両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪



第47回定例会


飛鳥ビューポイントウォーク

−飛鳥資料館写真コンテスト上位入賞者の撮影ポイントを巡る−

レポート


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第47回定例会資料
2014年11月15日

 第47回の定例会は、両槻会が協賛し飛鳥資料館の夏期企画展として定着してきた「飛鳥写真コンテスト」に関連したウォーキングとして、初参加の方5名を含む19名の参加者で実施されました。当日は晩秋の冷たい風が頬を撫でるものの、青空の広がる撮影、ウォーキング日和の晴天となり、秋のしつらえの飛鳥駅前から9時43分発、通称赤かめバスに乗り込み出発いたしました。


 今回は明日香村東部・南東部と北西部の有名撮影スポットを同日に歩き巡ると言う、いかにも両槻会らしい内容とあって、一眼レフだけでなく三脚を持参された方もおられ写真好きの方の意気込みも感じられる会となりました。

 事務局サイドも秋の短い日照時間と高低差のあるルートを一つでも多く楽して巡ろうという思いで、金かめ、赤かめバス連携システムを活用し、いつも以上に綿密なスケジュールを検討、計画しましたが、天皇皇后両陛下の明日香ご訪問の報道をうけ、交通規制による混乱回避のため、予定していた石舞台、甘樫丘、古宮土壇を急遽、別ルートに変更する想定外の事態もありました。

 飛鳥駅を出発して、はじめにバスを降りたのは健康福祉センター前。ここで小学生のスクールバスとして代用されている(日曜日は運休)金かめバスに乗り換え、明日香村東部にある上(かむら)へ向かいました。

 「かむら」とはとても読めないこの地名。
 上とあって、バス停から徒歩1分、細川集落から更に急斜面な高所にある眺望のよい橋脚のスポットに到着しました。今回は事務局長の案内となりますが、各スポット毎に、定例の考古学的な解説の後、飛鳥資料館刊行で過去の入賞写真集「飛鳥」と事務局長が撮影した写真を参照しながら撮影ポイントの解説もありました。以下、その解説のダイジェストなど交えながら到着順にレポートしていきます。

  ①気都和既橋北詰(大字上にあり、談山神社への西門の通過点に所在。特徴は上・細川・阪田の棚田や遠く佐田・真弓丘陵を展望。上から細川を通り玉藻橋で飛鳥川と合流する冬野川源流のある地。6月、夕景で赤く染まる水田の撮影が人気。飛鳥の甍で入賞された、朝焼けの青い光で表現された甍の入賞作品などが紹介されました。)


 もとは古墳という墓場地帯にあり、気候も厳しそうな急峻な地形に接して、そこに住む暮らしの苦労を思わずにはいられませんが、反面、眺望の素晴らしさを自慢と誇りとして生活されているのだろうなと納得もいたします。そうやって暮らし続けておられるからこそ、私たちもこの恩恵を頂けるのですね。





 ②気都和既神社(①の気都和既橋北詰から下って直ぐの場所。)


 別名「もうこの森」にまつわる面白い伝承で有名な神社で、その解説を聞きました。境内で何かの転用石と思われる石造物を岡先生が発見され撮影しました。



 下りながら右手に見える細川集落。灯籠の道がもう一つの隠れたビュースポットでもある尾曽集落への分岐点だそうです。しかし寂しげな道のため訪れるには要注意とか。





 ③仮称「試みの石舞台」(②の気都和既神社から更に少し下った道沿い右側に所在する石舞台に酷似した石物。)
 古墳の石切り場と推測される地が近くにあるので、石舞台古墳造営の練習をしたのではと言う妄想から事務局長が勝手に命名。リアル古墳ではないそうです。





④ 細川の棚田(更に歩き下り俯瞰的に撮影出来る細川集落の水田は、先の石物ともに二上山と落日の撮影ポイント)


 石物は他の明日香写真コンテストでも入賞作があり有名ですね。水田は知られざる飛鳥の情景で入賞された2作品が紹介されました。いずれも印象深い作品です。

 ちなみに下の写真の石物を私は細川の巨人と呼んでいます。雑草でアートされた巨人の横顔に見えませんか。


 後世の誰かが、石舞台を真似て観光名所にしようとしたのかも。視点の違いから色々な妄想膨らむこの愛すべきオブジェや水田ですが、撮影時田んぼを荒らし、畝をこわした輩がいた為、立ち入り禁止の看板が設置されていると説明を聞き、残念。
 飛鳥の素敵な風景が壊されない様マナーは遵守したいものです。


 遥か古代人たちに思いを馳せ、細川を眺めるのもよいものです。最初の橋(気都和既橋)が遥か後方に見えます。




⑤ 畑分岐

 後方を見上げると先ほどの橋からかなり下って来た事が分かりますが、ここもまだかなりの高い斜傾地です。
 分岐点向かって右を登ると過疎化した下畑、上畑、さらには、上から細川を通り玉藻橋で飛鳥川と合流する冬野川源流のある地である冬野集落へ行くそうです。途中、通称七曲がりと呼ばれる明日香村の高所ビュースポットは、残念ながら現在は木々に阻まれ眺望は難しいとの説明でした。以前訪れていますので両槻会レポを参照してください。(第19回定例会「竜在峠から入谷へ ―大丹穂山の桙削寺を訪ねる―」レポート

