両槻会(ふたつきかい)は、飛鳥が好きならどなたでも参加出来る隔月の定例会です。 手作りの講演会・勉強会・ウォーキングなどの企画満載です。参加者募集中♪



飛鳥時遊録


 真神原風人飛鳥三昧



「今の時」と「古の時」
二つの「時」をテーマに自由に時を翔けめぐり、
今この時と飛鳥時代を結ぶ記事に出来ればと思います。

飛鳥も春
飛鳥の桜
春の特別展
生駒散策
第26回定例会終了
6月の飛鳥
文化財レスキュー事業を応援
飛鳥の邸宅
川原寺裏山遺跡の再発掘調査
10 夏の企画展


60号まで季節・時事記事は、こちら♪
61~69号までの時遊録は、こちら♪
70~83号までの時遊録は、こちら♪
84~93号までの時遊録は、こちら♪
94~103号までの時遊録は、こちら♪


【1】 「飛鳥も春」       (11.4.1.発行 Vol.104に掲載)

 カレンダーがまた一枚めくれ、4月になってしまいました。早いものですね。今年は、北から春が来れば良いのにと、風人は思います。

 大きな災害がありましたので、春爛漫の候と喜ぶ気持ちも萎み気味ではありますが、それぞれが出来る範囲での支援を続けながら私達も元気に春を迎えましょう。

 飛鳥の桜は綺麗です。皆さん良くご存知だとは思いますが、甘樫丘や石舞台公園は言うに及ばず、橘寺、飛鳥川沿い、坂田寺跡などなど、枚挙に暇がありません。飛鳥桜の写真を募集いたします。皆さんのこの一枚をどうぞ事務局まで送って下さい。よろしくお願いいたします。

 さて、4月から新たな職場に移られた方も居られると思います。環境が変わり大変でしょうけど、頑張って下さいね。飛鳥遊訪マガジンでも、ご寄稿を下さっていました「ゆき先生」が今号を最後に暫らくお休みをされることになりました。新しい任地でご活躍をいただき、またいつの日か連載を再開してくださることを願っています。

 連載を通じまして、ゆき先生から教えていただいたことは多かったですね。風人には特に石神遺跡の瓦葺建物を巡っての記事や、瓦を通しての藤原宮造営過程などについてのお話が印象深く記憶に刻まれています。いつも飛鳥藤原の発掘現場から真摯なお話を下さって、読み応え満点でしたね♪ゆき先生と何度もお会いしている風人には、そのお人柄からもとても慕わしい先生です。ゆき先生、長らくありがとうございました。m(__)m 先生の一層のご活躍をお祈り申し上げます。

 ゆき先生に代わりまして、次回のローテーションからは新たな先生が連載をしていただけることになっております。どうぞ、お楽しみにお待ちください。

 さて、今号は、第25回定例会で募りました義援金に関して、お知らせのコーナーでご報告を致しております。ご協力くださいました皆さんに、事務局からお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 寄稿は、ゆき先生の最終回の原稿です。ご挨拶を兼ねてお書きくださっていますので、名残惜しいのですがお読みいただければと思います。

  「ただ今、飛鳥・藤原修行中!」 (ゆき先生の連載ページ)



【2】 「飛鳥の桜」             (11.4.15.発行 Vol.105に掲載)

 飛鳥の桜は、この原稿を書いている時点(11日)で、ほぼ満開のようです。華やかで、儚く散る桜。日本人の美意識に合っているとも言われますが、皆さんはどのように桜を愛でられたでしょうか。

 風人は、桜を満喫することは出来ませんでしたが、9日に新沢千塚古墳群に咲く満開の桜の下を歩いてきました。千塚資料館で行われた「終末期古墳の一様相 牽牛子塚古墳の調査より」と題した西光慎治先生の講演を聴講しての帰りだったのですが、群集墳を飾る桜は雨上がりの晴れ間に輝くように艶やかでした。明日香村内の桜を観賞することは出来ませんでしたが、束の間の春を楽しむことが出来ました。

 飛鳥の桜を撮られた方も多いと思います。是非、写真の投稿をお願いします。全国の皆さんに飛鳥の桜をご覧いただきたいと思っております。
 風人撮影の新沢千塚古墳群の桜です。

