両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪



植物・自然編


 ( 参考 笑いネコの部屋   とっても身近な植物図鑑 )
 ( 参考 万葉の花   それぞれの花 )


問78  棚田のシンボルの花ともなっており、万葉集には「いちし」として歌われている花は
      なんでしょうか。

      1: 彼岸花  2: レンゲ  3: 橘  4: 菜の花

 「レンゲ」と「菜の花」は万葉集には出てきません。「レンゲ」は「ゲンゲ」または「レンゲソウ」の通称で、原産地は中国です。 日本にいつ頃入ってきたかは良く分かっていませんが、記録として書かれているのは江戸時代の「大和本草」で、飼料や食用にされていたようです。万葉の時代まで遡ることはなさそうですね。


 「菜の花」は「アブラナ」の通称で、これもおそらく原産地は中国。 かなり古くから栽培されていたようですが、野菜としてまたは菜種油を採るためです。





 「橘」は、現代も万葉の時代も「橘」です。ただし、同じものだったかというと・・・・         「ニッポンタチバナ」という日本固有種があって、現在はこれを橘と呼ぶことが多いのですが、
牧野富太郎博士は間違いだと言っておられます。 古代は食用のミカンのことを「タチバナ」と呼んでいたので、今の「紀州ミカン」が古来の「タチバナ」に一番近いだろうと言うことです。

巻11−2480 
 道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は

 意訳】 道端に咲いているいちしの花のように、はっきりと人様にわかってしまった。私の恋
  しい妻のことが。 

 「いちし」は、その他にギシギシやリンドウなどとも言われます。
 後に続く 「いちしろく」を呼び出すために使われたとも考えられます。

 いちしろし(著し)=はっきりしている。非常に。




 橘の歌
巻6−1009
 橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜降れど いや常葉の木  

 意訳】橘は、実にも花にもその葉にも枝にまでも霜が降りようが常に葉のある(めでたい)  木である。 聖武天皇が橘の氏を葛城王(橘諸兄)らに与えた時の歌。

 橘は、古事記にある不老長寿の非時香果(ときじくのかぐのこのみ)だともされています。時を選ばず香り高く常緑であった橘は、生命力の宿る木と思われていたようです。
 万葉集では、70首近く詠まれ、この歌のように常緑であることに掛けて詠まれたものの他に、時鳥などと共に詠まれた歌などの他、「橘の島」のように地名として詠まれたものもあります。
 また、同じ橘でも、阿倍橘(11−2750)は今の橙、山橘(19−4226)は藪柑子だと言われて、上記の橘とは別品種だと考えられています。

  ( 参考  万葉の花  それぞれの花 )



問79  飛鳥の花の名所で、組み合わせが間違っているのはどれでしょうか。

    1: 甘樫丘=桜      2: 彼岸花=稲渕  
    3: 菜の花=小原     4: レンゲ=山田寺

 山田寺にレンゲが無い訳ではありませんが、名所と言うほどには咲きそろいません。 菜の花は、小原以外にも稲渕の棚田や島庄にも咲きそろう所があります。 彼岸花は、稲渕の棚田や石舞台公園をはじめ、村内各所の畦を飾ります。 桜は、甘樫丘・石舞台公園・橘寺が飛鳥では見所となります。

 レンゲの花の名所としては、稲渕の棚田や石神遺跡や真神原を上げることが出来ます。

稲渕棚田 小原 甘樫丘




問80  棚田の春を彩る菜の花ですが、菜の花と同じ仲間の花はどれでしょうか。

      1: マツヨイグサ  2: ナズナ  3: オミナエシ  4: ウマノアシガタ

 「菜の花」は問78にも書いたように「アブラナ」で「アブラナ科」です。 アブラナ科(子供の頃に「ジュウジバナ科」と習った方もあると思います)の特徴は、4枚の花びらが十文字になった小さな花が、花茎の上の方に集まって咲くことで、「水菜」「壬生菜」「蕪」「大根」「キャベツ」「白菜」といった野菜がその仲間ですが、「葉ボタン」や「ショカッサイ(ムラサキハナナ)」のような観賞用に栽培されるものもありますし、「ナズナ(ペンペングサ)」や「タネツケバナ(タガラシ)」のように路傍や田の畦に生えるものもあります。

