両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪
両槻会第14回定例会
野守は見ずや 名柄の遊猟
(みかり
)
資料編 2
この色の文字は、リンクしています。
薬草一覧表(索引)
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資料編1
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定例会レポート
植物名
:「コノテガシワ」ヒノキ科の常緑低木、小高木になることもある。
生薬名:「柏実(ハクジツ):柏子仁」
木簡記述:「栢実一両」
成熟種子を使用し、薬効は安眠作用で、便秘薬としても使われます。
一つの幹が垂直に伸びて10〜14m程の高さになるタイプと、根元の所から枝が群生したような樹形になるタイプがある木で、根元から群生するタイプのものが生垣などに使われます。
って、10〜14mになるものを生垣には使えませんよね!(笑)
☆
「奈良山の 児の手柏の 両面
(ふたおも)
に かにもかくにも 侫人
(ねぢけびと)
の徒
(とも)
」
肖奈行文大夫 (巻十六・3836)
と、万葉集にも歌われています。当時のコノテガシワの葉には、表と裏の違いが際だっていたようですが、今のコノテガシワの葉には表裏の差がほとんど見られません。別の種かも知れません。
植物名
:「コムギ」イネ科
生薬名:「小麦(ショウバク)」
木簡記述:「少白五十□」(□は欠字です)
この「少白」は「ショウバク」つまり食用になる「小麦」のことだと思います。
神農本草経という漢方薬のバイブルのようなに因れば「養心安神薬」という分類に入る、保健薬です。慢性の下痢に用いる養臓湯、四神丸などという漢方薬に配合されていて、嘔吐や食欲不振等にも良いとか。
ネコは子供の頃からパンが好きで、特に風邪で熱など出した時、おかゆは食べられないのですが、トーストなら食べられます...って、関係ないか?(^_^;)
☆万葉時代、稲の収穫は天候に非常に左右されるとして朝廷は、麦や粟などの畑作穀物との併作を奨励しました。普通小麦は、冬に種を蒔き初夏に収穫をするので、真夏の干ばつや台風などの被害を受けにくいので奨励されたようです。
推古十八年(610)三月、高麗の僧曇徴(どんちょう)が碾磑(みずうす)を伝え、水力による製粉法が取り入れられたと同時に、小麦を製粉したものから<餅>を作る処方も伝来している事がわかっています。今では餅と言えばもち米を蒸して搗いていますが、当時は小麦粉で作った餅も作られていたようです。しかし、米を搗いて作った餅よりもネバリが少ないので、餅と言うよりも団子に近かったかも知れません。韓国の餅は米の粉で作りますが、これもどちらかと言うと団子に近い食感を受けます。汁物に入れても融けないので鍋物には重宝します。
オオムギは、加知加太(かちかた)または布止牟岐(ふとむぎ)と呼ばれ、コムギはオオムギよりも約一世紀遅れて(四世紀から五世紀の間)伝来しているのに古牟岐(こむぎ)と呼ばれました。オオムギは主に粒のまま、コムギは粉にして餅や煎餅などに加工されました。現在使われているオオムギとコムギの名前の由来は、植物の大きさの比較ではなく、優劣の比較。つまり、殻などを簡単に取り除けて、飯や粥に使えたオオムギを上質と考え<大>、コムギは品質の劣るものとして<小>をつけたとされます。これと同じ意味でつけられたのが、大豆・小豆です。
「養心安神薬:ようしんあんじゃく」・・・今で言うストレスなどを治す精神安定剤のような薬です。
植物名
:「シシウド」セリ科シシウド属の多年草、「ウド」ウコギ科タラノキ属の多年草生薬名:「独活(ドッカツ)」「九眼独活(キュウガンドッカツ)」
木簡記述:「獨活十斤」
「うど」と書いて変換すると「独活」という漢字が出てきます。日本語ではこのように「独活」は「うど」と読むのですが、生薬の「独活(ドッカツ)」には「シシウド」の根を用いるのです...ややこしい!(x。x)゚゚゚