 講演は、第26回定例会で訪ねる牽牛子塚古墳をテーマにしたお話でした。発掘を担当された西光先生ならではのお話だったと思います。ユーモア溢れる話しぶりとパワーポイントを巧みに使った構成で、90分が瞬く間に過ぎて行きました。定例会では、15分ばかり現地で見学と説明を予定しているのですが、随分予習させていただきました。風人が何処まで西光先生の話しぶりに迫れるか、参加して実際に確かめてください。(笑)

 さて、今号は、あい坊さんのご寄稿から始まります。速報の発掘関連記事を何度か挟みましたので間隔が開いてしまいましたが、大変興味深い内容ですので、前記事を再度読み返していただければと思います。飛鳥遊訪マガジン92号(昨年10月)に掲載しています。

  飛鳥遊訪マガジン92号バックナンバー
  飛鳥遊訪文庫

 飛鳥話は、サポートスタッフのよっぱさんが第26回定例会の下見に参加しての率直な感想と注意点を書いてくださっています。申し込まれた方は注意喚起として、申し込みを検討してくださっている方には、概要や注意点としてお読みいただければと思います。咲読は風人が務めます。2回目は、飛鳥駅から寺崎白壁塚古墳までの古墳をご紹介しています。

 飛鳥の桜の写真を、ぷーままさん、らいちさんが送ってくださいましたのでご紹介します。 画像は全てクリックで拡大します。

ぷーままさんの飛鳥川畔・南淵請安先生墓です。

飛鳥川畔

南淵請安先生墓

らいちさんの安倍文殊院からの二上山落日と桜です。

二上山落日




【3】 「春の特別展」          (11.4.29.発行 Vol.106に掲載)

 GWですね♪歩くには一番良い季節ですが、皆さんのご予定は如何でしょうか?震災の影響で何かと自粛気味ですが、自粛だけでは復興への力も萎んでしまいます。五月晴れの下、元気を見つけに飛鳥においでください。きっと、疲れた心を癒す事が出来るのではないでしょうか。飛鳥では、岡寺の石楠花が見頃を迎えています。新緑と淡いピンクの花が、とっても素敵ですよ♪
 参照:岡寺HP

 さて、今号はお知らせがあります。まずはそのお話から。
 ゆきさんの連載が休止しましたのは寂しい限りですが、その代わりを務めて下さいます先生をご紹介できることになりました。両槻会主催講演会にご参加くださいます方々にはお馴染みとなりました、N研A資料館学芸室研究員 N先生です。(^^ゞ 講演会後の懇親会では、軽妙な話口調で資料館の特別展示のご紹介をしてくださっています。連載がどのような内容で進んで行くのか楽しみですね♪

 各博物館・資料館で春の特別展示が行われています。どれも見所満載ですが、飛鳥地域では、橿考研附属博物館「弥生の里~くらしといのり~」や、飛鳥資料館「星々と日月の考古学」が始まっています。風人は、先週の土日に両展を見学してきました。飛鳥資料館は、研究員成田聖先生がご紹介くださっていますので、風人は橿考研博物館をご紹介します。
 展示は弥生時代が中心になっていますが、特に、昨年発掘調査が行われた御所市の「中西遺跡」が取り上げられ、水田と里山という日本の原風景が検出された遺跡が様々な展示方法によって紹介されています。CGや生息していた動物の剥製、また植物の種子など、見て分かりやすい展示が心掛けられているように思いました。弥生時代の風景を、是非皆さんもご覧いただければと思います。詳しくは、橿考研博物館HPからご覧下さい。



【4】 「生駒散策」                  (11.5.13.発行 Vol.107に掲載)

 明日は、いよいよ第26回定例会の実施日です。お天気は良さそうなのですが、降り続いた雨の影響で路面が心配です。山道と言うほどの所は無いのですが、地道の所があるのでぬかると嫌ですよね。また、お弁当を広げる場所に困ってしまいます。スタッフの心配は、止めどなく有るものです。(^^ゞ ご参加の皆さんは、お弁当と湿っていても腰を下ろせるようなシートをお持ちくださいね。少しでも早く雨が上がって、地面が乾きますように。(-人-) 祈りが通じたのか、12日正午には雨は止みました♪

 さて、GWも終りました。皆さんは、いかが過されましたか。家族サービスに汗を流されたお父さん、家族が家に居るので休めなかったお母さん、様々なGWだったと思います。風人は、1日だけ羽を伸ばすことができ、3日に生駒市南部を両槻会スタッフ仲間とウォーキングしてきました。
美努岡萬墓・竹林寺・忍性墓・行基墓・竹林寺古墳・有間皇子墓・往馬大社を巡る6kmばかりの距離なのですが、僅か5名の案内にスペシャルな案内人が同行してくださいましたので、内容の濃い一日になりました。

