両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪



第48回定例会


運ばれた塩

― 飛鳥地域の製塩土器から探る ―



事務局作成資料

作製:両槻会事務局
2015年1月17日
  項目                  (文字は各項目にリンクしています。)
奈良県の塩に関連する地名 塩の付く地名に関して 塩の付く地名マップ
塩が詠み込まれた万葉歌 塩の詠み込まれた万葉歌に登場する地名 飛鳥・藤原地域出土木簡に見る「塩」
塩に関連することわざ・慣用句 料理に関する用語 奈良に関連の深い塩に関する言葉
当日レポート 飛鳥咲読 両槻会


この色の文字はリンクしています。

奈良県の塩に関連する地名

大塩  山辺郡山添村大塩
二つの伝承
  • むかし弘法大師が神野山 へのぼられるとき、とある村に通りかかりました。その村は、山奥のため塩がなく、また手に入りにくいため、村人たちはいつも困っていました。
    村人たちのうったえを聞いた弘法大師は、はたとひざをうちました。
    「それならば、この土地から山塩がでるようにしてあげよう。」
    おもむろに念仏をとなえると、杖で大きな岩をたたきました。するとどうでしょう。
    岩の穴の中から塩水がわいてきたではありませんか。村人たちは、弘法大師に感謝しました。それからというものの、この村の名を大塩とあらためたのでした。
  • 大塩から神野山へ登る途中、硯石《すずりいし》のところよりすこし東へ行ったところに、塩瀬大明神があります。大明神といっても形のよい大石が一つ立っていて、あたり一帯は草が深く茂り、千年も経っている老杉があるばかりでした。
    昔、ここから塩がでたとか、大塩の名はこれから始まったとかいって、土地の人は「塩瀬さん、塩瀬さん」と尊敬しています。また、眼病の神様といわれ、かたわらに湧き出る清水で目を洗えば、どんな眼病もなおるといわれます。
片塩  大和高田市片塩町 
第3代安寧天皇の宮殿伝承地
『日本書紀』では片塩浮孔宮(かたしおのうきあなのみや)、『古事記』では片塩浮穴宮と表記される。
片塩 = 固塩= 堅塩 (製塩土器を使って焼き固められた固形の塩)
北片塩  大和高田市北片塩町
 横大路に面し、片塩町の北側の地域
北塩谷  吉野郡川上村北塩谷

塩井  宇陀郡曽爾村塩井

塩谷  吉野郡天川村塩谷

入之波 ( しおのは )  吉野郡川上村入之波
入之波温泉は、白鳳時代に開かれたとの伝承のある温泉。江戸時代には湯治場として開かれていた。炭酸水素塩・塩化物泉。塩分を多く含み、舐めると塩っぽいので命名されたとする話が伝わっています。
入野 ( しおの )  吉野町入野

塩野  吉野郡天川村塩野

塩町   大和郡山市 
郡山城下町の一角を占め、塩を扱う商人の町だったと思われます。
湯塩  五條市西吉野町湯塩

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汐浪井   奈良市勝南院町
住吉神社の前に井戸があり、3月3日の日に汐浪が湧き出たので、この井戸を「汐浪井」と呼んだ
塩塚古墳   奈良県奈良市歌姫町・佐紀町
佐紀古墳群の1基で、全長約105mの前方後円墳。
後円部径約65m、高さ約9m、前方部幅約55m、高さ現状約2m。
後円部の墳頂中央付近から粘土槨が見つかり、盗掘に遭っていたが鉄剣や鉄斧、鎌などが出土している。5世紀前半の築造と考えられるようです。
潮生淵 吉野郡吉野町川原屋 
大名持神社は吉野川河岸の妹山の南山麓に鎮座し、本来神殿はなく、神体山を祀っていたようです。
祭神は、大名持御魂神、須勢理比女命、少彦名命。

『大和志』には、社前の吉野川潮生淵には毎年6月30日、潮水が湧くと書かれています。近年まで磯城・桜井・香久山など国中地域から大汝詣と称して、この神域で水浴をし、清水を汲み細長い石を拾い帰って宮座祭を行う信仰行事を行ってきました。