ちなみに、「シシウド」というのは「ウド」に似ていて大型なので猪だったら食べるだろうということで付けられた名前ですが、「ウド」はウコギ科ですから、全く違う植物です。
では、「ウド」の方は?「ウド」はウコギ科タラノキ属の多年草で、草原や明るい谷間に群生します。栽培もされていて、若芽や茎は食用になりますが、生薬として用いるのは、この根茎です。ただ、生薬名は「独活(ドッカツ)」ではなく「九眼独活」です。
薬効は、どちらも発汗、鎮痛、麻酔作用と同じです。
☆ウド!!これは美味しい!!(笑)春になると、お隣から「ウド堀りに行くぞ!」とお誘いを受け、山に出向きます。お隣が育てておられるウドは、日光に当たらないよう芽が出るとすぐに籾殻を山のように積み重ねます(軟化栽培)。それでもウドは太陽を求めて籾殻を掻き分けるように伸び、やがて日の目を見ます。そうなると人間は籾殻をせっせと取り除き、光合成していない白いウドの茎元を土の間際で刈り取り収穫とします。籾殻で埋まっていた部分は軟化しているので美味しく食べられます。
山に自生しているウドは、土から上はしっかり緑色をしていて、あまり大きくないうちに刈り取って、柔らかな緑の部分だけを食べます。
皮を剥き、薄切りにして天ぷらにすると、非常に美味しいです。お吸い物に入れると良い香りが漂いいっぺんに高級品に変化。(笑)皮は捨ててはいけません。これは細切りにして、ゴマ油と醤油でキンピラにすると、晩酌のツマミに最高です。
ウドの大木・・・ウドは日に当たると堅くなり、一気に木のように大きく育ってしまいます。そうなるととてもじゃないが堅くて食べられません。「体ばかりデカくて役に立たない」ことをウドの大木と呼ぶのはこう言うワケがあったんですね。って、これは「ウド」のお話しで・・・「シシウド」も食べられるのですが、ほんの小さな芽の時だけ食べるそうです。少しでも大きくなると、もう美味しくないそうです。
植物名
:「シナニッケイ」クスノキ科クスノキ属の常緑高木
生薬名:「桂心(ケイシン)」
木簡記述:「桂心三両」
使うのは「根皮」、つまり根っこの皮です。薬効は、発汗、鎮痛、解熱等で、「樹皮・枝皮」を用いる場合もあり、「桂枝」「桂皮」とも言われます。植物としては、中国原産で享保年間に輸入され栽培されるようになったそうなので、木簡の書かれた頃は「根皮」「樹皮」の状態で輸入されていたものと思われ、正倉院御物にあるようです。日本に自生する「ヤブニッケイ」は藪に生えるニッケイという意味で付いた名で、同じクスノキ属ですが、香はあまり無いそうです。
写真は、「シナニッケイ」です。
ちなみに、ハーブの「シナモン」は「シナニッケイ」の近縁種でインドやマレーシアが原産の「セイロンニッケイ」「ジャワニッケイ」という品種から採ります。こちらは「樹皮」の他に「枝」を用います。最近ではこの「セイロンニッケイ」も「桂皮」として使われているようです。
写真は、「ジャワニッケイ」の花です。
☆世界最古のスパイスの1つといわれ紀元前4000年ごろからエジプトでミイラの防腐剤として使われています。日本へは飛鳥時代に遣唐使によって唐文化の一つとしてもたらされ、奈良時代には中国から輸入品が、貴族など上流階級の間で使用されていたようです。正倉院の薬帳にも「桂心」としてその名が見られます。しかし、それは薬として輸入されたに過ぎなくて、樹木として入ってきたのは江戸時代だと言われています。煎じるよりアルコールに漬け込んだ方がより一層効果が高まると言われています。最近はスーパーでもパウダーにして売られているので、手軽に入手出来ます。パン生地、クッキーやケーキに入れたり、紅茶に入れたりして香りと薬効を楽しんで下さい。
植物名
:「ジャノヒゲ」ユリ科ジャノヒゲ属の多年草
生薬名:「麦門冬(バクモンドウ)」
木簡記述:「麦門冬三合」
「リュウノヒゲ」ともいわれ、グランドカバーによく使われる多年草の根の肥大部を使います。
花は目立ちませんが、青い種子が綺麗です。
薬効は、滋養強壮、消炎、解熱、鎮咳去痰で「麦門冬湯」等に用います。
「ナガバノジャノヒゲ」「ヤブラン」「コヤブラン」も同じように用いられるそうです。