 風人は、今回の散策用に調べるまで、美努岡萬(みののおかまろ)と言う人物をほとんど知りませんでした。恥ずかしながら、墓誌が出ている、どこかでそれ(レプリカ?)を見た記憶が・・・、その程度の知識しかありませんでした。彼は、大宝元年(701)に遣唐使の一員として海を渡った官人です。藤原宮から遥か唐へと出発したのですね。彼のお墓は、生駒山から降りてくる尾根の一つにあり、晴れ渡った日には遠く藤原京の辺りまで見えるとのこと、今も大唐の思い出を抱きながら眠っているのでしょうね。そう思うと、とてもロマンです。が、この日はロマンも霞む酷い黄砂で、藤原京どころか眼前の矢田丘陵も薄ぼんやりとしていました。(^^ゞ


美努岡萬墓

 今回のウォーキングのメインは、有間皇子のお屋敷とお墓を訪ねることで、他の物はコースを作った時の副産物でした。忍性さんや行基様、ごめんなさい。(笑)

 帝塚山大学の清水昭博先生が、有間皇子の市経家は橿原市大軽町丈六付近ではないかと発表され、それに触発された有間皇子邸探査の一環として、従来の伝承地を訪ねてみようという計画でした。壱分駅の東に在る無量寺の裏の竹薮の中に、有間皇子のお墓と言われる盛土状の起伏と崩れて組み立て直したような何とも頼りない小さな五輪塔がありました。付近は、「御所の藪」と呼ばれていたそうで、邸宅跡か?ということになるのでしょうか。結構高みにありました。


有間皇子墓

 有間皇子の事変を振り返ると、時間的・距離的な問題で有間皇子邸が生駒に在ることは、あまり納得が出来ません。それより、飛鳥地域内に在る方が自然ではないかと思えます。皇子邸襲撃には、宮造の丁を集めて向かっているのですから、生駒市壱分なら飛鳥京からではおおよそ30km、実際にはもっと距離があるでしょう。直線的な距離でも、歩いて8時間、ジョギングで3時間半~4時間、自転車(馬並か?)で3時間といったところでしょうか。人出を掻き集めるのも時間が掛かるでしょうから、やはり飛鳥近郊、清水先生説の丈六南北遺跡辺りが相応しいように思いますね。



【5】 「第26回定例会終了」                (11.5.27.発行 Vol.108に掲載)

 第26回定例会は、無事に終了することが出来ました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。実施日の5月14日はお天気に恵まれ、楽しい一日を過すことができました。両槻会のウォーキングは、一人ではなかなか行けない場所や明日香村周辺部を主に訪ねますが、参加者からは今回も初めて訪れた場所だとの声が聞かれました。
 今回は約20ヶ所の説明ポイントを設定して、案内を致しました。古墳にも詳しくない風人ですので、今回は助っ人として飛鳥応援大使の仲間であります「さきもり」さんのお力を借り、参加の皆さんに補足説明をしていただきました。打ち合わせをしていなかったのですが、スムーズに進行できたのではないでしょうか。
 ご参加いただけなかった読者の方々は、両槻会サイトに作成しました資料集やレポートをお読みいただき、それぞれ歩いていただければと思います。

 第26回定例会資料集
 第26回定例会レポート

 事務局では息つく暇もなく、第27回定例会の準備に取り掛かっています。次回定例会は、主催講演会になります。「嶋宮をめぐる諸問題」というタイトルで、明日香村教委 相原嘉之先生にご講演をいただきます。これまでの発掘調査の成果を踏まえ、興味深いお話を展開していただけるものと思います。下記、両槻会からのお知らせのコーナーで案内をしていますので、ご覧下さい。皆さんのご参加をお待ちしております。

 さて、5月も残すところ僅かになりました。早いものです!もうすぐ梅雨がやってきて、じめじめとした暑さがやってきます。そう思うだけで、この先の1ヶ月半ほどが思いやられますね。今年は特に電力の問題もあるので、気が重くなります。しかし、そんなことばかり言っていても仕方がありません。6月になれば、飛鳥では田植えが始まります。水の張られた棚田に夕陽が射し、赤い水田が見られるのももうすぐです。細川・稲渕・坂田・立部・古宮土壇・・・、それぞれに趣のある夕景を訪ねてみたいものです。
 なかなか送っていただけませんが、写真を撮られた方は事務局までお送りください。全国の飛鳥好きの皆さんに、美しい棚田をご覧いただきたいと思います。