 「マツヨイグサ」は、アカバナ科の「オオマツヨイグサ」や「コマツヨイグサ」などの総称です。
これも4枚の花びらですが、大きな花びらが重なるようになっていて、十文字にはなりません。
 「オミナエシ」は秋の七草の一つで、オミナエシ科です。花びらが5枚の小花を花茎の先端に粟粒のように付けるので、「アワバナ」と呼ばれることもあります。

 「ウマノアシガタ」は菜の花の咲く頃によく路傍で見られるキンポウゲ科の花です。

マツヨイグサ ナズナ オミナエシ ウマノアシガタ


 女郎花の歌
巻10−2115 
 手に取れば 袖さへにほふ をみなへし この白露に 散らまく惜しも 

 意訳】手を触れただけで袖まで色付きそうな女郎花の花がこの白露で散ってしまうのは惜     しいなぁ。

 女郎花は万葉集には14首あり、その字の為か女性に喩えられることが多かったようです。その粟粒のような形状から「女飯(をみなめし)」と呼ばれることもあったようです。ちなみに、同じオミナエシ科には、花の色が白い男郎花(オトコエシ)と言うのもあります。



問81  秋になると飛鳥の畦に列をなして咲く彼岸花はレッドラインとして写真愛好家の憧
      れですが、それでは彼岸花と同じ仲間の花はどれでしょうか。

      1: ノカンゾウ  2: ギボウシ  3: キツネノカミソリ  4: レンゲ

 「彼岸花」はヒガンバナ科です。 「ノカンゾウ」はユリ科で、「ギボウシ」もユリ科、「レンゲ」は問78に出てきた「ゲンゲ」でマメ科です。 「キツネノカミソリ」がヒガンバナ科で、1本の太い花茎の先端にぐるっと輪を描いて花を付けるものが、このヒガンバナ科には多いのですが例外もあります。

ノカンゾウ ギボウシ キツネノカミソリ レンゲ




問82  万葉集では「思ひ草」と表現され、飛鳥では高松塚公園や石舞台公園で見ることが
      出来る花はなんでしょうか。

     1: 彼岸花   2: 萩   3: ナンバンギセル  4: 月見草

 「彼岸花」は問78に出てきた「いちし」です。 
 「萩」は万葉集でも「ハギ」です。 
 「月見草」は問80に出てきた「マツヨイグサ」の仲間で、白い花が咲く北米原産の植物なの  で万葉集の時代にはなかったと思われます
 
 「ナンバンギセル(南蛮煙管)」はススキの根などに寄生するハマウツボ科の植物で、うつむいて咲く様子から物思いにふけっている「思ひ草」と呼ばれたようです。

巻10−2270  
 道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今さらさらに 何をか思はむ

 意訳】 道端のススキの根元の思い草のように、今更重ねて(他に)何を物思いしよう。

 ススキの根方に生えるため、観察するにはかなり怪しい姿勢になります。まるで落し物を探しているような・・。



問83  稲渕の棚田で栽培される絶滅が危惧されている植物はなんでしょうか。

      1: ミズアオイ       2: タカネキンポウゲ 
      3: ヒメタツナミソウ    4: ヤブレガサモドキ

 「ミズアオイ」はミズアオイ科の湖沼や溝など浅い水中に生える植物で、水田の除草剤の使用によって絶滅が心配されています。

 「タカネキンポウゲ」は白馬山系の高山帯に生えるキンポウゲ科の花で稲渕にはありません。 

 「ヒメタツナミソウ」は、シソ科の植物で、鹿児島や沖縄地方に咲くようです。

 「ヤブレガサモドキ」は、キク科の植物で、現存しているかどうかはっきりとしませんでした。

 ミズアオイは、稲渕の棚田では、案山子ロードのシンボル案山子の足元で栽培されます。 また、高取町観光ボランティアガイドさんの基地である夢創館横の庭でも見ることが出来ます。



問84  飛鳥地域の中で、石楠花で最も有名なお寺はどこでしょうか。

      1: 橘寺    2: 定林寺    3: 岡寺    4: 飛鳥寺

 4月末から5月初めにかけて、岡寺境内は石楠花で埋められます。 新緑と相まって清々しい景観を表します。

  ( 参考  花笑みの岡寺界隈 )
  ( 参考  岡寺公式ホームページ )





問85  紅花は、飛鳥時代にシルクロードを通じて渡来したとの説も有ります。明日香村で
      は、石舞台公園北側の丘などで栽培されますが、紅花は主に何に用いられたでし
      ょうか。