☆アニメ映画「となりのトトロ」の中で、さつきとメイちゃんが、トトロに傘をあげたお礼にもらったのが笹の葉で包みリュウノヒゲで縛ったドングリでした。あの映画を観たとき、リュウノヒゲってそんなに長かったっけ?と、思いました。リュウノヒゲは在来植物で、庭によく植えられているのは、非常に雑草抑制能力が高いからです。小さな花も可愛らしいですが、実の美しさと言ったら思わず宝箱に入れたくなるくらいです。食べられないのが残念・・・・(笑)
「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」・・・発作性の激しい咳が頻発し、咽喉が乾燥して違和感を生じ、声がかれるような時に煎じて飲む薬です。
植物名
:「センキュウ」セリ科ハマゼリ属の多年草
生薬名:「川
(センキュウ)」
木簡記述:「伊看我評
窮八斤」
定番生薬の一つ「センキュウ」です。原産地は中国で、古くから日本で薬用植物として栽培されています。使用するのは根茎で、茹でて乾燥して用います。セロリに似た香気があり花は咲きますが日本では結実しません。見た目が似ている植物はありますが、日本には自生していないので、野草摘みの感覚で採集するのは危険です。
木簡に書かれている「
窮」が本来の名前で、中国四川省の「
窮」が優秀なので、「四川
窮」を略して「川
」となったのだそうです。
これに近いハーブには、「ラビッジ」というのがあって、ヨーロッパのハーブガーデンでは定番だそうです。
生薬としての効能は、活血、強壮、鎮痛で、頭痛月経不順などの婦人病の薬として用います。
☆セリ科なので、茎葉は良い香りがします。が、普通のセリと違ってやや苦味があるらしく、鎮静薬として飲む事はあっても、普段にこれを食べると言うのは聞いた事がありません。しかし、香り、特に根茎はその香りが強いので、それを利用して<浴湯薬>として使うことがあるそうです。入浴効果を高めて身体を芯からあたため、冷え症、腰痛、神経痛、リウマチなどに効果的で、最近は<薬湯>と言う名前で某メーカーから粉末の浴溶剤で売られています。センキュウのみご入用の方は漢方薬局でお買い求めになられると良いのですが、結構お高いので普段に利用するのは大変かも知れません。昔の貴族なら惜しげもなく中国から取り寄せたものを利用したでしょうが・・・。(笑)
植物名
:「ダイズ」マメ科ダイズ属の1年草
生薬名:「大豆(ダイズ)」
木簡記述:「鳥児大豆塩无」
これも立派に生薬なのです。もちろん、皆さんご存知の、食用にするのと同じ豆の部分を使います。おそらく原産地は中国で、日本でもかなり古くから栽培されています。写真のは白花ですが、紫紅色のものもあります。豆も緑がかったのや黄白色があり、黒豆(写真のもの)も、やはり「ダイズ」です。
薬効は、抗酸化、免疫増強となっていますが、詳しいことは分かりません。(^_^;)
☆木簡には色々な豆の文字が見られます。大豆、白大豆、小豆、大角豆(ささげ)。とりわけ大豆は弥生時代後期にはすでに伝来していて、万葉時代には醤(ひしお)や末醤(みそ)などの原料に利用していました。用途は今とそんなに違いはありません。面白い事に、煎(い)り大豆・熬(いり)大豆、生大豆と言う記述があり興味をそそられました。『煎り大豆』は今で言う煎った大豆ではなく汁気が無くなるまで煮た煮豆の事です。『熬(いり)大豆』は大豆を乾煎した物で、これをすり潰すと黄な粉になります。『生大豆』は「把」と言う数量表記をなされているので、枝に付いたままの大豆、いわゆる枝豆のことだろうと言われています。私・・・枝豆と大豆は別物だとずっと思っていました。枝豆の収穫が少し遅れると、豆は苦味を増します。落胆して全ての豆を捨ててしまい、後で「そのまま放置すれば大豆になったのに」と聞き、なんとも残念で名実ともに苦い経験をしたことがあります。(笑)