【6】 「6月の飛鳥」                  (11.6.10.発行 Vol.109に掲載)

 風人の住んでいるのは、明日香村の近隣橿原市なのですが、先週末から日常的に半袖を着るようになりました。来週の天気予報でも28℃くらいの日が続くようです。ぼちぼち暑くなるのでしょうか。ですが、梅雨のわりには、じめじめと蒸し暑い日はそれほどありません。この程度なら過しやすいのですが、梅雨を通してこのような天候で良いのかどうか、昨今の天候不順を思うと喜んでもおれないように思いますね。梅雨末期のゲリラ豪雨で雨量の帳尻が合うようでは、地球環境へ不安を感じてしまいます。今年は特に、猛暑も願い下げですね。

 前号の呼びかけに応えて、明日香村の細川や稲渕の棚田の写真を送っていただきましたので、ご紹介させていただきます。撮影は、らいちさんです。

クリックで拡大します。
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 1枚目の写真は、細川の冬野川に架かる橋付近から上居・祝戸方向を撮られたものです。2枚目は、阪田を走る道路から稲渕の棚田を捉えておられます。6月らしい写真ですね。らいちさん、ありがとうございました。

 引続き、飛鳥の写真を募集しています。四季折々の飛鳥をご紹介ください。

 さて、事務局では第28回定例会(9月)の予定をぼちぼち発表しなくてはならないのですが、第28回は趣向を変えて実施したいと思っています。
 皆さんからのご要望もありました「埋もれた古代を訪ねるpart2」が出来ないかと、只今鋭意企画中であります。
 風人にとりまして、この「埋もれた古代を訪ねる」という企画には思い入れがあります。明日香村を訪ねて来られる方々の中には、懐かしい村里の自然環境が残っていて良い所だと仰る方と、飛鳥時代の物が地上に残っていないのでせっかく来たのに分かりにくいと仰る方が居ます。どちらもその通りだと思います。飛鳥には、魅力的な飛鳥時代という歴史が埋もれていますが、地上に残る物は僅かな断片でしかありません。そこからクロスワードを解くように、また推理小説を読むように、ドラマティックでダイナミックな我国誕生の歴史を読み解いていくのが面白いのですが、そこにたどり着くためには、ある程度の歴史的な知識と地上には見えない歴史遺産の概要と在り処を知ることが重要になってきます。

 埋め戻された重要な遺跡を巡ることを思いついたのは、両槻会の誕生とほぼ同時でした。第2回定例会で実施したウォーキングでは、田んぼを前に説明する私達に奇異の目を向けられる観光客もありましたが、本当に面白いものは地下にあります。標識も説明板も無い田んぼの下に重要な物が眠っているのが飛鳥なのです。それを知っていただければ、もっと飛鳥が面白くなると風人は思っています。両槻会が、そのような飛鳥の魅力を皆さんにお伝え出来る一番の企画が「埋もれた古代を訪ねる」ではないかと思います。

 また、飛鳥では、秋に「彼岸花祭り」と「飛鳥光の回廊」という大きなイベントが同時開催されます。両槻会事務局は「飛鳥光の回廊」飛鳥資料館会場のお手伝いをするのですが、これに合わせて定例会を実施する方向で検討をしています。
 彼岸花ウォーキング「埋もれた古代を訪ねる」と「飛鳥光の回廊」の企画をお楽しみにお待ちください。近日中にお知らせできる予定です。



【7】 「文化財レスキュー事業を応援」         (11.6.24.発行 Vol.110に掲載)

 ぐずついたお天気が続いています。この時期は、体調を崩す方も多いようですが、皆さん、お元気にされていますか? 健康管理に気をつけてくださいね。(^^)

 飛鳥遊訪マガジンでは、飛鳥の写真を募集しています。その呼びかけに応えて、菫さんが投稿をしてくださいました。


 明日香村入谷の写真です。雨に霞む山里の風情ですが、左下に見えているのが旧道芋峠道小峠の取り付き付近のようです。


 明日香村阪田から上居(じょうご)の方向を撮られた写真です。

 撮影日は5月29日ということです。生憎の大雨だったようですが、写真を拝見して、雨もまた良し♪と思った風人です。

 さて、3月11日に発生しました東日本大震災と大津波から100日を超える時間が経過しました。しかし、今尚、多くの人達が辛い生活を余儀なくされています。ここに、お見舞いを申し上げると共に、私達も出来る限りの支援を忘れてはならないという思いを新たにしたいと思います。

