両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪



第46回定例会レポート


古墳出現前後の謎の土製品

ーいわゆる山陰型(さんいんがた)甑形(こしきがた)土器(どき)についてー




光の回廊 飛鳥資料館会場点灯ボランティア

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第46回定例会 講演会資料
2014年9月13日・14日

 今回の定例会は講演会と点灯ボランティア第1日目・第2日目の3部構成での募集となりました。講演会の講師は、帝塚山大学の博士課程に籍を置く若い研究者で、両槻会ではお馴染みの西垣遼先生です。


第40回定例会にて解説中の西垣先生

 ウォーキングの際には解説を担当していただいた事もあり、常連さんの中には熱列なファンもいらっしゃいます。恒例になっている光の回廊の点灯ボランティアは飛鳥資料館の庭に3000個のカップろうそくを並べます。

 今回の講演会は夏場であるというのもあり恒例の事前散策はなかったので、講演会場である飛鳥資料館講堂での受付となりました。いつもなら案内班と先行班と手分けしたり、予定時間までに到着できるように時間配分など考えたりでスタッフは忙しいのですが、今回は余裕を持って受付する事が出来ました。毎回参加して下さる方、久しぶりの方、お初の方もおられましたが、和やかな雰囲気の中、予定時間より早めに定例会を開始する事が出来ました。


 飛鳥資料館の西田先生も顔を出して下さり、両槻会事務局長から挨拶と講師先生の紹介がありました。


 西垣先生の講演のテーマは「山陰型甑形土器」と呼ばれる謎の土製品についてです。「さんいんがた?こしきがた?」と、素人の私にとっては耳慣れない名前でしたが、先生の丁寧なお話を聞いているうちに、「山陰型甑形土器」の不思議な魅力に気づかされました。


山陰型甑形土器 模式図

 この土製品の特徴は、口が狭いほうと広いほうがあるロート状をした筒型で、上下に取っ手がついています。山陰地方で多く出土することから「山陰型」、米などを蒸す甑と形が似ているとことから「甑形土器」と呼ばれているそうです。主に竪穴式住居の中で見つかっていて、甕などといっしょに出土していることから、甑のように重ねて使われていたのではと考えられていたのだそうです。


参考画像:ミニチュア炊飯具
(スズミ一号墳出土)

 西垣先生は、この土製品が使用されていた弥生時代後期から古墳時代前期の時代背景や、土製品の使用方法についてこれまでどのように研究され報告されてきたか各研究者の説について説明されました。甑説、煙突説、酒造器説などあり、上下に付けられた取っ手の使用方法も各者各様で、上下をまったく逆にする考え方もあったり、この謎の土製品の謎たる由縁をお話されました。参加者の皆さんは私同様に、どんどんこの土製品に興味をひかれていったのではないでしょうか。

 先生はこれまでに出土した「山陰型甑形土器」の178遺跡475点に及ぶ膨大なデータを、形や時期・地域などを数値化して分類、類型化されたそうです。そんな研究から導きだしたご自身の見解をお話されました。研究者という人達はこんな風に地道な努力をされているのだと感心したり、また、土器のかけらに残る砂粒の向きや流れで、作った人の手の動きや作成方法が分かるのだという、土器を見るときの楽しみ方も教えて頂きました。


 お話は酒造の歴史から、民俗学的なものにまで膨らみ、近畿地方を中心とした古墳との関わりという今後の研究テーマのさわりも披露されました。
 講演が終わる頃には「山陰型甑形土器」についてちょっと詳しくなったような…「知らないことを知る」ってこんなに面白くて楽しい!という経験ができました。大家と呼ばれるような高名な先生のお話もいいですが、新しいテーマに取り組む若い研究者のお話を聞けるのも両槻会ならでは、ではないでしょうか!



作業開始!

 さて、講演会終了後は休憩を挟んで、第2部の手順について説明があり、庭に出ていよいよカップろうそくを並べる準備です。さきほどのスーツ姿からラフな服装に着替えられた西垣先生は、さっきまでは先生と呼んでいたはずの事務局長に、手のひらを返したようにいつものHNで呼び捨てされるという、愉快な場面もありました。


須弥山石の石敷きに苦戦中

 カップろうそく並べも常連さん達は慣れたもの。どんどん並べているうちに、なんと予備に置いてあった分まで並べてしまったみたいで、総数4000個のカップろうそくが点灯されました。(ホントは3000個でよかったのに…)


 須弥山石を中心に円を重ねたもの、出水の酒船石を利用した水の流れをデザインしたもの、傾斜を利用して並べたのは事務局長渾身の奥山廃寺式の瓦当文様をデザインしたもの。


 川を挟んだ南庭では亀石や猿石を囲むようにカップが並べられました。


 玄関からのながめは、ゆらゆらとゆれる光のアプローチが伸びた先に、花が開いたようにカップろうそくの地上絵が広がっていました。


 薄闇が広がる頃に徐々に増えてきた見学者の方からは感嘆のため声が聞こえ、喜んでもらえてると実感出来ました。

 2日目の第3部は、前日並べたカップからろうそくの殻を取り出し、新しいろうそくを入れて、みんなで手分けして点火しました。


 昨年は台風の直撃で2日目が中止になり残念でしたが、今年は両日とも秋晴れのさわやかな天候に恵まれました。

 最初、参加申込が少なくて開催出来るのか心配されましたが、27名の方が参加してくださり、無事に終わることが出来ました。第1部から3部まで通して参加して下さった方もおられます。それぞれにお忙しい中、しかも貴重な3連休であるにもかかわらず、やりくりして両槻会に協力してくださった皆様、本当にありがとうございました。


 



レポート担当:らいちさん  

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