豆を煮るのは時間が掛かるし面倒・・・良くその話は耳にします。私は一度に沢山下茹で(味付けしないで煮るだけ)して、冷めてから小袋に小分けして冷凍しておきます。茹でてあるからシチューやカレーなどにさっと入れられて便利です。昔は魔法瓶を利用して豆の下茹でをしていましたが、魔法瓶に取って代わった最近の電子ポットは繊細な作りだったりするので、違う使い方をすると壊れる事がありますので気をつけて下さい。(笑)
植物名
:「チョウジ」フトモモ科フトモモ属の常緑高木
生薬名:「丁字(チョウジ)」
木簡記述:「鳥児大豆塩无」
第58次調査地出土の木簡には「鳥児大豆塩无」と書かれています。木簡の文字は、万葉仮名のように音を当てたものが大半なので、この最初の「鳥児」が「丁字」だと考えています。「丁字」はインドや中国では紀元前から利用されていた記録があり、正倉院御物の中にも標本が保存されているので、木簡に書かれているのが「丁字」である可能性はかなり高いと思います。
丁字はインドネシアが原産で、10m以上に育つものです。
利用されているのは、この「蕾」を乾燥したもので、名前の由来も「蕾」の形からきていて、蕾の形が釘のように見えるからです。 丁字は丁香ともいい、薬効は坑炎症、抗菌、抗酸化、食欲促進などで、健胃作用、整腸作用もあり、胃腸薬、風邪薬としても使われます。
で、この「丁字」の分類はフトモモ科フトモモ属...って何よ?(笑)
フトモモ科でみなさんがよくご存知なのは、「ユーカリ」でしょうね。コアラの食料になる、オーストラリア原産の常緑高木...実は、ネコの家にも1本ありまして、「蚊避けになるレモンユーカリ」というふれ込みで、生協のカタログに載っていた小さな苗木を買ったのですが、蚊避けはともかくとして、これがどんどん育って、今や二階の窓の高さまで...どうしよう?!状態なのであります。(^_^;)
葉の精油はシトロネラール、シオネールなど、殺菌作用や坑炎症作用のある物質を含み、民間薬として使われます。
ブラシノキ
フェイジョア
同じオーストラリア原産のものでは、「ブラシノキ」があります。熱帯アメリカ原産の果樹「フェイジョア」や「グァバ」もフトモモ科です。
☆お料理が好きな方なら<クローブ>と言った方がピンと来て頂けるかと思いますが、お花の蕾を乾燥させた物で、独特な甘い香りです。息子に表現させると「殺虫剤に甘さを加えたような臭い」だそうです。(笑)これは当たらずとも遠からずで、実は、ゴキブリはこの臭いが大嫌い!お茶パックにクローブを入れて、ゴキブリが出そうなシンク下や物置などに置くと寄り付かないと言われています。正倉院の宝物の中に入っていた丁子は、勿論装飾の意味もあったと思いますが、それと同時に防虫・消臭の役割も果たしていたのではないでしょうか。
また、オレンジなど柑橘類に刺して乾燥させた物を<ポマンダー>と言い、部屋やタンスなどにぶら下げておけば、消臭・防虫にもなります。ヨーロッパでは、現在でも手作りのポマンダーをプレゼントしあう習慣が残っているんですよ。
香りだけを利用する場合はそれで良いのですが、お料理に使う時はお約束があります。2歳以下のお子様、分娩時以外の妊産婦さんは口にしないようにして下さい。クローブだけではなく、ハーブと呼ばれる植物の中には、結構お子様や妊産婦さんは口にしない方が良い物がありますので、注意が必要です。(刺激が強い場合や、陣痛を促進してしまう成分が含まれる事がある)
植物名
:「トチュウ」トチュウ科トチュウ属の常緑高木
生薬名:「杜仲(トチュウ)」
木簡記述:「杜中」「杜仲十斤」
杜仲茶というのでお馴染みですが、生薬としては樹皮を、肝臓疾患などに用います。市販されている「杜仲茶」は葉っぱを使うのですが、薬効としては樹皮より少ないそうです。
☆煎じるより、薬酒に用いてアルコール分で浸出することで、より一層効果が高まるといわれています。樹皮をはいだり、葉や枝を折ると、白銀色の糸を引く特徴があります。この成分はグッタペルカというゴム質で、固まると樹脂状になります。トチュウでは含有量が少ないために工業利用はされていませんが、絶縁材料や歯科用セメントになる成分です。
植物名
:「ナガイモ」「ヤマノイモ」ヤマノイモ科ヤマノイモ属のツル性多年草
生薬名:「薯蕷(ショヨ)」「山薬(サンヤク)」