 皆さんは、文化財レスキューという事業をご存知でしょうか。この災害によって、文化財もまた多くが失われ傷付きました。現在、被災文化財の保全・救出・応急処置等を行う目的で、文化庁を中心にして文化財レスキュー事業が展開されています。

 東北地方太平洋沖地震被災文化財の救援と修復に協力を (文化庁長官メッセージ)
 http://www.bunka.go.jp/bunkazai/tohokujishin_kanren/chokan_message.html

 奈良県では、先日、その事業をサポートする目的で「文化財レスキュー応援せんと!」実行委員会が設立されました。詳しくは、こちらをご覧下さい。
 http://narasento.com/

 両槻会ならびに飛鳥遊訪マガジンでは、この事業及びその活動をご紹介することにより、継続して支援をして行きたいと思っております。膨大な時間と費用を必要としますが、文化財もまた救わなければならない国民共有の財産であると思います。
 読者の皆様にも、文化財レスキュー事業へのご理解・ご支援をお願いいたします。

 現在、募金箱が設置されている場所をご紹介します。
  奈良国立博物館、奈良文化財研究所平城宮跡資料館、藤原宮跡資料室、
  飛鳥資料館、平城宮跡第一次大極殿

 募金箱の設置が予定されている場所
  元興寺、奈良教育大学、奈良県立美術館、奈良県立万葉文化館、
  奈良県立橿原考古学研究所附属博物館、天理大学附属天理参考館

 また、寄付金の送付・振込み等の受付も行われています。下記までお問い合わせください。

 文化財レスキュー応援せんと!実行委員会事務局
 (奈良文化財研究所研究支援推進部内)
  〒630-8577
  奈良市二条町二丁目9番1号 奈良文化財研究所内
   TEL0742-30-6715 FAX0742-30-6730
   URL http://narasento.com
   E-mail office@narasento.com

 両槻会では、出来る範囲での協力として、次回第27回定例会の経費分担金としていただきます参加費のほぼ全額(必要最低限の経費分を除く)と、事務局の活動準備金を合わせまして、この事業への寄付金とすることに致しました。参加をお申し込みの皆さんには、どうぞご理解をいただき、ご了解を下さいますようにお願い申し上げます。



【8】 「飛鳥の邸宅」                  (11.7.8.発行 Vol.111に掲載)

 暑い日が続きますね! 6月の末には、飛鳥でも35℃などという真夏並みの気温になりました。節電節電!となにかとうるさい夏ですが、熱中症には気をつけなければいけません。奈良では、先日亡くなられた方がいました。特にお年寄りや子供さんには、注意が必要ですね。なんとか涼しくなる工夫をして、元気にこの夏を乗り切りましょう。
 明日の定例会には、熱中症対策を充分にしてご参加くださいね。散策から参加していただく方は、決して無理をされないようにお願いします。
 
 さて、その第27回定例会ですが、事務局では皆さんと充実した一日を過ごせるように準備を進めてきました。後は、本番を待つばかりなのですが、咲読に盛り込めなかった点を時遊録のスペースを使って、少しお話をしたいと思います。
 
 嶋宮は、皇太子草壁皇子の東宮だったと考えられています。また、それ以前に、二人の嶋皇祖母命(しまのすめみおやのみこと)が、嶋宮に住まいしていたことが推測されています。では、他の皇子達や皇族・重臣の邸宅はどうでしょうか。今回の講演会でもお話があると思いますが、予習として簡単に触れてみたいと思います。
 
 講師 相原先生は、東橘遺跡の廊状建物を中大兄皇子の宮の一部ではないかと考えておられます。面白いお話です♪ 『日本書紀』では、中大兄皇子が邸宅を嶋大臣の家と隣り合わせに建てたことが、当時流行った謡歌(わざうた)の解釈として書かれています。飛鳥板蓋宮の真南に在るこの建物は、単に貴族の邸宅や役所だとは考えにくく、飛鳥時代のもっとも有名な事変「乙巳の変」の中心舞台の一つであった可能性が高いと考えられるようです。遺構の時期は合致するのか、遺物はどうなのか、講演会でじっくり聞いてみましょう。
 他にも、相原先生は、飛鳥浄御原宮内郭の北側で検出された大型掘立柱建物が、皇后宮であった可能性を指摘されています。
 