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塩の付く地名に関して

²
  • 塩に直接かかわるもの
    • 生産地
    • 交易地
    • 集積地
    • 輸送の中継地点
      など
  • 太古の海水に由来するもの
    (地下に閉じ込められた海水による塩分の濃い地層を通って、地上に湧出した温泉や湧水。)
    • 山塩   (福島県・長野県などにて、現在も生産されている。)
    • 塩化物泉  (温泉の四分の一以上、全国に分布。 入之波温泉など)
    • 塩井(井戸)   (塩分を含む水が湧く。塩井・汐浪井など)
      など
      註 : 日本に岩塩(岩塩層)は無いと考えられている。
  • 地形にかかわるもの
    • 「丘陵・台地などに谷津が入り込んだ場所」を「しお」と呼びます。
      地名辞典などには、「しお」は皺(しわ)と同じ意味を持ち、谷津の入り組む地形を呼ぶと説明しています。谷津とは、辞書によれば「丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形である。また、そのような地形を利用した農業とそれに付随する生態系を指すこともある。谷戸(や、やと)、谷地(やち)、谷那(やな)などとも呼ばれ、主に関東地方および東北地方の丘陵地で多く見られる。」としています。
      群馬・山梨・埼玉・千葉の多くの「塩の付く地名」は直接に塩(ソルト)とは関係がなく、地形に関わる名前だとされるようです。





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塩の付く地名マップ(Googleマップ)