木簡記述:「署預二升半」
「ヤマノイモ」は畑で栽培しなくても、山に自生する芋という意味で「ジネンジョウ」ともいわれます。「ナガイモ」には、山に自生するものもあって、それを「野山薬」といい、畑で栽培されるものを「家山薬」というと牧野図鑑に書いてあり、「ナガイモ」を原料植物としていますが、漢方薬屋さんのホームページを見ると、どちらも用いるとあり、周皮を除いた根茎を乾燥したものとなっています。薬効は、滋養、強壮、止瀉作用で糖尿病の治療薬として使われるそうです。
また、民間では、夜尿症の治療薬としても用いられてきました。
☆ナガイモと非常に良く似ているつる性植物に<オニドコロ>があります。やや細長いハート型をしているナガイモに対して、オニドコロは丸い綺麗なハート型をしています。葉っぱの付き方をみればすぐに見分けがつきます。
オニドコロの葉は<互生>(ごせい:ひとつの節から1枚の葉を出すような葉のつき方)
ナガイモの葉は<対生>(たいせい:節の両側に葉を出すようなつき方)
オニドコロも昔は食べられていましたが、灰汁があるので面倒なのか今はあまり食べられていません。
止瀉作用(ししゃさよう)・・・下痢止め作用の事です。
植物名
:「ナツトウダイ」「タカトウダイ」トウダイグサ科トウダイグサ属の多年草
生薬名:「大戟(タイゲキ)」
木簡記述:「大戟」
使用するのは根茎で、牧野図鑑では「ナツトウダイ」が「大戟(タイゲキ)」であるとしていますが、「タカトウダイ」の方だとする説もあるようです。いずれにしても、毒性が強いので日本では現在あまり使われていないそうです。
薬効は、腹水、浮腫の除去で、利尿作用もあるとされています。妊婦には禁忌です。
☆これは全草に毒性がありますので<要注意>です!!茎を折ると白乳汁を出し皮膚に触れると炎症を起こす。食べると嘔吐、腹痛、下痢などを起こす、意外と強い毒性を持ちますので、触らぬタイゲキに祟りなしです。
植物名
:「ニホントウキ」セリ科シシウド属の多年草
生薬名:「当帰(トウキ)」
木簡記述:「伊看我評 当帰十一斤」
漢方の定番で「当帰」です。本州中北部の山地に生える多年草なので、山歩きをする方は目にする機会があるかもしれません。ただし、セリ科は毒草に注意が必要なので、採集はひかえてください。
ところで、漢方の「当帰」は、本来は中国原産の「カラトウキ」で別種です。現在は国産の「ニホントウキ」も使われていますが、木簡に書かれていたのは、この「カラトウキ」の方だったのかもしれませんね。薬効はどちらも同じで、婦人病の薬として用いられます。
☆これはね、そのまま現代に利用するって事は、滅多にないんです。薬膳料理には出る事があるかな?程度ですね。美味しい?と問われれば、返答に困る。(笑)
葉や茎に芳香があるので、刻んでガーゼなどに包み浴槽にいれて<浴湯薬>に利用しちゃいましょ。鎮静・冷え性・しもやけ・婦人病に効果があるとされます。
植物名
:「ハナスゲ」ユリ科の多年草
生薬名:「地母(チモ)」
木簡記述:「知苺」
「ハナスゲ」の根茎から採る生薬です。「ハナスゲ」は中国北部原産で、日本には自生種はありません。鎮咳、去痰、解熱作用などがあり、かなり古くから薬用として栽培されているようです。名前の由来は「スゲ」に似ていてそれより美しい花を付けるから、だそうです。
☆ 知母(チモ)の名前にまつわる素敵なお話しをさせて頂きます。
中国のあるお婆さんは、山から薬草を採って来ては、貧しい人たちに無償で分け与えていました。
年老いて、山に行けなくなったお婆さんは、誰かに薬草を伝えておきたいと思いましたが、どの人も薬草でお金儲けをしようと思う人ばかりで、お婆さんは伝えられずにいました。寒い冬の日、山に行けなくなったお婆さんは食べるものもなくなり、ある木こりの家の前に行き倒れてしまいました。木こり夫婦はお婆さんを家の中に入れて、手厚く看病をし、その後もずっとお婆さんと一緒に、まるで親子のように暮らしました。三年後のある日、お婆さんがどうしても山に行きたいと言うので、木こりはお婆さんを背負って山を登ると、白地に紫の筋のある花をつけた細い葉の野草を指差し、その黄褐色の根が薬草であることを教えました。お婆さんは「私は貧しい人にも優しく接してくれる人にこの薬草を教えてやりたかった。この薬草を知母となずけ、あなたにだけ教えよう。」と言いました。その後木こりは山からこの知母を採って来ては、貧しい人たちの役に立てたそうです。