 そして降りてゆきますと、前方には柿の紅葉で有名な上居にある上宮寺の屋根が見えてきました。
 途中打上古墳や上居の立石の説明を聞き、収穫を終えたのどかな色彩の風景に癒されながら、皆さん、それぞれに撮影されていました。


 遥か左前方には、これから訪れる稲淵のランドマークである色づいた大銀杏が小さく見えています。こうして眺めると、まだまだある今日の行程の凄さがわかりました。夏場なら大汗をかきながらでしょうが、この日は本当に気持ち良い癒しウォーキングでした。


 阪田の棚田を眺めながら解説。遥か遠方に見えるのが稲淵の棚田




⑥ 都塚古墳(つい最近、阪田集落にある日本のピラミットかと報道された話題の古墳。)

 何故か小声になった事務局長の自説を交えた興味深い旬の解説に聞き入る参加者の皆さんでした。ラッキーな事に土曜日のこの日も調査中。有名な先生もおられました。内緒ですが新たな発見では?と思える場所も見る事が出来ました。都塚古墳の謎に関しての記事は、飛鳥遊訪マガジンにもご寄稿いただきましたが、果たしてピラミットなのか、埋葬者はだれなのか、諸説あるようです。
 参考:「飛鳥前史を語る積石塚 -都塚古墳の調査から-/あい坊先生」(飛鳥遊訪マガジン195号に掲載)


 坂田原と呼ばれていた冬野川左岸に都塚古墳が位置する事から、事務局長は蘇我氏以外の誰かではないかと推測されているようでした。

 その謎を引き継ぐ様に、次の坂田寺跡へと向かいました。その途中、眼前の上居を眺めると柿の紅葉が赤く燃え始めていました。事務局長の紹介に皆さんも高台にある眺望の良い場所とあって、何処から登れるのかと確認されていました。石舞台からや、自信のある方は上居の立石の急で曲がりくねった坂道からも行けます。石舞台を眼下に臨み、明日香村でも数少ない紅葉がみられる上居は今が撮影シーズンです。





⑦ 阪田(奈良時代の坂田寺の遺跡の場所。マラ石も有名です。)


 両槻会ではおなじみなのでレポはスルーしますが、阪田バス停横、祝戸荘の大きな看板横にもある様に、石舞台公園、祝戸荘一帯はススキが群をなしています。逆光、反逆光で秋を撮影するビュースポットです。


 この阪田バス停から例の金かめバスに乗車、ここから明日香村最南端とも言える栢森へ向かいましたが、途中有名な稲淵の棚田を眺めるのは右側に座るのが良い事(笑)や棚田中腹にある塚本古墳の解説もありました。
 また、大阪の通天閣や神戸の六甲アイランドまでも望遠で眺望できるほどの展望台がある通称藤本山から撮影された写真の紹介もありました。ここも以前定例会で訪れていますので、眺望の程はレポートをご覧ください。(第4回定例会「飛鳥展望散歩」第31回定例会「飛鳥展望散歩2」
 金かめバスで移動中、手を挙げてバスに乗車される地元の方がおられ、奥飛鳥らしい事情が垣間みられるほのぼのした瞬間でした。




⑧ 栢森バス停着(既に奥飛鳥として有名な地域。)
 栢森、入谷、滝、鯉のぼり、紅葉、神社、栢森様式の古民家などさまざまなキーワードで撮影されるシーンの宝庫とも言え、写真コンテストでも作品が多くみられます。飛鳥資料館第1回写真コンテスト「知られざる飛鳥の情景」で入賞された岡先生が、撮影された蓮の花のスポットも教えて頂きましたので、是非撮影したいと思いました。




⑨ 常門新兵衛さんの鬼瓦の家(飛鳥の甍で最多数の応募作品となった民家の瓦屋根)
 この瓦を巡る逸話は帝塚山大学の清水昭博先生の飛鳥遊訪マガジンへのご寄稿今回の咲読にも紹介されていますが、此の様に時空を超えて甦ったと言える新兵衛さんの瓦。明日香村で写真の題材を探る事は隠れた飛鳥の生きた歴史に触れる事でもあり、このようなコンテストは、文化の再発見に役立っている様に思われますし、視点を少し変えるだけでいくらでも素晴らしい対象に出会える事も改めて実感いたします。





⑩ 加夜奈留美命神社
 (この神社の神奈備をめぐる縁起についての解説がありました。ここで前半の行程が終了、神様に境内をお借りして待望の昼食タイムをとらせて頂きました。)




⑪ ごろの滝
 (後半戦はかつて特別回の「奥飛鳥滝巡り」で訪れたこの滝からです。陽のあたらない薄暗い滝ですが、普段訪れる機会がない場所との配慮から、しばし撮影タイムとなりました。魔物はいませんでしたか。笑。一応案内表示がありますので、気をつけてお立ち寄りください。)





⑫ 女綱(栢森から飛鳥川右岸を歩くと左手にみえる結界的な勧請綱。)