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塩が詠み込まれた万葉歌

  • 01-0005 霞立つ 長き春日の 暮れにける わづきも知らず むらきもの 心を痛み ぬえこ鳥 うら泣け居れば 玉たすき 懸けのよろしく 遠つ神 我が大君の 行幸の 山越す風の ひとり居る 我が衣手に 朝夕に 返らひぬれば 大夫と 思へる我れも 草枕 旅にしあれば 思ひ遣る たづきを知らに 網の浦の 海人娘子らが 焼く塩の 思ひぞ焼くる 我が下心
  • 03-0278 志賀の海女は藻刈り塩焼き暇なみ櫛笥の小櫛取りも見なくに
  • 03-0354 縄の浦に塩焼く煙夕されば行き過ぎかねて山にたなびく
  • 03-0365 塩津山打ち越え行けば我が乗れる馬ぞつまづく家恋ふらしも
  • 03-0366 越の海の 角鹿の浜ゆ 大船に 真楫貫き下ろし 鯨魚取り 海道に出でて 喘きつつ 我が漕ぎ行けば ますらをの 手結が浦に 海女娘子 塩焼く煙 草枕 旅にしあれば ひとりして 見る験なみ 海神の 手に巻かしたる 玉たすき 懸けて偲ひつ 大和島根を
  • 03-0413 須磨の海女の塩焼き衣の藤衣間遠にしあればいまだ着なれず
  • 05-0892 風交り 雨降る夜の 雨交り 雪降る夜は すべもなく 寒くしあれば 堅塩を とりつづしろひ 糟湯酒 うちすすろひて しはぶかひ 咾靴咾靴 しかとあらぬ ひげ掻き撫でて 我れをおきて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば 麻衾 引き被り 布肩衣 ありのことごと 着襲へども 寒き夜すらを 我れよりも 貧しき人の 父母は 飢ゑ凍ゆらむ 妻子どもは 乞ふ乞ふ泣くらむ この時は いかにしつつか 汝が世は渡る 天地は 広しといへど 我がためは 狭くやなりぬる 日月は 明しといへど 我がためは照りやたまはぬ 人皆か 我のみやしかる わくらばに 人とはあるを 人並に 我れも作るを 綿もなき 布肩衣の 海松のごと わわけさがれる かかふのみ 肩にうち掛け 伏廬の 曲廬の内に 直土に 藁解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子どもは 足の方に 囲み居て 憂へさまよひ かまどには 火気吹き立てず 甑には 蜘蛛の巣かきて 飯炊く ことも忘れて ぬえ鳥の のどよひ居るに いとのきて 短き物を 端切ると いへるがごとく しもと取る 里長が声は 寝屋処まで 来立ち呼ばひぬ かくばかり すべなきものか 世間の道
  • 05-0897 たまきはる うちの限りは 平らけく 安くもあらむを 事もなく 喪なくもあらむを 世間の 憂けく辛けく いとのきて 痛き瘡には 辛塩を 注くちふがごとく ますますも 重き馬荷に 表荷打つと いふことのごと 老いにてある 我が身の上に 病をと 加へてあれば 昼はも 嘆かひ暮らし 夜はも 息づき明かし 年長く 病みしわたれば 月重ね 憂へさまよひ ことことは 死ななと思へど 五月蝿なす 騒く子どもを 打棄てては 死には知らず 見つつあれば 心は燃えぬ かにかくに 思ひ煩ひ 音のみし泣かゆ
  • 06-0935 名寸隅の 舟瀬ゆ見ゆる 淡路島 松帆の浦に 朝なぎに 玉藻刈りつつ 夕なぎに 藻塩焼きつつ 海人娘女 ありとは聞けど 見に行かむ よしのなければ ますらをの 心はなしに 手弱女の 思ひたわみて たもとほり 我れはぞ恋ふる 舟楫をなみ
  • 06-0938 やすみしし 我が大君の 神ながら 高知らせる 印南野の 大海の原の 荒栲の 藤井の浦に 鮪釣ると 海人舟騒き 塩焼くと 人ぞさはにある 浦をよみ うべも釣りはす 浜をよみ うべも塩焼く あり通ひ 見さくもしるし 清き白浜
  • 06-0947 須磨の海女の塩焼き衣の慣れなばか一日も君を忘れて思はむ
  • 07-1246 志賀の海人の塩焼く煙風をいたみ立ちは上らず山にたなびく
  • 09-1734 高島の安曇の港を漕ぎ過ぎて塩津菅浦今か漕ぐらむ
  • 11-2622 志賀の海人の塩焼き衣なれぬれど恋といふものは忘れかねつも
  • 11-2742 志賀の海人の煙焼き立て焼く塩の辛き恋をも我れはするかも
  • 11-2747 あぢかまの塩津をさして漕ぐ船の名は告りてしを逢はざらめやも
  • 12-2971 大君の塩焼く海人の藤衣なれはすれどもいやめづらしも
  • 15-3652 志賀の海人の一日もおちず焼く塩のからき恋をも我れはするかも
  • 16-3880 鹿島嶺の 机の島の しただみを い拾ひ持ち来て 石もち つつき破り 早川に 洗ひ濯ぎ 辛塩に こごと揉み 高坏に盛り 机に立てて 母にあへつや 目豆児の刀自 父にあへつや 身女児の刀自
  • 16-3885 いとこ 汝背の君 居り居りて 物にい行くとは 韓国の 虎といふ神を 生け捕りに 八つ捕り持ち来 その皮を 畳に刺し 八重畳 平群の山に 四月と 五月との間に 薬猟 仕ふる時に あしひきの この片山に 二つ立つ 櫟が本に 梓弓 八つ手挟み ひめ鏑 八つ手挟み 獣待つと 我が居る時に さを鹿の 来立ち嘆かく たちまちに 我れは死ぬべし 大君に 我れは仕へむ 我が角は み笠のはやし 我が耳は み墨の坩 我が目らは ますみの鏡 我が爪は み弓の弓弭 我が毛らは み筆はやし 我が皮は み箱の皮に 我が肉は み膾はやし 我が肝も み膾はやし 我がみげは み塩のはやし 老いたる奴 我が身一つに 七重花咲く 八重花咲くと 申しはやさね 申しはやさね
  • 16-3886  おしてるや 難波の小江に 廬作り 隠りて居る 葦蟹を 大君召すと 何せむに 我を召すらめや 明けく 我が知ることを 歌人と 我を召すらめや 笛吹きと 我を召すらめや 琴弾きと 我を召すらめや かもかくも 命受けむと 今日今日と 飛鳥に至り 置くとも 置勿に至り つかねども 都久野に至り 東の 中の御門ゆ 参入り来て 命受くれば 馬にこそ ふもだしかくもの 牛にこそ 鼻縄はくれ あしひきの この片山の もむ楡を 五百枝剥き垂り 天照るや 日の異に干し さひづるや 韓臼に搗き 庭に立つ 手臼に搗き おしてるや 難波の小江の 初垂りを からく垂り来て 陶人の 作れる瓶を 今日行きて 明日取り持ち来 我が目らに 塩塗りたまひ きたひはやすも きたひはやすも
  • 17-3932 須磨人の海辺常去らず焼く塩の辛き恋をも我れはするかも
製塩に関わる(?)歌か
  • 6-936 玉藻刈る 海人娘子ども 見に行かむ 船梶もがも 波高くとも
  • 12-3177 志賀の海人の 磯に刈り干す 名告藻の 名は告りてしを 何か逢ひかたき 