植物名
:「ヒオウギ」アヤメ科ヒオウギ属の多年草
生薬名:「射干(ヤカン)」
木簡記述:「夜干十斤」
木簡の記述は万葉仮名のように音で表したものも多いし、おそらく「射」という字は、当時も「イ」と読んだのではないかと思うので、「ヤカン」という生薬名を伝えるには、「夜干」の方が良かったかもしれません。
「射干(ヤカン)」は、この根茎を使います。薬効は解熱、去痰で、「射干麻黄湯」という漢方薬は、この「射干」「麻黄」に「生姜」「半夏」を配合したもので、風邪薬です。
「ヒオウギ」の名は、葉が「檜扇」の形に広がることから付いた名前で、日の当たる草地に生える多年草ですが、現在では観賞用などに栽培されているものがほとんどで、自生種は希になってしまいました。夏の終わり頃に淡いオレンジ色の花を付け、秋に果実が熟すと真っ黒の種子が出てきます。
この種子が歌に詠まれている「ぬばたま」とか「うばたま」なのですが、この話はPさんにお任せすることにしましょう。
☆射干(別名ヒオウギ)は魔よけの意味があると言われ、祇園祭にはなくてはならない花とされています。が、笑いネコさんからこの植物の実<ぬばたま>をふられたのでそのお話しを簡単に。(笑)
ぬばたまは「射干玉(ぬばたま)」または「烏羽玉(うばたま)」と書くヒオウギの実。真っ黒で美しい艶があるので、黒に関連のある「夜・夕・髪」などにかかる 枕詞(まくらことば)として用いられました。柿本朝臣人麻呂が、泊瀬部皇女・忍坂部皇子に献上した歌が万葉集に残されています。その中に<ぬばたま>が夜を導く枕詞として入れられていますのでご紹介いたします。長いです。(笑)
飛ぶ鳥の 明日香の川の 上つ瀬に 生(お)ふる玉藻は 下つ瀬に 流れ触らばふ 玉藻なす か寄りかく寄り 靡(なび)かひし 嬬(つま)の命(みこと)の たたなづく 柔肌すらを 剣太刀 身に添へ寝ねば ぬばたまの 夜床も荒るらむ(荒れなむ) そこ故に 慰めかねて けだしくも 逢ふやと思ひて(君も逢ふやと) 玉垂の 越智の大野の 朝露に 玉藻はひづち 夕霧に 衣は濡れて 草枕 旅寝かもする 逢はぬ君故
柿本人麻呂(万葉集 2−194)
植物名
:「ヒシ」ヒシ科ヒシ属の1年草
生薬名:「菱の実」
木簡記述:「非子」「
子」
「非子」については、二つ考えられます。一つは「榧子(ヒシ)」で「カヤ」の実、もう一つがこの「菱の実」です。「ヒシ」は池やため池に群生する浮葉植物です。名前の由来は、実が堅いので「緊(ひし)ぐ」からきたとも、扁平な実の形から「拉(ひし)ぐ」ということからきたとも言われます。また葉や果実が菱形だからという説もあります。この実を乾燥させると薬用に用いることが出来るのです。
☆菱の実は昔からガン(胃ガン・子宮ガン)、胃病、婦人病、便秘、胎毒、酒毒などに効果があるとして、菱の実を日干しして煎じて飲む風習がありました。現代薬理学の研究では、菱の実はガン細胞の増殖を抑制するのに効果があることが発見されています。本草網目(中国・明時代)には「菱の実の粉で作った粥は胃腸を良くし、内在する熱を解き、中高年が常食とすると胃および脾臓を健康にして足腰を強くし、体内より元気が湧き出るようになる」とすでに書かれています。
君がため 浮沼の池の 菱採ると 我が染し袖 濡れにけるかも
柿本人麻呂(万葉集 7−1249)
植物名
:「ボウフウ」セリ科ボウフウ属
生薬名:「防風(ボウフウ)」
木簡記述:「防風三両」「防風十斤十二□」(□は欠字、両か?)
二つ目の木簡には「出雲臣首万□」「出雲臣石寸」「出雲臣知万呂」という人名と共に書かれていて、その後に「防風十斤十二□」となっています。この人達が「防風」を栽培していて、藤原京に送ったのでしょうか?