 このすすきの直ぐ横には明日香村大根田を経て高取山に行く道が在り、この日もハイカーの方に出会いました。この時間帯はススキが逆光に映えて綺麗でした。





⑬ 宇須多伎比売命神社(後背の山を信仰する神社。請雨祈願の行事である、なもで踊りが行われていた神社。)


 神社下の飛鳥川は八幡だぶが見られます。第2回飛鳥資料館写真コンテスト「遥かなる華の都」で入賞された作品の紹介がありました。確か稲淵の棚田は今も吉野川分水ではなく、この飛鳥川から水を引いていると聞いています。栢森、稲淵一帯は特に貴重な水を巡る信仰が濃厚に息づく地域なのですね。奥飛鳥の勢いのある滝は、五穀豊穣の秋の象徴としてとらえたいですね。


 神社から徒歩数分の有名な滝、本格的な紅葉はまだでした。


 昨年12月初旬の滝は、こんな感じ。↑




⑭ 飛び石・男綱(あまりにも有名なスポット。飛鳥資料館第1回写真コンテスト「知られざる飛鳥の情景」飛鳥資料館第4回写真コンテスト「飛鳥川の導」で入賞された作品があります。)




⑮ 案山子ロード朝風峠(棚田で有名な稲淵を眺望する場所)
 遠方を見るとはじめに訪れた上だけではなく、談山神社西門峠が見えると言う事務局長の解説にへえ〜と眺め直しました。朝風や稲淵の棚田にまつわる説明の後、しばし休憩タイムがとられ、田んぼのアールを俯瞰的に見える場所も教えて頂き、皆さん、午後の斜光線で映える棚田の風景を撮影されていました。
 ちなみにこの時期は恒例の案山子祭の真最中、11月最後の連休にはランドマーク的な金太郎の案山子以外、撤去され、案山子供養がされるそうです。


 11月18日オーナー制の田んぼの脱穀が行われています。この黒いシートはそれまでの霜避けだそうです。今頃はこのわらを利用して例のだるまがつくられている事でしょう。


 この朝風峠でこの近くから参加されたお一人とお別れして(お疲れ様でした。)、農面道路へ入り平田地区を目指しました。


 農面道路から見える眺望(二上山、貝吹山、真弓の岡)の解説の後、意図的に下りの車道を外れ、みかん果樹園の小径から下りました。





⑯ 上平田集落の連越屋根(先ほどの果樹園で収穫された温州みかんが腐らない様に換気口として工夫された明日香村特有の屋根。)
 流通が発達した現在は使用されていないそうです。飛鳥資料館第5回写真コンテスト「飛鳥の甍」で入賞された作品が紹介された後、しばし撮影タイムとなりました。




⑰ 中尾山古墳(本日最後の場所で、明日香村中央部で最も紅葉が美しいと言われる。)
 終始晴天に恵まれたウォーキングの最後に美しい光景を見て、思わずホットされたのでしょうか、中尾山古墳に着くや否や、事務局長の発したあるおきまりの人徳発言に「そう言われるとジントクルネ」と待っていたかの様にすかさず参加者の方から飛び出す親父ギャグ。さすが両槻会の常連さん!と思わず拍手。これは常連さんしか分からないネタでした。すいません。(笑)でもほっとする気持ちもわかります。解説おつかれ様でした。
 配布資料にある事務局サポートスタッフのぷーままさん撮影の写真がピカ一ですね。




⑱ 歴史公園館
 最後の休憩をとりながら、次回1月定例会、帝塚山大学市民大学講座、岡先生のご支援いただく2015年3月の定例会、佐々木先生が従事されていた発掘現場や第48回定例会でミニ講演をしていただくことなどの紹介がありました。

⑲ 飛鳥駅で解散式
 今回は晩秋の飛鳥を満喫しながら、考古学的視点も織り交ぜ、かなり多くの撮影ポイントを巡る事が出来きました。単に風景が美しいだけでなく、歴史を考えながら撮影出来る面白さがある、そんな2つ美味しい飛鳥の魅力を実感できた定例会でした。参加者の皆様にとってもこれからの飛鳥撮影の参考になったのではないでしょうか。




⑳ 番外編(飛鳥駅までの道すがら)
 予定のコースは終了したのですが、事務局長のありがた〜いご配慮により、飛鳥資料館第1回写真コンテスト「知られざる飛鳥の情景」で入賞したつばき作品の場所や撮影意図をご紹介する時間を頂きました。それでトリかと思いきや、ご自身の従二位古都写真大納言入賞作品である「古宮有情」をちゃんと最後にご披露され、この回を締められましたところは、さすが、用意周到な計画が自慢の両槻会主催者であると、感心してこのレポートを終えたいところですが、さにあらん。

 今回は、諸般の事情で飛鳥の人気スポットである古宮土壇や甘樫丘は訪れる事が出来ませんでした。実は訪れていたらこんな風景でしたという、スマホスナップをご覧頂き、レポートを終了したいと思います。(笑)
 皆様お疲れ様でした。


古代の宴を想う


晩秋の光 
レポート担当:つばきさん



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