 また、両槻会でお世話になっております帝塚山大学の清水昭博先生が、有間皇子の邸宅が軽衢(かるのちまた)丈六遺跡付近に在ったのではないかとの新説を発表されています。これも興味深い推論ですので、機会があれば両槻会でもお話をお伺いしたいものですね。
 
 邸宅跡の発掘調査で住人が確定出来た事例は、残念ながらありません。
 島庄遺跡や甘樫丘東麓遺跡でも、庇付き正殿クラスの建物跡は未検出なのです。
しかし、万葉集の歌に詠まれる地名や情景から、高市皇子の香具山宮の可能性が高いと言われる香久山の西麓(奈文研調査部下層)や、雷丘付近に在ったとされる忍壁皇子の宮(雷丘北方遺跡か)、また、舎人皇子は細川周辺に、弓削皇子は南淵山周辺に、そして、新田部皇子は八釣山周辺(竹田遺跡か)に宮を構えたのではないかと推測されています。
 
 逆に、邸宅遺構が検出されている事例を見てみると、飛鳥資料館近くの「奧山リュウゲ遺跡」、甘樫丘の最も西端の支尾根上にある「五条野内垣内遺跡」・「五条野向イ遺跡」、大原神社付近の「小原宮ノウシロ遺跡」や「東山マキド遺跡」の建物跡(中臣氏関連? 五百重娘邸?)などがあります。さらに、名前の書かれた木簡の出土から、穂積皇子の宮が香具北麓周辺(横大路・中ツ道交差点付近)に在ったのではないかと考えられるようです。
 
このような皇子達の宮についても、相原先生にお話をいただけると思いますので、どうぞお楽しみにお越しください。また、ご参加いただけなかった読者の皆さんには、後日、定例会レポートとしてお伝え出来るかもしれません。



【9】 「川原寺裏山遺跡の再発掘調査」     (11.7.22.発行 Vol.112に掲載)

 暑いですねぇ~! もう、それしか言えません。体温に近い気温が続きますね。日中、外など歩いていると目がくらみそうです。男でも日傘が欲しいと思う、今日この頃。
 まっ、そんなことばかり言っておれませんので、飛鳥の最新情報などもお伝えしたいと思っています。

 その前に、ご報告です。第27回定例会は無事に終了することが出来ました。講師を務めてくださった相原先生、ご参加の皆さん、ありがとうございました。3時間に及ぶ講演になりましたが、丁寧なお話の展開で飽きることなく聞き入りました。嶋宮をめぐる様々な問題を学ぶことができ、また一つ深い飛鳥の魅力を知ることが出来ました。

 また、両槻会では、第27回定例会の経費分担金としていただいた参加費から必要最小限の経費を引いた全額に、参加者からの寄付金と事務局からの活動準備金を加算しまして、合計25,000円を文化財レスキュー事業に寄付致しました。ご協力に感謝いたします。

 さて、定例会の前日(8日)、明日香村教委は、川原寺裏山遺跡の再発掘調査の結果、川原寺の堂内を飾った塼仏などが納められていた穴の形と正確な大きさが判明したと発表しました。埋納坑は、楕円形(長径約4m、短径約3m、深さ約2m)で、新たに塼仏の破片約70点を含む数百点の遺物が出土したそうです。(出土品は2011年7月9日~31日、明日香村埋蔵文化財展示室で公開されています。))

 両槻会では、ウォーキングの折、川原寺裏山遺跡の近くを度々通りましたので、ご記憶の方も多いと思いますが、遺跡の所在地は、板蓋神社の西方の竹薮の辺りになります。

 川原寺は、鎌倉時代に焼失しますが、9世紀にも大火災に遭っており、再建に向けて壊れた仏像が集められ、北西の山裾に埋められました。それが川原寺裏山遺跡です。過去の調査では、埋納坑から見つかった方形三尊塼仏は千数百点、塑像は数百点に及び金銅製金具など仏教関連の遺物も出土しました。遺物は、火災による熱を浴びている物がほとんどだったようです。