「ボウフウ」は中国原産で日本に自生種はありません。「昔中国から渡ってきたが今では絶滅して残っていない」と牧野図鑑にはありますが、現在では再度中国から来た「ボウフウ」が栽培されていて、生薬の原料として使われています。薬効は発汗、鎮痛作用などで、抗アレルギー作用があるとされ、皮膚疾患に使われます。
田村薬草園ではカワラボウフウ属の「ボタンボウフウ」が栽培されています。
これは、若い葉を摘んで食用にするので食用防風の異名があります。また、「ボウフウ」が絶滅してしまっていた時期には、代用品として「防風」の原料に使われていたということです。
Pさんの薬膳コーナーの「ハマボウフウ」の生薬名は「沙参(シャジン)」で、「沙参麦門冬湯」などとして、痰の絡まない乾いた咳に用います。しかし、「ボタンボウフウ」同様に、「防風」の代用品としても使われていたようです。生薬というのは、植物をそのまま使うものなので、成分は一つではありませんから、「防風」としての使用も、可能だったのですね。
☆「ボウフウ」は滅多にお目にかかれませんので(自然にはありません)、さすがの私も食べた事もありませんが、「ボタンボウフウ」や「ハマボウフウ」は独特の香りと辛味を持つ植物で、新芽を軽く茹でて、酢味噌和えにしたり、生のままお刺身のツマに利用されますので、知らず知らずのうちに口にしておられる(見ておられる)かも知れませんね。料理用として市販されているボウフウのほとんどはこのハマボウフウだそうです。「ボタンボウフウ」は今でも石垣島や沖縄あたりで栽培されていて、「一株食べれば一日寿命が延びる」と言われるぐらい体に良いとされています。
新芽と花芽は天ぷらにすると爽やかな苦味と香りが食欲をそそります。茎を酢味噌で食べても美味しく頂けます。とても育てやすい丈夫な植物なので、庭の砂地に植えて育てても良いと思います。(笑)
植物名
:「マオウ」マオウ科の常緑小低木
生薬名:「麻黄(マオウ)」
木簡記述:「麻黄二両」「麻黄卅四□〔把ヵ〕」
モンゴルや中国北部の砂地に自生するトクサに似た植物で、この地上茎を使います。薬効は、発汗、鎮咳で葛根湯などに入っています。
注意事項としては、不眠症、虚証、高血圧の場合は使用を避けることです。また、含有成分のエフェドリンに毒性があるため、多くの欧米諸国では法律で使用を禁じられています。
虚証(きょしょう)・・・漢方用語で、体力、気力がない状態を言います。その反対で体力、気力ともにありあまる状態を実証(ジッショウ)と言います。
エフェドリン・・・気管支喘息に効果があり、気管支拡張剤として利用されていますが、他の薬との併用により、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性を持ち合わせている。
植物名
:「モモ」バラ科サクラ属の落葉小高木
生薬名:「桃仁(トウニン)」
木簡記述:「桃人七斤」「桃四両」
この「桃人」「桃」も「桃仁(トウニン)」とう生薬だと思われます。もちろんこれは、「モモ」の種子のことです。「烏梅」の「ウメ」もそうですが、「モモ」もかなり古く中国から渡来したものです。「モモ」を食べた時に出てくる「種」を割って、更にその中にある「種子」を取り出して天日干しすると、この「桃仁」が出来ます。「種」と「種子」と書きましたが、植物学的には正しくありません。ややこしいので、通称で書きました。坑炎症、血液循環改善等の薬効があります。
☆桃仁酒(とうにんしゅ)と言うのがあります。これも梅酒と同じ要領でホワイトリカーまたは蒸留酒(出来れば40度以上)とで漬け込むだけですが、お好みで氷砂糖を入れ、桃を食べた後の種を布で包んで金槌で叩いて割り、中のアーモンドのような仁を取り出して、水分を拭いてからその都度入れておけばOK!琥珀色になったら飲み頃です。一度に沢山食べない桃の場合、1個2個と、その都度漬け込んで行けば良いので、じっくり仁を増やしながら作って下さい。(笑)とても華やかな香りのお酒になります。まとめて漬け込みしたい場合は、仁を天日でしっかり干して保存して下さい。
中国の月餅(ユエピン)にも入っている事があります。結構高級な物じゃないと入れられてないみたいですが・・・。(笑)
その他の利用法をご紹介します。
【桃仁墨魚】
月経不順に利あり。
(材料)
・イカ・・・1ぱい ・桃仁・・6g
(作り方)
鍋に、下ごしらえして2〜3cmに切ったいか1杯と、桃仁6g、ひたひたの水を入れて弱火で30分ほど煮込みます。
【桃仁紅花紅茶】生理が早い、量が多い、色が濃くて粘り、あるいは塊状、腹痛腹張
(注意!!)*妊娠している方には紅花が良くないので避けて下さい!!