      1: 食用   2:  観賞用   3: 染料の原材料   4: 薬用

 
 現在では「紅花」は「紅花油」として食用にされていますし、薬用として使われることもあるようですが、渡来した頃は染料として用いられ、「紅を採る花」で「紅花 くれない」と呼ばれました。

巻12−2966
 紅の 薄染衣 浅らかに 
       相見し人に 恋ふる頃かも

 意訳】 紅を薄く染めた衣のように、ほのかに出逢った人が恋しいこの頃だ。

 紅花からの染色は、何度も染めないと綺麗な濃い色にはならなかったようです。そのことも儚い恋のイメージに結びつくのかもしれません。



問86  万葉集で一番たくさん歌われている花は、次の内どれでしょうか。

      1: 萩   2: 桜   3: 藤   4: 梅

 萩 141首  ・ 桜 42首  ・ 藤 26首 ・ 梅 119首あります。 

 飛鳥地域では、石舞台公園にたくさんの萩が咲きます。 梅は、日本古来からの植物で、いかにも日本らしい花ではありますが、奈良時代になって日本に入ってきたようです。珍しい花を奈良時代の歌人達は、盛んに詠み競ったようです。



 萩は、鹿や露や雁などと共に詠まれる事が多く秋の風情に欠かせないものだったようで、野の萩に宿の萩、咲き初めから散り際までが実に見事に表現されています。

 梅は、奈良時代に日本に入ってきたものだそうで、漢詩に出てくるその花を貴族たちは挙って庭に植えたようで、この時代は白梅であったと言われています。古来、好まれたと言われる梅の香を詠ったものは、万葉集中には一首しかありません。

 桜には、「花」と表記されて桜と解されている歌も何種かあり、「桜」の文字を用いられた歌は、18首だけになります。在来であった桜は、特別取り立てて貰えなかったのかもしれません。

 藤は、「藤波」として風に靡く花房の姿が好んで詠まれたようですが、歌数としては、上記の花々よりもかなりすくなくなります。

  明日香川 行き廻る岡の 秋萩は 今日降る雨に 散りか過ぎなむ  巻8−1557
 意訳】明日香川が傍らを流れている岡の秋萩は、今日のこの雨で散ってしまうのだろうか。

  梅の花 香をかぐはしみ 遠けども 心もしのに 君をしぞ思ふ   巻20−4500
 意訳】梅の花は香りが良いので、遠く離れていても心から貴方の事を思っています。

  うぐひすの 木伝ふ梅の うつろへば 桜の花の 時かたまけぬ  巻10−1854
  意訳】鶯が木から木へと伝う梅の花が移ろうと桜の花の咲く時期がくるんだろう。

  恋しけば 形見にせむと 我がやどに 植ゑし藤波 今咲きにけり  巻8−1471
  意訳】恋しくなった時の縁にしようと庭に植えた藤の花が今いています。

  ( 参考  ひとひら 萩 )



問87  わすれ草 我が紐に付く 香具山の 古りにし里を 忘れむがため
      上記は、大伴旅人が詠んだ万葉歌ですが、この「わすれ草」とは、一般的に次のど
      の植物だとされているでしょうか。

      1: ヨモギ  2: ノジギク  3: ヤブカンゾウ  4: ヒオウギ
 
「ヨモギ」はそのまま「よもぎ」か「ももよぐさ」と詠まれています。 
 「ノジギク」も「ももよぐさ」です。 
 「ヤブカンゾウ」は問81に出てきた「ノカンゾウ」の仲間でユリ科です。 「牧野新日本植物図鑑」には「ワスレグサ」として載っています。 中国の故事にこの花を見て憂いを忘れるというのがあってそこからきているようです。 中国で忘れるという意味の「萱」の字を使って「萱草」という漢名がありその音読みが「カンゾウ」、藪に生えるから「ヤブカンゾウ」です。 「ヒオウギ」は「ぬばたま」です。


  わすれ草 我が紐に付く 香具山の 古りにし里を 忘れむが為   巻3−334
  意訳】 忘れ草を私の着物の紐に付けておこう。 香具山の故郷を忘れられるように。

 八重咲きがヤブカンゾウ。一重咲きがノカンゾウ。

ノジギク ヒオウギ



歴史編 地理編 考古編 観光編 植物・自然編 民俗編 万葉集・文学編 解答一覧

解説ページ中の「緑色の文字」は、参考ページにリンクしています。
解説ページ中の
「赤色の文字 」は、正解を表します。

飛鳥検定TOPへ戻る      両槻会TOPへ戻る