 川原寺は7世紀中頃、斉明天皇の菩提を弔うため天智天皇が建立したと言われますが、創建や建立経過などについては、ほとんど史料もなく謎の部分が多く残っています。川原寺についての確実な史料は、『日本書紀』天武天皇2(673)年の条になり、天武朝に大寺院として存在していたことが分かります。飛鳥寺などと並び四大寺に数えられましたが、9世紀に大火災に遭ったようです。また、建久2(1191)年に興福寺の使僧が川原寺焼失を上申した記録があります。この火災は大火災となり、伽藍全体に及んだようです。

 埋納坑から出土した塑像には、如来形・菩薩形・天部等の破片や部位があり、丈六仏の断片らしい指や耳の破片、また多量の螺髪も出土しています。出土したものの中でも、特に天部の頭部の塑像断片や八部衆の迦楼羅と考えられている像は、美術的にも価値のあるものだとされています。


明日香村埋蔵文化財展示室 2007年の展示会より

 風人は、以前からこの遺跡から出土した「涙を流す迦楼羅像(鳥頭塑像片)」が好きでした。像の目に嵌め込まれたガラスが大火に溶け、あたかも涙を流しているように見えるのです。ただ、この鳥の頭部を持った像は、獣頭人身の十二支像であるという説もあります。飛鳥資料館の加藤真二先生は、出土品の中には馬(午)の頭部を示す破片もあるとされて、キトラ古墳に描かれたような獣頭人身の十二支像の可能性を指摘されています。興味は尽きませんね♪



【10】 「夏の企画展」                  (11.8.5.発行 Vol.113に掲載)

 まず、初めに、新潟県を中心にした大雨の被害に遭われた皆さんに、お見舞いを申し上げます。被害が少しでも軽く、一日でも早い復旧を願っております。

 前号で「暑いですねぇ~! もう、それしか言えません。」と書いたとたんに涼しい夏になりましたが、今週からは暑い夏が戻ってきそうです。夏は、夏らしいのが良いかと思うのですが、節電の夏には若干涼しい方がありがたく思います。

 さて、8月の飛鳥は、がらがらです。好き好んで炎天下に訪れる方も少ないのか、真神原も人影がありません。風人は、そんな飛鳥が好きで昔はよく歩いていたのですが、近年は我が身可愛さのあまり歩くことも少なくなりました。しかし、元気な皆さんは、この時期の飛鳥はお勧めなのです。人が写らない石舞台の写真など、この時期にしか撮れないですものね。また、飛鳥資料館や橿原考古学研究所附属博物館などの夏の展示会も見どころの一つです。ゆっくり観覧する良い機会ではないでしょうか。

 飛鳥遊訪マガジンの飛鳥情報コーナーでもお知らせしましたが、飛鳥資料館では夏期企画展として「鋳造技術の考古学‐東アジアにひろがる鋳物師のわざ‐」が、8月2日から始まりました。両槻会では、第3回定例会として、当時の学芸室・展示企画室長の杉山洋先生に「海獣葡萄鏡について」と題して講演をしていただき、その折にも鋳造技術などについても学びました。今回の展示にはそれらに関連する「海獣葡萄鏡鋳造実験資料」などもあるとのことですので、風人は、是非見学して復習できればと思っています。

 参考資料:第3回定例会

 一方、橿原考古学研究所附属博物館では、恒例となりました「大和を掘る」が始まっています。今回で29回目となり、2010年度に奈良県内で行われた発掘調査の内、36の調査成果が展示されています。飛鳥地域だけに限定しても、植山古墳、菖蒲池古墳、牽牛子塚古墳、越塚御門古墳、甘樫丘東麓遺跡、檜隈寺周辺の調査、飛鳥京苑池、飛鳥京跡第168次、同第167次、同第163次、大藤原京右京十二条五坊・丈六南遺跡・下ツ道、川原寺裏山遺跡があり、盛りだくさんの内容になっています。また、発掘を担当された先生方の中には、両槻会の講師や飛鳥遊訪マガジンの執筆を始めとして、様々なご支援を頂いている先生が居られます。秋津遺跡第3次の岡田雅彦先生、檜隈寺周辺の調査の石田由紀子先生、飛鳥京跡第168次・七条西浦近世墓地・秋津遺跡3次の大西貴夫先生、巨勢山773号墳・南田原ミヤケ遺跡の奥井智子先生です。先生方との繋がりを感じると、担当された遺跡にもより親しみを持って成果を見学することができます。皆さんにも、そのように思っていただき、展示をご覧いただければ幸いです。



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