻いているのが特徴です。「ハナイバナ」はよく似ていますが、花穂の先は巻いていません。


キランソウ

 もう少し紫がかった青い花には、「キランソウ」というのがあります。シソ科独特の形と濃い青紫の花、そして厚手の表面に毛の生えた葉っぱが特徴の花で、地面に張り付いたように育ちます。「ジゴクノカマノフタ」という、恐ろしげな別名を持っていますが、由来は不明だそうです。

 次に、沢山見られる白い花があります。ごく小さい花なので、全部同じだろう...なんて言わないでくださいね。(^_^;)

 「タネツケバナ」「ナズナ(ペンペングサ)」「ハコベ」「オランダミミナグサ」「ノミノフスマ」「ヤエムグラ」「ツメクサ」ざっと挙げただけで7種類です。

 「タネツケバナ」は稲の籾を水に漬けて、苗代の準備をする頃に咲くので 「種漬花」です。「タガラシ」という別名もあり、キンポウゲ科の黄色い花で、同じ「タガラシ」という名を持ったものがあるので紛らわしいのですが、どちらも「田圃の芥子」ということからきた名前です。本来の「芥子」つまり「カラシナ」は「タネツケバナ」と同じアブラナ科ですから、「タガラシ」と呼ぶには「タネツケバナ」の方が相応しいと思うのですが...。


タネツケバナ
 
ナズナ

「ナズナ」は「タネツケバナ」と同じアブラナ科で、花は少し小振りです。一番の違いは種の形。花が咲いている間にどんどん種が出来る植物なので、これで区別が付きます。「ナズナ」の種は「ペンペングサ」の別名の由来になった「三味線のバチの形」で「タネツケバナ」の方は細長い形です。


ハコベ
 
オランダミミナグサ

 「ハコベ」は春の七草でもお馴染みの植物で、一寸見ると花びらが10枚あるように見えますが、これは5枚の花びらに深く切れ目が入ったものなのです。
 「オランダミミナグサ」はヨーロッパ原産の帰化植物で「ハコベ」と同じナデシコ科、これも花びらが5枚ですが、こちらは先端が浅くくぼんでいるだけです。「ミミナグサ」という在来種があるのですが、これも減少していてほとんど見られません。


ノミノフスマ
 
ヤエムグラ

 「ノミノフスマ」もナデシコ科で、こちらは「ハコベ」同様花びらは10枚に見えるように切れ目が入っています。茎の片側に1列に柔らかい毛が生えている「ハコベ」と違って、「ノミノフスマ」の茎には毛が生えていません。と言っても、ルーペでも使わないと確認するのは難しいのですが。

 「ヤエムグラ」もルーペがないと見えないような花です。茎に逆さ向きの棘があるので、草取りをしている時など、軍手にくっついて取れなくなったりする厄介者です。ちなみに、万葉集に出てくる「ヤエムグラ」はこれではなく、「カナムグラ」のことだとされています。


ツメクサ
 「ツメクサ」は、葉っぱの形が鳥の爪に似ているから付いた名だそうですが、葉も茎も柔らかく、抜こうとすると切れてしまうので、小さい草ですが煉瓦敷きの間などに生えたものを除去しようとすると、かなり困難です。

 ということで、紫、赤紫やピンク、黄色の花のお話しは、次回に続く...(^_^;)
                               (08.4.4.発行 Vol.16に掲載)



【2】

 2回目の飛鳥の畦道は、冬に咲く花をご紹介しましょう。
 冬の飛鳥に咲く花...皆さんは、どんな花を思いつかれるでしょう? 畦道に咲く野草の花は、暖冬で狂い咲きすることはありますが、冬咲きの花ではありません。

甘樫丘のヒマラヤサクラ

 木に咲く花、山田道の「サザンカ」八釣の「ロウバイ」そして甘樫丘の「ヒマラヤサクラ」というあたりが、飛鳥で見られる代表的なものでしょう。
 そうそう、地味な花ですが「ビワ」も稲渕などでよく見られますね。


ロウバイ

ビワ

 では、木や草は何故花を付けるのか?もちろん、種を作って子孫を増やすためです。冬の寒さの中で、そのような作業をするのは、本当はとても大変です。例えば、花粉を運ぶ虫たちの活動も活発ではありませんし、霜や雪の被害を受けることもあるのですから。
 草花はほとんどが虫媒花といって、虫が花粉を運ぶタイプですから、冬にはあまり咲きません。
 では、何故木には冬に花が咲くのか?それは、鳥媒花という、鳥に花粉を運んでもらう花だからです。鳥なら、冬も活動していますね。「サザンカ」や「ツバキ」にヒヨドリが群がっているのを、ご覧になったこともあるかもしれません。「ウメ」にメジロが来ているのも。ヒヨドリやメジロは蜜が大好きなのです。

メジロ(木はヤマボウシ)

 余談ですが、「梅に鶯」というのは、「梅にメジロ」を見間違えたのだという話もあります。ネコはメジロが梅に来ているのは見たことがありますが、ウグイスが梅に留まっているのは、一度も見たことがありません。ご覧になった方は、是非とも写真付きで投稿して下さい。(o^^o)                        (08.2.1.発行 Vol.8に掲載)



【1】 

 メルマガ発行が初冬になってしまったため、第1回目の飛鳥の畦道ご案内では、派手な花のお話はできません。でも、残暑が長引いたせいで、今年の畦道には「ハキダメギク」やセンダングサの仲間のような晩秋の花が少し残っているようです。


ハキダメギク

ハコベ

 そして、温暖化の影響でしょうか?「ホトケノザ」「カキドオシ」のような春の花が咲き始めていたりします。


ホトケノザ

カキドオシ

 少し前になりますが、11月10日の第5回両槻会例会の時には、石神遺跡の畦道で「サクラタデ」が咲いていました。同じタデ科の花では、「イシミカワ」が剣池の周辺道路脇で見られました。同じタデ科でも、「サクラタデ」の方はちょっと薄紅を差したような可愛い花ですが、「イシミカワ」の花は、葉っぱと同じ色で目立ちません。その代わり、鮮やかな青い実を付けます。


サクラタデ

イシミカワ

 これからの季節、畦道を歩いて見られる植物には、「二年草」とか「越年草」という呼び方をされるものがいくつかあります。例えば、「タンポポ」「ナズナ」「ハハコグサ」「ヒメジョオン」「オニタビラコ」などは秋に芽を出して、「ロゼット」という地面にピタッと張り付いたような葉っぱの状態で冬越しをするのです。「これは何のロゼットだろう?」そう思いながら眺めるのも楽しいかもしれません。予想して、春になったら当たりか外れか確かめに行く...なんて、いかがでしょう?         (07.12.7.発行 Vol.1に掲載)





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