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塩の詠み込まれた万葉歌に登場する地名





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飛鳥・藤原地域出土木簡に見る「塩」

三方評竹田部里人粟田戸世万呂    二斗 藤原宮跡北面中門地区
丁酉年若侠国小丹生評岡田里三家人三成御調  二斗 同上
   一斗 同上
熊野評大贄       塗近代百廿隻 同上
←三升   一升 藤原宮北辺地区
←麻呂   三斗 藤原宮跡東面大垣
安芸国安芸郡里倉椅部名代調       三斗 藤原宮跡東面北門
内膳司解供御御料         三斗 同上
周防国郡麻呂調  同上
米一升安曇内万呂腊       五升給 藤原宮跡東面大垣地区
己亥年若侠国小丹→御調    二→ 同上
己亥年玉杵里人若倭部身    二斗 同上
戊戌年若侠国小丹生評岡方里人秦人船調   二斗 同上
三方評竹田部里人和尓部大伴       二斗‖ 同上
野里中臣部人      二斗 同上
稲三束  飛鳥池遺跡北地区
多可五十戸        一古 同上
馬代稲八束        廿籠 同上
衣縫王給           〈〉 藤原京左京七条一坊西南坪
{請池守米          }{干進猪} 同上
 〈〉里人大伴部乙万呂       二斗 同上
同上
{        } 同上
    四 同上
{縫殿     } 同上
{        } 同上
   ‖ 藤原宮朝堂院回廊東南隅
   ‖ 同上
   屋郡 同上
郡       田里小長谷 同上
得       里額〈〉 同上
同上
   夕 飛鳥池遺跡北地区
二束長四寸加田〈〉      二〈〉 同上
   籠二 同上
   五 同上
二田造  藤原京右京七条一坊西北坪
山田評之太々里邑内      入 藤原宮北辺地区
田田      二斗 石神遺跡
藤原京左京七条一坊西南坪
   三 藤原宮跡東面大垣地区
注)奈良文化財研究所「木簡ひろば」を参考にしています。           
橿原考古学研究所など、他の研究機関の調査による木簡も存在します。