(材料)
・桃仁・・・20g ・紅花・・・12g
・水・・・・・600cc ・生姜2〜3片
・棗(ナツメ)・・・・4個 ・蜂蜜・・・・適宜
(作り方)
1.材料すべてを土瓶またはお鍋に入れ火にかける。
2.とろ火で40分から60分煮詰める。
3.ガーゼで漉して飲む。
(残ったら瓶などに入れて、冷暗所で保存し、飲むときに人肌に温めて飲む。)
【桃仁豆腐】
(材料)4〜5人分
・桃の種(仁)・・・15〜16個 ・豆乳・・・・・・・・600cc
・砂糖・・・・・・・・大さじ4〜5杯 ・葛・・・・・・・・・・40g
・葛用の水・・・・100cc ・桃の果肉・・・・1個分(飾りつけ用)
(作り方)
1.桃の皮をむき、実は角切りに、種は割って「仁」を取り出します。
※包丁で実の真ん中に切り込みを入れ、半分に割ると種が取り出しやすいです
2.すり鉢に少量の水を入れ、皮をむいた仁をすりつぶし、さらしで搾って「仁」エキス を取り出します。
3.鍋に豆乳、砂糖、「仁」エキスを入れ砂糖が溶けるまで加熱します。
4.仕上げに葛粉(水で溶いたもの)を入れ、とろみが出てくるまで弱火で煮詰めます。
5. あら熱をとったを器に盛り、角切りの桃を浮かばせ、2時間程冷やせば出来上がり。
(DASH村HPより)
植物名
:「ヤブジラミ」セリ科ヤブジラミ属の1年草
生薬名:「蛇床子(ジャショウシ)」
木簡記述:「
床子一升」
空き地や路傍の何処にでも見られる植物で、藪に生えて、棘のある果実が衣服に付くので「ヤブジラミ」なのですが、生薬として用いるのはこの厄介者の果実なのです。強壮作用や消炎作用があります。
比較図に描いてある「オヤブジラミ」は「ヤブジラミ」より果実が大きく、葉も粗大な感じがします。生薬には用いません。「シャク」は更に大型で湿地に生え、花序の外側の花びらが他のより大きいという特徴があります。根を晒して粉にしたものを食用に出来るそうですが、水辺や湿地に生えるセリ科には、図の「ドクゼリ」という有毒植物があるので注意が必要です。「シャク」の根は多肉で地中深く直下に生えるのに対し、「ドクゼリ」はタケノコのような節のある地下茎で(観賞用に使われることもあります)、節間は中空なのでこれで区別します。また、図のように「シャク」や「ヤブジラミ」の葉は小葉に細かい切れ目の沢山ある複葉ですが、「ドクゼリ」の小葉は縁にギザギザがあるだけで、深い切れ目はありません。
☆若芽には白い短い毛が沢山あります。初夏に白い小さな花が咲きますが、摘み菜は花が咲く前までです。パセリよりも柔らかな葉と香りを持ちます。塩でもんでから適当な大きさに切って、パスタに納豆と一緒に入れて食べても美味しいですし、お味噌汁の実にも出来ます。
花序(かじょ)・・・花の付いた枝全体、または、花の付き方。
植物名
:「ヤマゴボウ」ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草
生薬名:商陸(ショウリク)」
木簡記述:「商陸漆斤」
薬用に栽培されているものの根を使います。時に野生化すると牧野図鑑にはありますが、現在野生で見られるのは同属の「ヨウシュヤマゴボウ(アメリカヤマゴボウ)」ばかりです。こちらは、インクベリーという別名があり、一時的のインクを作ることも出来るそうですが、薬用にはなりませんし、有毒です。
商陸は大小便を通暢させ、水湿を排出することができるということで、古法には商陸のお粥、あるいは鯉とともに煮て食べるとありますが、有毒植物なので素人の使用はひかえるべきでしょう。
☆ヤマゴボウの味噌漬けとかって言って売られている物は、このヤマゴボウを使っているのではなくモリアザミの根で作られていますので、くれぐれもお間違いなきように。
植物名
:「ヨロイグサ」セリ科シシウド属の多年草
生薬名:「白
(ビャクシ)」
木簡記述:「白
三両」
生薬としては、根を用います。ヨーロッパ産のアンゼリカまたはアンジェリカという砂糖漬けにしてケーキなどに用いるものと同じ種類の植物で、薬効は、鎮痛作用、麻酔作用、去痰作用です。また、血行を良くしたり、化膿症の治癒を促したりする作用もあるそうです。
☆皮膚を潤し、かゆみを取り去り、色黒、イボをとることができてしっとりした肌になります。しかし、根にはフロクマリン誘導体のビャク−アンゲリシン、ビャク−アンゲリコールなどが含まれていて、このフロクマリン類は光感作効果をもっているので要注意!!このビャクシに限らず、柑橘系(特にレモン)なども光感作作用があるので、日中肌につけて紫外線に当たると、シミ、ソバカスの原因になります。夜に塗って寝た場合も、朝にはちゃんと精製水などで綺麗に洗ってからでないと、外に出てはいけません。却って悪影響がありますので気をつけて下さい。治療効果を高め、ハーブの副作用を抑えるには、蜂蜜、オイル、牛乳や黒砂糖などを一緒に使うと良いとされます。
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