平城宮出土木簡
 三方郡弥美郷中村里<別君大人三斗>


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塩に関連することわざ・慣用句

青菜に塩 青菜は葉や茎に水分を含んでいるときは元気だが、塩を振りかけると水分がなくなってしおれることから、人が打ちひしがれて、うなだれている状態をいう。
朝茶の塩 朝茶を飲む際に塩少々を摘むことから、ごくわずかな物のことをいう。
味は塩にあり 料理の味付けは塩加減次第である。
小豆の塩の辛きと女の気の強きは術無し 小豆の塩のききすぎたのと、女の気が強すぎるのはどうしようもない。
(牡丹餅の塩の過ぎたのと女の口の過ぎたのとは取り返しがつかぬ。)
甘口さ塩 考え方の甘い人間には、刺激を与えた方が良い。
痛い上に塩を塗る 傷口に塩を塗るとしみて痛みがひどくなることから。悪いことが起こって悩んでいるのに、さらに悪いことが起こることの例え。
傷口に塩、切り目の塩など。
井戸水が湧き出ぬ時は中で火を焚くか米・塩・酒を入れると良い -
浮世の塩 世間は甘くないことの例え。
閻魔が塩を嘗めたよう 苦虫をかみつぶしたような難しい顔を例えていう。
尾張大根塩でもつ 尾張大根は水気が多く、保存には多量の塩が要る。
可愛子には旅をさせ、ならず者には塩踏ませ 可愛いわが子は冷たい他人の間で修業をさせるのがよく、ならず者は辛い思いをさせて懲らしめるのがよい。
河童に塩を誂える 淡水の川水の中に住んでいる河童に塩を注文するというわけで、見当違いのことをするたとえ。
「獺(かわうそ)」に塩を誂えるなど。
業が伸びりゃ塩が甘うなる 腹が立つようなことが有ってもその場で怒ったりせず、ゆったりした気持ちでいれば、辛い塩が甘くなるように怒りも和らぐ。
塩が浸む 世間の苦労が身にしみる。世渡りの苦労を経験する。
塩が水になれば雨、乾けば晴れ 天候を予測する俗説。
塩で洗えばどんな汚い物でも清くなる 塩を清めに用いる俗説。
塩にする 魚や野菜を塩漬けにすること。
塩にて淵を埋む如し 無謀にも塩で深い水たまりを埋めようとすることから、全く不可能なこと、また、してもしがいのないことのことのたとえ。また、次から次へと消えてしまって、溜まることがない様をいう。
塩量っても手嘗めよ 人の仕事の手助けをするにしても、いくらかの報酬をとってせよ。
塩売っても手を嘗めろ 塩売りが手についた塩を無駄にするのを惜しんで嘗めることから、商人が商い物を少しも無駄にしまいとすること、あるいはつまらないことにまで気を使ってけちけちすることのたとえ。
塩やかねややんまかえせ 子供がトンボを捕るときに言った言葉。
塩を井戸へ入れると失明する 井戸に異物を入れてはいけないという戒めの言葉。
塩を粗末にすると目が潰れる 塩は大事なものであるという戒めの言葉。
塩をつまんで火に入れる さらに激しく燃え上がることから、一段と激しくすることの例え。
塩をつまんで水に入れる 少しも効果のないことの例え。
鼠が塩を引く ネズミが塩を引いて行くのは少量ずつだが、度重なっていつの間にか多量になるところから、小事が積もり積もって大事になることのたとえ。また、少しずつ減っていったあげくに、すっかりなくなってしまうことの例え。
塩を踏む 世間に出て辛い目にあう。
塩も味噌もたくさんな人 塩や味噌はなくてはならない大切なものであるところから、確実な人を表す言葉。
塩を持たぬ家は金持ちになれぬ -
塩を夜買うな -
痺れが切れた時は臍の上に塩を三回乗せると良い -
西瓜に塩をつけて食べると疲労しない -
葬式から戻ったら体に塩を振りかけて清めてから家に入る -
手前味噌で塩が辛い 自分がつくった味噌だと塩辛くても本人だけはおいしいと思っているということから、自慢ばかりするので聞き苦しいことのたとえ。自分の作った味噌なら、たとえ塩辛くてもおいしいと感じることから、自分のやったことなら、何でも良いと思うこと。自分の都合のいいように解釈すること。「我田引水」と同じ意味。
蛞蝓に塩 ナメクジに塩を掛けると縮むように、苦手なものの前で萎縮し精彩をなくすことを言う。
ほっちゃけなしは塩嘗める あわて者は砂糖と間違えて塩を嘗める。あわて者を窘める言葉。(青森県)
味噌塩の世話 台所や日常生活の細々とした世話のこと。
味噌に入れた塩はよそへ行かぬ 他人のために尽くしたことは、一時は無駄のように見えても、結局自分のためになるという例え。
味噌にも塩にも使われる なんにでも使われる。
めんぼのできたときは臍へ塩を込めれば落ちる 四日市市周辺の俗習。
餅搗きのとき蒸籠の縁に塩を置くとよく上がる -
夜尿垂れたら夜具背負わして塩買にやれ 大和高田市周辺の俗習。
敵に塩を送る 敵対する相手が困っている時に助けの手を差し伸べることのたとえ。戦国時代、武田信玄は、塩を輸送している道を閉ざされ、塩の欠乏に苦しんでいた。上杉謙信は、敵の信玄を攻める最大のチャンスにあえて戦をせず、逆に塩を送って助けたという。
塩嘗めてこい 苦労して一人前になってこいということ。
あけずの塩買い 使いに出てなかなか帰ってこないこと。
一番うまくて、まずいもの 徳川家康はある日、側に仕える阿茶の局に、「この世で一番うまいものは何か?」と尋ねると、局は、「それは塩です。山海の珍味も塩の味付け次第。また、一番まずいものも塩です。どんなにうまいものでも塩味が過ぎると食べられなくなります。」と答えた。塩はさじ加減ひとつで、他のものの味を引き出す。指導者もまた、家臣の心を巧みにとらえ能力を引き出すことが肝心。家康は、局の言葉に深く感銘し、以後教訓としたという。
うまいまずいは塩かげん 調味料もいろいろあるが、微妙な違いで塩ほどに味を左右させる調味料は他にない。「包丁10年、塩味10年。」と言われるように、塩の味つけをマスターするには、よほど熟練を要する。
味のきめては塩かげんであるという意味。
閻魔が塩辛を嘗めたよう 苦虫を噛み潰したような難しい顔をたとえていう。
「閻魔が抹香を嘗めたよう」とも言う。
河童に塩頼む 淡水にすむ河童に海水から取れる塩を頼むことから、当てにならないことをい言う。
しおらしい 控え目で、慎み深く、可愛らしいこと。
封建時代、塩が手に入りにくかった百姓の女たちはたびたび、出陣する武士が持つ塩包みに目をつけて言い寄った。しかし彼女たちの態度はいかにも恥ずかしそうで、塩欲しさの素人の言い寄りとすぐに見破ることができた。
「しおらしい」とは、"この塩が欲しいんだなと察しがついていた"が転じた言葉。
地の塩 塩が食物の腐るのを防ぐことから、少数派であっても批判的精神を持って生きる人をたとえていう。
手塩に掛ける 自ら世話をして慈しみ育てるのこと。自分の手で塩をふり時間をかけて漬け込む漬物や、掌いっぱいに塩をつけて握りしめるおむすびのように、昔から手に塩をつけて丹念にものを作る行為には、愛情が込められているということ。
米塩の資 米と塩は、生きていくうえで、食生活に於いて不可欠であることから、生計を立てるための費用、生活費のことをいう。
塩は食肴の将、酒は百薬の長 前漢書の『食貨志』にある言葉。塩は、他の物の味を引き出し、うま味を増すこの世で最高の食べ物。酒は、適度に飲めばどんな薬よりも効き目がある一番の薬、という意味。
塩梅 ほどあい。かげん。
宋の時代の成書に「塩多ければ鹹(かん:塩辛い)、梅多ければ酸、両者半ばすれば塩梅なり」という一節があり、この塩梅が発展して、物事の調和を表すようになった。





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料理に関する用語

振り塩(当て塩) 塩を散布する、塩焼き、水をとる、塩蔵
立て塩 食塩水につける、塩締め、味付け、防腐、一塩もの、干物
塩もみ 野菜に1%程度の振り塩をして絞り水気を取る。
化粧塩(ひれ塩) 鰭に塩をすり込んで焼く
べた塩(強塩) 真っ白になるくらい塩を使って塩に漬ける。締め鯖
紙塩 湿った紙の上から塩をする
塩抜き(塩出し) 塩物を薄い食塩水につけて塩をとかし出す
敷き塩 サザエの下などに敷く飾り塩
塩締め 魚にあらかじめ塩をして水分を出し身を締める
塩漬け 野菜、肉、魚などに塩をして発酵、調味、保存する
塩なれ 発酵が進んで塩辛さが強く感じなくなる現象
塩むき アサリなどをむき身にすること
塩目 塩加減、(潮目とは違う)
塩焼け 塩焼けは魚の干物で塩が多すぎるときの変色
塩茹で 野菜の青味を残す、里芋のぬめりを取る、マカロニのべとつきを防ぐ、など
塩蒸し 白身魚など昆布とともに蒸す料理
塩引き 魚の塩漬けまたはその塩漬け鮭、マス
尺塩 振り塩を均一にするため30cmくらい上から振る
塩角 塩辛みがストレートに感ずること、塩角が強い
塩押し 塩漬けに重しをして水をあげる
塩打ち 大豆やエンドウを塩水につけて煎ったもの
塩窯焼き 塩または卵白を混ぜた塩で覆い、天火などで蒸し焼きにした料理。




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奈良に関連の深い塩に関する言葉

戎塩 (じゅうえん・じゅえん) 太古地質時代に内海や塩湖が干上がって沈殿した食塩が、再結晶してできた岩塩。中国では古くから戎地(西戎)と呼ばれた青海省の塩湖から産出している。
奈良時代の『種々薬帳』に記載されている。
『種々薬帳』は、天平勝宝8年(756)6月21日、光明皇后が60種の薬物を東大寺大仏に献納した際の目録。 
戎塩壺 正倉院宝物
戎塩を入れた須恵器製蓋付壷。戎塩は種々薬帳に見える薬物
石塩 海外で産出した岩塩
塩祝い 奈良県では、子供の初宮参りの際に、産婆さんが子供に送る玩具やお金を塩祝と呼んだ。
初宮参りの帰りには、逆に親族等から産婆さんに礼として金品などの塩祝いを渡していたという。
現在では、塩そのものを直接贈ることはなくなっているが、もともとは「塩」を祝いとして贈っていた行事の名残と考えられる。


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塩が詠み込まれた万葉歌 塩の詠み込まれた万葉歌に登場する地名 飛鳥・藤原地域出土木簡に見る「塩」
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